蓮舫代表二重国籍問題 戸籍公開に部落差別を持ち出す「短絡」

三品純 By 三品純

民進党・蓮舫代表は日本国籍と台湾国籍の二重国籍だったことへの批判を受けて、日本籍選択の証明として「戸籍」関連資料の公開を検討中だ。これに対して“人権派”の面々が「人権侵犯」と強く抗議している。そして“想定の範囲内”ではあるが、戸籍と部落差別を関連付け蓮舫氏を擁護する人も少なくない。「戸籍を公開せよ」との大合唱は確かに“魔女狩り”めいたものを感じる。しかし少なくとも部落差別を持ち出すのもおかしな話。こうした風潮を見ると、とあるシンポジウムを思い出すのだ。

7月11日、有田芳生参院議員はツイッターでこうつぶやいた。

蓮舫代表に戸籍公表を求めることは、社会的・歴史的「いじめ」であり間違っている。第一に多様性ある社会を求める流れに対する攻撃であり、安倍政権になって著しい排外主義に屈することになる。第二に戸籍問題は長年にわたる被差別部落問題などの闘いへの逆行だ。日本人である代表に全く問題はない。

またこういうユーザーもいた。

涙が出てきた。戸籍謄本開示がどのような意味を持つのか立ち止まり考えなかったのか。もうこの国では出自を明かさねば生きていけないのか。水平社宣言から約百年、差別に苦しみ殺された人々の血と涙と叫びが無に帰する社会になってしまったのか。

なるほど戸籍によって部落出自が判明すると言いたげである。戸籍制度をめぐっては長年、部落解放同盟は厳しく批判しており、また関連の人権団体も制度見直しを訴えている。部落解放同盟中央執行委員長の組坂繁之氏が世話人に名を連ねた「人権市民会議」は「日本における人権の法制度に関する提言」でこう訴えている。

女性差別・部落差別・婚外子差別などを助長している戸籍制度について、抜本的な見直しを行うべきである。加えて、人権救済を困難にしている行政及び司法上の法制度や慣行を洗い出し、適切な修正・変更を加えるべきである。

これだけ読むといかにも戸籍に部落の記載があるとも解釈できる。ちなみに著者は部落解放同盟滋賀県連の同盟員名簿が流出した内幕を『月刊正論』(2010年4月号)「深層リポート――滋賀県連合会の内部で何があったのか部落解放同盟会員名簿流出の怪」として寄稿したことがある。この時、事前に滋賀県連の広報担当、丸本千悟氏から掲載を見送るよう要請があった。この時も同氏は戸籍の不正取得事件が起きており、部落差別を助長している、といった趣旨で掲載見送りを訴えていた。この名簿は氏名、生年月日、住所、電話番号、企業連(同和地区住民が経営する企業の連合団体)の加入の有無など詳細な個人情報が掲載されたものだったが、よりリスキーな内容を抱える名簿よりも丸本氏は、戸籍制度にこだわっている印象だった。やはり彼らが差別を訴えるその中核部分に「戸籍制度」があることを実感したものだ。

そしてほぼ同時期の2010年4月10日、松本治一郎記念館(当時は港区六本木)で開催された「人権差別撤廃委員会の日本審査に参加して」というシンポジウムで、こんなやり取りがあったので紹介しよう。パネリストたちの報告後、質疑応答があったが、とある女性が報告者の一人、部落解放同盟の和田献一氏にこう質問した。

(女性)「日本の戸籍制度には部落民とかアイヌということが書いてあるのですか?」

(和田氏)「あの明治、壬申戸籍、1981年に要するに国境線を作りますよね、日本国という。その国境線の中に入る人の登録をするという意味で、アイヌという場合と沖縄の場合が登録されている。その登録されたところに名前が入るっていうことで、場所の名前が入る、つまり本籍と出生が書かれる。で部落の場合は、本籍地ってのは部落の場所が書かれるんですね、戸籍の冒頭に」

ここで言う壬申戸籍とは明治五年式戸籍といい、この戸籍の一部に江戸時代の身分が記載されたものがあり、部落差別に利用できるとして解放同盟から強く批判されたものだ。だから仮に何らかの手段で壬申戸籍が取得され、これを公開せよというならば「人権侵犯」とされても仕方がないだろう。しかしすでに壬申戸籍は昭和43年の法務省通達により厳重に管理されており、その中身を知ることはできない。

話を戻そう。このやり取り、どうも釈然としない。本籍地というものを曲解している印象だ。そもそも本籍地=出身地とはならない。そして「本籍地ってのは部落の場所が書かれるんですね、戸籍の冒頭に」と和田氏は言う。まずこれ自体、ありえないことだ。またこのやり取りの中で決定的に不可解なのは現在の戸籍に部落と書いてあるか? という女性の質問に対して和田氏は最後まで答えていなかったこと。この場合、壬申戸籍には確かに江戸時代の身分が記載されたものもあるが、現在の戸籍にはそのような記載はない、と答えるのが適切ではないか。まるで現在の戸籍にも「部落民」とか「新平民」と書いてあるかのようなニュアンスを残し、この質疑は終了した。おそらくこの質問した女性も戸籍に部落の記載があるのかどうか理解できていないと予想する。

蓮舫代表の戸籍公開で部落問題を持ち出す人々たちは、いわば”和田論法”に近いものがある。ではなぜ彼らは「部落問題」を持ち出すのだろう。基本的には壬申戸籍などの戸籍制度への理解不足もあるだろうが、もう一つに「部落」を持ち出せば戸籍公開を求める声を抑えることができる、そう考えたのではないか。もし蓮舫代表の戸籍公開を反対するならば、二重国籍というだけでスパイ扱い、工作員呼ばわりは誹謗中傷だ、差別だ、と訴えれば済むこと。今回の戸籍公開問題で部落を持ち出す人権派の振る舞いに何やら「短絡」さを感じざるをえないのだ。

蓮舫代表二重国籍問題 戸籍公開に部落差別を持ち出す「短絡」」への3件のフィードバック

  1. 猫オジサン

    素朴な、疑問を持つ有権者として、若し日本国籍を持たない人物が、本当の国籍が有る国と戦争に成った場合に真剣に日本という国を守る判断を行うのかという事。
    私は、国会議員は日本国籍でなければ、日本と心中出来ないだろうと思うが、間違っているか?

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    1. 三品純三品純 投稿作成者

      もちろんご指摘の点はよく分かります。自分もそうあるべきだと思いますが、公職選挙法を読んでも二重国籍者の立候補を禁じる規定がありませんでした。この辺り曖昧な法制度にも問題があったのではないかと思いますが。ちなみに2008年のことですが、議員会館で櫻井よし子さんや西岡力さん、鄭大均さんが主催した永住外国人の参政権に反対する集会がありました。そこで蓮舫さんも出席して発言を求められていました。当時のメモを今、探しているのですが、彼女が何を言っていたか検証したらこの二重国籍の議論も深まる気がします。

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  2. 服部和夫

    我々の税金が、という事はあまり、いいたくないが、部落問題で「知ってはいけない。聞いてはいけない」所に「行政が人知れず、予算書にも無い」税金を使っているのではないか。
    もう一度、「同和地区隆盛予算」を投入し、公明正大に「部落民って誰?・部落ってどこ?」を明らかにして、真に「同和」を無くすべき。

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