日本維新の会で所属議員の離党ドミノが止まらない。ここ数年、地方議員の離党、除名が増加しているが今月8日、守島正衆院議員(大阪2区)、そして斉木武志(比例北陸信越)、阿部弘樹(比例九州)両衆院議員が離党届を提出。特に生え抜きで大阪都構想の論客でもある守島氏の離党は衝撃的だ。守島氏の離党は維新が連立政権に加わる布石との声も漏れ伝わる。
隠れ民主党?維新の本質はリベラル保守

造反の予兆はあった。8月7日、X上で共同代表への立候補表明をした藤田文武衆院議員に対して守島氏は「笑える」「二枚舌すぎて」などと辛辣な言葉でリポストした。その後、投稿は削除されたが、不協和音を物語った。
そしてこの約1か月後に離党届を提出した守島氏は維新を「保守政党」と定義した藤田氏の発言を批判。そして「右・左のイデオロギーに寄らない改革政党だと思ったが、方向性が異なってきた」と語った。
改革志向だった守島氏らしい発言だ。かつては故・石原慎太郎氏も在籍した過去があるだけに、保守右派を望む支持者も少なくないがその実態は「リベラル保守」だという。保守層を参政党や日本保守党に奪われた結果は前回衆院選と今年の参院選の大敗に表れている。そこで保守色をアピールすると守島氏のようにアレルギー反応を示す党員も出てくるわけだ。
守島氏はその最たるものである。しかしこれまで維新は改革政党だったのか。前原誠司前共同代表の主張を受け入れ高校無償化を取り入れた。本来は学校改革とセットで行うべきところをまるで旧民主党政権のバラマキのようだ。
改革政党というのも怪しいし、そもそも保守本流というわけでもない。強いて言えば大阪第一党という表現もできる。一体、何の政党なのか実は所属議員ですら説明できないのではないか。
ただ守島氏の場合、単純に党の理念やスタンスだけで離党を決意したわけではなさそうだ。関西の維新議員が選挙事情が絡むと指摘する。
「3月に維新は新年度予算案に賛成するなど自公政権と協調的でした。次期衆院選の結果次第では自民が維新に連立入りを要請する可能性があります。もともと守島氏は反吉村派。このまま維新にいても〝2区を公明党に渡せ〟と取り上げられるだけ。そこで思い切って離党したというのが真相です」
これまで現職であっても切り捨ててきたのが維新の流儀だ。生え抜きの守島氏であっても例外ではないだろう。
守島氏の離党に対して吉村代表は「反党行為。筋を通すなら議員辞職すべき」と批判したが、これはおかしい。それならば維新は前原誠司氏ら旧国民民主党からの離党組を受け入れたが、それは議員辞職した上でのことだろうか。こうした態度からしても維新内部から伝わる旧民主党優遇の風潮は一体どうしたものだろうか。
維新が鳩山由紀夫講演会を認めたって本当?
先の参院選では参政党のスローガン「日本人ファースト」が非常に注目を集めた。自民党、日本維新の会ですら「多文化共生」という用語を好んで使用する。その中で参政党の「日本人ファースト」に心躍ったという有権者もいたことだろう。
自民党ですら9月2日に発表した参院選の総括文で
「自民党は左傾化している」「政府・与党は日本人よりも外国人を優遇している」等の疑念も一部世論に生まれ、他党へ流出することとなった。
と述べている。こうした指摘は維新にも向けられることが少なくない。一つには先述した通り、本質的には中道、保守リベラルであること、また時折浮かび上がる旧民主党色である。8月29日に旧民主党で衆院議員を一期務めた日本維新の会岐阜県総支部副幹事長、山田良司氏の政治資金収支報告書が問題だらけだと報じた。
【岐阜維新】恵那峡にダミー事務所 光熱費140万円 監査人は無資格 山田良司元幹事長の黒い収支報告書
すると意外なことに山田氏がおかしいとの情報提供が殺到。また政治資金収支報告書の提出期限遅れというだけで離党、支部長解任になっているのに山田氏だけは追認されているのはなぜか、といった声が寄せられた。
同じ問題行為であっても地域や立場によっては不問。こうした対応も維新らしいことだ。しかも同氏の「山田良司を育てる会」「山田良司後援会」の政治資金収支報告書(令和3、4年分)は3か月から最大で1年半遅れのケースもあった。山田良司後援会に至っては政治資金規正法第17条第2項の適用団体(政治団体の設立届を届け出ていない団体)として公表。2年連続の提出遅れで強制解散になった。かなり不名誉なことだが党本部が処分したという話は聞かない。
この点については山田氏は「衆院議員時代や下呂市長時代の団体の整理が終わっていないので適切に処理していきます」と釈明したが、党内では同様の行為を処分された議員がいることを知っているのだろうか。
また中津川市への裁判所誘致を目的に設立した「司法移転の党」も提出期限遅れ。しかし問題はそれだけではない。関係者の間で疑問視されているのは昨年9月15日、同市内で鳩山由紀夫元首相、旧民主党政権で参院議長を務めた平田健二氏を招いて講演会を開催したことだ。

鳩山氏と言えば9月3日に中国で開かれた抗日戦勝80年の記念行事に出席したことに批判が集まっている。今年に限らず明らかに中国のプロパガンダに利用されてきた人物だ。党内にはリベラル系と思しき議員もいる日本維新の会だが、それでも維新の関係人物が鳩山氏の講演を主催するというのはかなり違和感がある。
山田氏に問うた。
「歴史認識の話ではなくてあくまで三権の長の経験者として岐阜に最高裁を誘致する計画について語ってもらっただけです。これは浦野(靖人)さんにも報告して許可してもらっています」
国会議員辞職後の鳩山氏の活動はまるで中国のエージェントのようだ。そんな人物と日本維新の会が紐付けられることは問題がないのか。ただでさえ維新に対しては「親中派」との批判が起きている。
本当に党本部が鳩山氏の講演会を認めたのだろうか。党本部に①なぜ政治資金収支報告書の提出遅れで除名、離党になった議員がいる中で山田氏は不問なのか②鳩山由紀夫氏の講演会を容認したのは本当か、この2点について質問状を送付したが返答はなかった。
また岐阜県総支部代表の東徹衆院議員にも所見を求めたが「Webサイト上では岐阜県総支部代表になっていますが、すでに退任しております」(同事務所)としており、代表交代が起きたようだ。
少なからず党内からは疑問の声が挙がっている。党本部は関知せずということだろうか。
奇しくも維新に見切りをつけた守島氏はかつて党の現状についてこう語っていた。
「コミュニケーションツールは皆無といっていいほどなくて出世して役員になっていかないと全体会議、それこそ大阪では何百人の議員がいる中で“ 最後何かある?”というしか言う場がないのが現状です」
もし党の方針や対応に疑問を持ったら「出世」しか道はないようだ。それができないならば守島氏のように「離党」しか道はないのか。自公政権との大連立以前に党の存続自体が危なくなってきた。