政治、行政、マスコミが喧伝し続ける「SDGs」。日本を席巻するLGBTブームもSDGSが由来である。しかしその無理強いで市民生活にトラブルを持ち込んだ。先頃、非難が殺到した新宿・東急歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレは最たるもの。大義こそ美しい文言が並ぶが、実際は「政治的事情」が作用していることをお伝えしたい!
マスコミの ネタ養殖場「トー横」と 歌舞伎町タワー
一般社団法人Colaboと若年被害女性等支援事業の舞台にもなった東京都新宿区歌舞伎町。その一角、「新宿東宝ビル(TOHOシネマズ新宿)」周辺路地に集まる若者の一群「トー横キッズ」は社会現象になった。貧困、売春、ドラッグ、家出少女、マスコミが好みそうな問題が集積されており、「トー横」は記事ネタの供給源。またかの地で発生するトラブルや炎上エピソードはSNSの“バズり要素 ”が満載だ。
そして歌舞伎町といえば“あの騒動 ”だろう。
今年4月に開業した東急歌舞伎町タワーの2階個室トイレ、通称「ジェンダーレストイレ」は防犯上のリスクがあると非難囂囂だった。地上48階地下5階建、ホテルや映画館、各種アトラクションを備えた複合ビルは新しい観光名所として期待されたが、開業早々に“しくじり”となった。かねてから治安は良好と言えない歌舞伎町。その中心にある男女共用トイレに対して女性が不安を覚えるのは当然のことだ。
SNS上では続々とトイレの写真が投稿され、不安の声が集まった。もちろんメディアもトイレ騒動を取り上げており、関連記事は一つ二つではない。
東急歌舞伎町タワーの「ジェンダーレストイレ」が物議 施設側は警備強化もSNSでは不安の声
「ホテル代もったいないから」歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレが「パパ活現場」になっていた!
事態を重く見た投球歌舞伎町タワーは4月19日、トイレについての見解を発表した。
平素は東急歌舞伎町タワーをご利用いただき、ありがとうございます。さて、掲題の件につきましてお客様にはご心配をおかけして申し訳ございません。各方面よりお問い合わせを頂戴しておりますことから、以下のとおりご案内させていただきます。
ジェンダーレストイレの設置導入の経緯は、以下のとおりです。
ジェンダーレストイレは、性別に関係なく利用できるトイレです。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある「誰一人取り残さない」ことに配慮し、
新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入いたしました。
罪作りな SDGs はダレトク
現在の東急歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレはパーテーションで仕切られ実質、男女別に変更。しかも警備員付きという面倒なトイレになった。もともと男女別にしておけば波風が立たなかったものをトイレにイデオロギーを込めた結果、管理も手間がかかる。明らかに企画倒れだが「高尚な実験」という言葉を贈りたい。
男女別に再整備され一応の鎮静化はしたが、運営者側が挙げた「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念でもある「誰一人取り残さない」ことに配慮し、新宿歌舞伎町の多様性を認容する街づくりから、設置導入いたしました」というコンセプトは見逃せない。
公共施設ならさもありなんという話。東急という一民間企業がまるで行政や労組、市民団体のようなスローガンを掲げている。企業である以上、当然メリットがあるから「SDGs」「多様性」という文言を採用したのだろう。
同社に限らずSDGsは今や経済界にとっての共通語である。実に不思議だ。本来、人を幸福にする目的で作られた標語のはずが逆に不快感の温床になってしまった。SDGsに、サステナビリティ(持続可能性)こうした用語にマスコミ、意識高い系サラリーマン、文系学者たちは目を輝かせるに違いない。しかしこういったサスティな面々はSDGsに込められた政治的事情に疑問を持つことはないだろう。
開業パーティーに 菅前首相と 小池知事
4月9日、東急歌舞伎町タワーの開業パーティーが開催された。東急電鉄の野本弘文会長、政界からは菅義偉前首相、小池百合子都知事が登壇。豪華な顔ぶれとなった。
なにしろ歌舞伎町周辺は外国人観光客にとっても人気スポット。当然、東急歌舞伎町タワーは訪日外国人観光客を当て込んで建設された。菅前首相が来賓というのはインバウンド拡大政策を進めてきた中心人物でなおかつ「野本会長は菅前首相の後援者です」(都内担当記者)なのだ。
小池現都知事が2016年の都知事選、自民党東京都連の反対を押し切り立候補した際、対立候補に増田寛也元総務相をぶつけたのが当時、官房長官だった菅氏。遺恨はあっても歌舞伎町タワーの式典は重要だ。しかも小池知事は4月の衆院和歌山補選で自民候補の応援演説に立った他、これも犬猿の仲とされた萩生田光一政調会長とも融和ムードだという。
それに菅前首相は2050年カーボンニュートラルを宣言しておりSDGs、脱炭素社会に力を入れてきた政治家である。インバウンドにSDGs、歌舞伎町タワーにもみられたコンセプト。その推進者たちが開業パーティーに集まったのだ。
東急歌舞伎町タワーはインバウンド推進の政治家にとって重要な存在だという。それは大規模な新宿再開発と関係する。
「歌舞伎町タワーの開業は『新宿グランドターミナル構想』に向けて起爆剤になったでしょうね。国内外の観光客に人気が高い新宿駅周辺を再開発、再整備してさらにインバウンド需要を高めようというわけです」(都庁関係者)
新宿駅直近地区の再整備事業で2018年に「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」が策定された。
だが再開発となれば往々にして反対運動が起こりえる。そこで“SDGs”という大義を前面に出した開発というわけだ。しかも関係する鉄道会社もサステナビリティ、SDGs貢献といったスローガンを経営方針に加えている。
「サスティナブルな町作り」この一語だけでマスコミは有頂天になりそう。逆に言えば再開発の免罪符にSDGsを利用するという見方もできる。歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレはそんな思惑から生まれたと考えられる。
人権問題、環境問題を引き換えに大規模開発、事業を進める。同和事業でも見かけた光景だ。
しかし美辞麗句だけが並ぶSDGsの無理強いはトラブルの温床になりかねない。それでも行政や企業が躍起になるのは本来の理念とは離れて「政治的事情」になってはいないか。
それに政治や行政のシーンでSDGs、サステナビリティを冠した事業や取り組みに無批判なマスコミの責任も大きい。サスティな記者たちは普段は「反権力「権力の監視」と言いながら政策としての「SDGsをチェックどころか心をときめかすかのようだ。
かといって歌舞伎町周辺に蔓延する売春、暴力、ドラッグ、こういった難題はSDGsを唱えたところで解決しない。歌舞伎町の中心で政治家や経済人がSDGsやインバウンドを叫び、外では悩める若者たちが彷徨っている。ジェンダートイレ騒動は日本の病理の一端に過ぎなかったのだ。