先の統一地方選の結果、全国の自治体の首長と地方議員(非改選含む)は774人になった日本維新の会。当初掲げた目標600人以上を上回る好結果となった。特に印象的なのは首都圏でも維新候補が続々と当選したこと。地域政党から全国組織化を予期させる勢いだ。しかし関西、関東で勢力を拡大する中で東海地方となるとパワーダウンは否めない。
自民党の エラーの間に 得点!?
大阪府市議会は過半数、奈良県知事選、衆院和歌山1区補選で公認候補が当選、統一地方選&補選は日本維新の会の一人勝ちといってもいいだろう。
また群馬、栃木、香川県の県議選で初の議席を獲得。全国政党への弾みをつけた。
確かに地方議員は選挙前の目標を達成したが、「躍進」とまで言えるだろうか。自民党の失策に助けられたという側面もある。野球でいえば「エラーで打点がついた」というものだ。
やはり象徴的なのは奈良県知事選挙。自民党県連が推す平木省氏と現職、荒井正吾氏の立候補で党内が分裂し結果、維新公認の山下氏が当選した。多選の荒井氏だったが、党本部の有力者、また複数の自治体首長が支持。自民が平木一本化できなかったのは失態だ。
また和歌山補選も同様に自民党の内情は“ グダグダ”。以前から紹介してきたが、和歌山市は故・中西啓介元防衛長官から引き継がれる非自民保守系の支持グループ「岸本党」=岸本周平後援会の存在が大きい。自民党王国にあって旧民主党・国民民主党所属だった岸本周平現知事が衆院時代、当選し続けたのも「岸本党」の支持があってのこと。
維新旋風、自民の自滅? どちらにしても 二階さんは やっぱり政界の ドンだった!
補選前に開催された岸本後援会(岸本党)の総会で岸本知事は自民党公認の門博文候補支持を呼びかけた。このため著者は“ 自民優勢”と判断したが、事態はそうは甘くなかった。結果は門氏の落選。
それには門氏の不人気が想像をはるかに超えていたこと、また「岸本党の7割近くが維新の林佑美氏に投票しました」(自民党関係者)の2点が挙げられる。ご存知の通り、岸田首相は今月15日、和歌山市雑賀崎漁港で門氏の応援演説中に爆弾テロに遭遇。本来ならば自民に同情票が集まるはずだが、それでも有権者は門氏にノー!だった。
つまり維新の熱烈支持、維新旋風というよりか、自民党が勝てない候補を擁立したのが現実。さらに次に示す写真は自民党和歌山関連の軋轢を物語る。
「和歌山市中之島の自民党掲示板に貼られた岸田首相のポスターの上に維新の林さんのものが貼られていました。ありえないことでしょ(笑)」(地元情報通)
岸田首相は爆弾事件後も、再び和歌山を訪れ門氏を応援した。二度の和歌山入り、おまけに爆弾テロときたら自民党和歌山県連は岸田首相には感謝と謝罪どころの話ではない。ところがポスターとくればこの扱いだ。岸田首相にも非礼の上に、そもそも維新を利するため党への背信行為である。
自民党和歌山県連に確認したが「把握していませんし、党員がそんなことをするはずがありません」と反論する。しかしこんな内情も。
「県連内で門氏擁立に不満を持った一派が独断でやったことです。すでに県連にも報告されています。ところが大事にすると補選敗北の責任問題に発展するので“ 不問”という顛末でしょう」と明かした。
あるいは自民党が門氏以外の候補を立てた場合、林氏の当選はなかったかもしれない。内部の人間関係だけで門氏擁立に踏み切った自民党は明らかに失策。維新も党を挙げて林氏をフォローしたが、“ 風が吹いた”とまでは言い切れない。
維新にとって 尾張名古屋は「最重要地区」
この通り、関西は圧倒的、関東でも確実に議席を伸ばした維新。だがこれに東海地方、名古屋市が続かない。日本維新の会は愛知県議選&名古屋市議選で合計15人を擁立したが、当選は市議1名に留まった。統一地方選で圧倒的な存在感を示した維新だが、東海地方では並以下。岐阜県は岐阜市、大垣市、羽島市議選で3議席、三重県はなし。
愛知県は伝統的に旧民社党系が強くその系譜を継ぐ河村たかし名古屋市長が率いる減税日本、岐阜県は自民党王国、そして三重県は三教組(三重県教職員組合)、自治労の影響など東海三県でそれぞれ事情が異なる。余談だが維新の会三重県総支部といえば当サイトでも関係情報を報じたことがあった。
【津市の闇】田邊氏、維新新人市議 “圧力 ”のウラに「政活費不正」福田慶一市議が いた!
