30日放送のTBS『報道特集』は二階氏が裏金で購入した疑いのある書籍3472万円分に迫った内容。ネット上の反応をみても反響が高く、見ごたえがあるレポートだった。注目は番組の中で匿名ながら取材に応じた和歌山市内の印刷会社。単なる取引業者ではなく、二階氏への政治献金を続ける支援者なのだ。
けた違いの 書籍3472万円分に 怒りの声
政治パーティーのキックバック問題を受けて、二階氏が代表を務める政治団体「新政経研究会」は2020~22年の政治資金収支報告書を訂正し、「書籍代」計3472万円を追加。また公開された内訳によると3年間で17種類、約2万7700冊分を購入していた。
「二階文庫」でも開くというのか。予算に四苦八苦する図書館司書氏にすれば天文学的数字だろう。
最多は財界通信社社長の大中吉一氏監修『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』が5千冊で1045万円分。大量の書籍を爆買いしたことに対して有権者からも疑問の声が後を絶たない。
さて冒頭でふれた通り「報道特集」が「二階俊博元幹事長の“裏金問題” 『義理(G)と人情(N)とプレゼント(P)』3500万円分の書籍の行方」と題したレポートで書籍購入の関係先を取材した。
最も大量購入した「ナンバー2の美学」の出版元ブックマンの編集長、そして書籍の支払先である和歌山市内の印刷会社社長らを直撃。特に印刷会社は重要だ。
同社は社長、社屋にもモザイクが入っており番組だけでは素性が分からない。取材に対し同印刷社長は二階氏側からの支払いについて「原稿を印刷し、製本した代金」と説明。二階氏のPRを兼ねた自費出版本だ。裏金という事情はさておいて証言からすると、単に印刷物の受発注だけの関係に映る。
しかし地元自治体議員は報道特集を見てこう明かした。
「取材を受けたのは『中和印刷紙器』(和歌山市久保)の玉置佳睦社長ですよ。和歌山県内では大きな印刷会社で、なおかつ長年の二階氏支援者としても知られています」
報道特集では同社が支援者とまでは言及していない。調べてみると二階氏ー中和印刷はかなり深い関係であることが判明した。
公共事業も 多数受注! 濃い 二階派人脈
番組で同社長は「もともと二階氏を担当していたのはおじで亡くなったため詳しいことは分からない」と話す。しかし過去の刊行物から考えると、二階氏との関係を把握していたのではないか。それは支援者であり広報役企業というに相応しい。
皮肉なことに「書籍」が如実に示す。
例えば二階氏が新進党時代、1995年に出版した『黒潮に叫ぶ 国会議員レポート』(新政経研究会)は“チーム二階 ”というべき一冊。奥付(下記写真)をみると中和印刷紙器の名があるのがお分かりだろうか。
そしてその下に編集として「株式会社和通」とある。熱心な読者ならばこの社名はご記憶にあるかもしれない。
2020年に「二階幹事長、親密企業和通の ガチ疑惑は 市内再開発事業!?」として筆者は二階氏と和通の関係を取り上げた。また同社は元IR候補地周辺土地を購入していたとして週刊文春が取り上げた。中和、和通と二階氏の親密企業が奥付に集まったのは面白い。
話は戻り中和印刷は二階氏の広報役というのは納得してもらえただろう。
さらに政治資金収支報告書からしても単なる業者ではないことが一目瞭然。
二階氏が代表を務める和歌山第三選挙区支部に2011年から2020年の間、同社は2代目社長の玉置博康氏時代から寄付を続けてきた。直近の2022年分でも24万円を寄付。支出欄をみると5月に印刷代として6万3800円、令和2年9月と10月に25万3千円が同社に支払われた。
そして二階派議員に連なる。
元側近、門博文前衆院時代の第一選挙区支部(令和3年分)には代表者、佳睦氏名で24万円、また支出欄をみると印刷代として総額530万2350円が支払われた。門氏も浮上した辺りで二階派色が強い会社なのが分かる。
印刷物を発注し、そして寄付を受ける。同社からの政治献金も一種の“キックバック”にも見えてならない。まさしく二階派御用達の印刷会社なのだ。
やはり報道特集を見た地元記者はこう感想を漏らす。
「中和印刷は県庁職員募集のパンフレットなど公共入札にも強いですよ。それに土木建設業界のような派手さはありませんが、印刷業は手堅いイメージ。なぜなら選挙があるでしょ。パンフレット、ポスター、自費出版本など確実に需要があります。だから逆に(土木建設業よりも)陰湿になる気がしますね。それが如実に表れたのが書籍購入問題ではないでしょうか」
すでに引退を表明した二階氏に対しては「上手く逃げ切った」との不満も伝わる。後継者をめぐっては二階氏長男、三男の名が挙がるが業者との癒着も引き継がれるのだろうか。