女装した男性が性的欲求から女性スペースに侵入する。このことは性同一性障害とは別問題で列記とした性犯罪だ。ところが事後に性同一性障害であるかのようなカミングアウトをした場合、司法や社会はどう判断し向き合うのか。昨年2月、総務省の田中宏東北総合通信局長(当時)が宮城市太白区内のホテルの女湯に「女装姿」で侵入し女性3名の下着を盗んだとして建造物侵入及び窃盗罪で起訴。7月、懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決を受けたが田中氏は動機について「女性になりたい気持ちを抑えられなかった」と述べたのだが―――。
性同一性障害の 診断結果を持ち出すと 裁判官は―――
性同一性障害に悩むトランスジェンダー男性が公衆トイレや浴場に入る現象については現状、女性利用者の理解に委ねるほかない。しかし女装した男性が女性スペースに侵入するのは事情が異なる。明確な性犯罪だ。
それが現実的になったのが件の事件である。田中氏は2019年4月に東北総合通信局長に就任。いわゆるエリート官僚だ。田中氏は2月16、29日は仙台市太白区のホテルの女湯で女性下着合計3枚を盗んだ。
女装して女性スペースに侵入する同種案件は過去にも存在したが、同事件は事情が異なる。地元ウォッチャーの話。
「弁護側は田中さんが性同一性障害の診断を受けたと主張したのです。また法廷ではその妻も証言して、家族が更正させると情状酌量を求めていました」
昨年2020年6月30日の『河北新報』によると田中氏は
「女性として見られたい気持ちがあった。服を着れば理想の女性と同一化できると思った」
と供述したという。
判決では仙台地裁は「2週間に2度の犯行は軽微とはいえない」としながらも
「女性として肯定されたいと考えることは周りから否定されることではない。判決はそのことを問題にしてない」と述べ「戸惑うこともあると思うが、専門家の協力を得ながら家族とともに向き合ってください」と裁判官は励ました。
すでに被害者とは示談を済ませており、執行猶予付き判決は妥当な線ではあるが…。
「裁判官の態度は明らかに(田中氏に)同情的でした。彼が従来から性同一性障害を自覚していたのか分かりません。しかし今後、悪意がある女性自認者が犯罪行為の後、性同一性障害と言い出したら司法は正当な判断を下せるのでしょうか」(前出ウォッチャー)
同和事業の不祥事においても明らかに司法の「手心」が加わった判決が下る。これもよく見られた現象だ。
同事件はもし「性同一性障害」を持ち出さなければ裁判官の心証もまた異なったに違いない。 「女性として肯定されたいと考えることは周りから否定されること ではない」といった説諭を引き出せたのかどうか。
今後、明らかに性的欲求を持つ女装した男性が女性スペースに侵入したが、 「性同一性障害」と主張したら…。それ以前に「性自認」を文言通りに解釈した場合、 「性同一性障害」 の有無を問わずに正当化されかねない。あらゆるケースを想定して議論すべきではないか。
またある性的マイノリティーに同事件についての見解を聞いてみたところ意外な反応を示した。
「LGBTというとマスコミや行政はものすごく貧困でワーキングプアといったイメージを広めます。彼の性同一性障害が事実であれば『東北総合通信局長』という職であった点からしても経済的に困窮しているLGBT像はおかしいと思うんですがね」
東北総合通信局長というステータスはメディアや政治で描かれるLGBT像とまた異なる。ともかく今後、性犯罪の隠れ蓑に「性同一性障害」を持ち出し司法の同情を誘う可能性…。こうした懸念も単純に「差別」で片付けてもらいたくないものだ。