2022年1月の津市議選で維新から立候補した佐藤チコ市議が維新の会三重県総支部所属の自治体議員と党関係者から津市相生町自治会長事件・田邊哲司氏を紹介されトラブルに発展。佐藤市議に対してはその後、怪文書の配布など嫌がらせ行為が発生した。どう見ても佐藤市議に落ち度はなかったにも関わらず党から除名処分が下された。全国的に話題になった相生町事件当事者と維新議員、関係者と縁があることに驚いたものだ。
維新関係者から放たれる“輩 ”感が奇しくも津市では的中してしまった。なお先の自治体議員は旧民主党出身で、2006年に津市内の飲食店で女性店長に暴行して逮捕された過去を持つ。こうした素行も維新の輩感を醸し出してしまう。
過去、問題を起こしたにも関わらず他党出の議員を引き込むのも、裏返せば人脈が乏しいがゆえだろう。それに東海地方、中部地方ではまだ維新の組織力は弱い。そこで日本維新の会は東海地方の党勢拡大を狙っており、その中心である名古屋市を「最重要地区」として注力してきた。
愛知維新の会代表には地元議員ではなく、浦野靖人衆院議員(大阪15区)を起用。大阪本部の直轄にして東海地区と連携をとる戦略だ。
愛知県議&名古屋市議に15人の候補を立てて、東海地方攻略を目指した。
しかし東海地方で維新の新人候補は少ない。そこで経験がある他党の議員を公認候補とした。今回の名古屋市議選で話題になったのは減税日本市議団団長を務めた他、当選3回の実績を持つ鹿島敏昭氏が維新に鞍替えして出馬したことだ。鹿島氏は地元の有力学習塾「鹿島塾」の代表者としても知られる。
減税関係者は鹿島氏の鞍替えについてこう打ち明けた。
「鹿島さんは今回の統一地方選で引退の意向でした。ところが経営する塾を大手「S」に売却したので定期収入が無くなります。そこで議員活動を続けようと、河村市長に減税での公認を依頼しましたが、拒否されてしまったのです。そこで維新から出馬になりました。一部報道でみられた“ 河村市長への離反”とは事情が異なると思いますよ」
他党でも経験豊富な候補を維新が取り込むのは他選挙区でも起こる話だ。
鹿島氏に確認すると
「まあいろいろ噂する人はいますけど(事情は)違います。維新から出馬をするのは昨年の参院選で考え方が変わったからです」
と説明した。開票前は鹿島氏の造反で河村市長離れ、減税の衰退といったニュアンスの報道が目立った。河村市長といえばあのトラブルも記憶に新しいだろう。河村市長は2021年、東京五輪で金メダルを獲得したソフトボール選手の表敬訪問を受けた際、選手所有のメダルを噛んで大バッシングを受けた。減税の議員からは河村市長に謝罪を求める声も起きたという。
河村市長・減税に逆風か、と思いきやところが名古屋市議選の結果は5議席増となる14人が当選。河村市長の人気健在を裏付けた。
逆に維新は県議選・名古屋市議選では当選1名のみ。全国的に維新躍進が伝えられるが、それでも東海地方ではまだ新興勢力なのだ。
国民代表代行・大塚耕平氏が 名古屋市長選へ?
維新が「最重要地区」と位置付ける名古屋市。ところが市議選では党勢を伸ばすことができなかった。そこに連動するかのように国民民主党代表代行兼政調会長、大塚耕平参院議員が次期名古屋市長選へ出馬する意向だと報じれられた。愛知県は旧民主党系が強く、大塚氏は連合愛知の推薦候補。手堅い支持基盤を持っている。
また今月25日には国民・玉木代表が維新との連携について意欲的と報じれらたのも見逃せない。
一方、維新は関西地区で公明党と選挙協力をしてきたが、馬場伸幸代表が公明党との関係について見直しを明言した。
当面の維新は独自路線を歩むとみられる。しかし同党が「最重要地区」と位置付ける名古屋の市長選に国民・大塚氏が立候補するのは“我関せず ”とはいかないだろう。しかも国民側は維新に秋波を送っている。協力関係は十分、あり得る。
それに主要都市の首長、議会を攻略するという維新の戦略上、名古屋市は絶対に落としたい城だ。
仮に大塚氏がこのまま名古屋市長選に出馬した場合、有力候補になるのは明らか。維新にとっても「国民民主党との連携」は東海地方、名古屋市の壁を破る足がかりとなる可能性は高い。とはいえ大塚氏は連合愛知の推薦候補であり、ご承知の通り維新と連合は相容れぬ関係である。
全国政党化しつつある維新だが東海地方、名古屋の壁を破るのは障害が多いようだ。
前略、テーマ外の件で失礼致します。国立国会図書館で菊池山哉さんの前編が閲覧出来ると知り利用者登録しました。後編は閲覧は出来ないのでしょうか。ご存知でしたら回答のほど宜しくお願いします。
#b3698ac364fa51e57b05e6f3cbb80a6f
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/3035266/1/3
後編はこちらですよ