「部落差別」と言わない佐高信は何を忖度した!?

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By Jun mishina

佐高信。経済評論家、『週刊金曜日』編集委員。この人物がメディアで紹介される時は「辛口評論家」などと評される。その論評スタイルは簡単だ。自身と主張や理念が異なる政治家、評論家、文化人に対してただ感情的になじる。要するに「罵倒芸」というものだ。そして信奉者たちは佐高氏をこんな風に評価する。「佐高さんは怖いもの知らず」「タブーなく切り込む」と。ただ恐れを知らない、はずの佐高氏の発言で疑問を感じたことがあった。4月5日、上野恩賜公園で開催された「主権者が政治を変える!さくら祭り」の席上のことである。

さくら祭りでスピーチする佐高氏。

同イベントのテーマは主に森友学園・加計学園問題だ。東京新聞・望月衣塑子記者、山本太郎参院議員らが一人10分の持ち時間でスピーチをするリレートーク形式で進められた。佐高氏もゲストスピーカーの一人として登壇。森友学園の公文書改ざん問題に触れ、佐高氏はこう切り出した。

「佐川一人に責任をおしつけて、仮に佐川が改ざんまでやったとしたらそれをコントロールできなかった麻生ってなんなんだってなりますよね。知らなかったというだけで麻生を解任しなければならない」

ここまではよく耳にする批判だ。特に目新しい主張でもない。ところがこの直後、佐高氏は麻生財務相の過去の発言についてこう断じた。

「麻生太郎というのは野中広務という人が自民党総裁にという声がかかったときに野中のような人間にやらせていいのかね。とんでもない差別発言をした男なんですね。そんな男が議員であることがおかしい」

そうだ。差別だ、という声がかかる。そして

「麻生太郎をあほう太郎というのは決して差別ではなくて実態を言っているにすぎない」

と佐高節。「バカ」「アホ」論評でこういう表現を使うのも佐高氏らしい。

さてこの発言。麻生氏の派閥である為公会の前身・大勇会の会合で麻生氏が「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と発言していたことを2003年9月11日、自民党総務会で野中が伝え聞いたもの。この一件は『差別と権力』(魚住昭)が詳しい。発言について麻生氏は否定しており真偽は確認できない。部落マニアでもなくてもこのエピソードを知る人は多いだろう。その上で佐高氏の発言を振り返ってみよう。

野中のような人間にやらせていいのかね

この発言自体に何ら差別性は見られない。事情を知らない人にすれば、この発言の何が差別なのか分からないはずだ。例えば「安倍晋三のような人間にやらせていいのかね」こんな批判は、日常的にありふれている。ところが面白いことに聴衆からも「差別だー」と声が挙がる。要するに「部落問題」が関わった発言であったことを参加者の多くが知っていたのだろう。だから佐高氏は「野中のような部落出身者を日本の総理にはできない」とすでに報じられた発言をそのまま言わない。それも怖いもの知らず、タブーに切り込む、ことで定評がある佐高氏だ。この発言をそのまま話したところで、誰も彼を批判しないはずだ。普段は攻撃的な御仁にとっても部落問題には触れたくないものか。あるいは何かに忖度したのか!? むしろ部落差別に触れないことは、彼ら流に言えば問題の「矮小化」をしているのではないか。

おそらくこれが韓国籍・朝鮮籍という出自を揶揄した発言だったらば、むしろ佐高氏は嬉々として取り上げたことだろう。「同和タブー」「在日タブー」日本社会に影を落としてきた2つの現象だが、同じ人権問題でも実は比較にならないほど同和の”タブー感”の方が強いものだ。なぜか? と言われたら「我が身を持って知りました」としか答えようがないが。佐高氏の発言から改めて部落問題が持つタブーな空気を痛感したのである。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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「部落差別」と言わない佐高信は何を忖度した!?」への8件のフィードバック

  1. .

    「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」とは、確かに”失言王”の麻生が「言いそう」なことではあります。しかし証拠がありません。

    証拠のないことをただの伝聞や印象でクロと断じること自体、人権尊重の観点からは大いに問題があります。「部落解放同盟員一覧の掲載もミラーサイトの運営も、いかにも宮部がやりそうなことである。証拠はないが、宮部がやったに違いない」という解放同盟の理屈と同じです。解放同盟が半世紀以上前から批判している、狭山事件における「埼玉県警の見込み捜査」と同じことをやっているわけです。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      解放同盟もそうだし支援者たちもそうなんですが
      普段、彼らは警察の捜査を批判しています。
      仲間が逮捕されたら人権侵害という。

      ところが私どもには警察が動け、逮捕せよ
      とこういうのです。

      返信
  2. ソラマチ

    貴記事、いつも楽しみに拝読しております。

    手元にないのですぐに確認できずに申し訳ないのですが、「差別と日本人 」著者 辛 淑玉 / 野中 広務 (著)(角川oneテーマ21 A 100) の中に「野中のような部落出身者を日本の総理大臣にはできない」を含む、政界での「差別」を取り上げていたように思うのですが、いかがでしょうか?

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      佐高さんに限らず政治運動に関わる人たちは
      顔つきが変わるから不思議です。
      同一の価値観で生きるとはすなわち
      そういうことかと。

      返信
  3. yukis

    >ような人間にやらせていいのかね。
    >そんな男が議員であることがおかしい
    短くも鮮明な自己矛盾の紹介を有り難う御座いますw

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    1. 三品純 投稿作成者

      この発言はずるいんですよ。
      あとで「麻生が部落差別発言をしたとは言ってない」
      という逃げ道を残しているという。

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