伊東市・田久保真紀市長の東洋大学学歴詐称問題に新展開。今月1日の伊東市議会で市長への不信任決議案が全会一致で可決された。これで解散か辞職かの二択になったが、学歴問題と同市が抱えるメガソーラー問題は切り分けて考えるべきだ。しかも熱海市土石流で対応が疑問視された当時の副知事、難波喬司静岡市長が介入してきたのは解せない。(写真は2021年7月7日の副知事記者会見)
難波静岡市長と熱海市土石流の過去

筆者は長らく熱海市土石流を報じてきたのだが、痛感したのは行政とマスコミによる情報統制だった。一例をあげれば百条委員会で証人喚問を受けた土石流起点の盛り土業者C氏に関する情報。当サイトが土石流記事を最初に報じたのは2021年7月6日。その数日後にC氏の存在を知ることになり、元関係者らと同氏を追った。
しかし全く足取りはつかめなかったのだが、その数か月後のことである。発災直後に一部メディアがC氏を知り、自宅に直撃していたことを知った。ところがこうした報道はなく、むしろマスコミは情報を制限しているとさえ思えたものだ。
その一方で中国から帰化した被災者には過剰なほどの〝寄り添い報道〟。土石流は情報統制との闘いと言っても過言ではない。こと土石流起点付近のソーラー発電所については言及すること自体が「差別」と意味不明なレッテル貼りをした一派もいた。
また発災直後、神奈川県小田原市内のソーラー発電所の設置事業者「三心」のもとに多くのメディアが殺到したという。ところがここでの取材が記事になったことはなかった。
今やソーラー発電所は一大利権であり政治、行政のタブー。
何よりそれは土石流の対応にあたった当時の副知事、難波喬司現・静岡市長の方針でも見てとれた。あれだけの大惨事である以上、あらゆる角度から検証すべきである。ところがなぜか土石流災害の解明では〝ソーラー発電所は無関係〟という結論ありきで進んでしまった。
この点については発災起点の造成地の元所有者、天野二三男氏の著作『伊豆山崩落原因の究明』でも難波氏の対応が批判されている。天野氏はご存知の通り、土石流災害の渦中の人物であり、百条委員会でも証人喚問を受けた人物。その主張を額面通り受け取ることはできないが、しかし難波氏が検証からソーラー発電所を除外したのは事実である。
また工学博士・塩坂邦雄氏、土木設計エンジニアの清水浩氏の共著『熱海土石流の真実』でも同様の問題提起がなされていた。2021年7月6日、静岡県副知事の難波氏はソーラー発電所が無関係であると断定。
もとは2017年、造成地付近にソーラー発電所施設建設のため、工事用道路の造成が行われた。ところがこの際、排水路が埋没してしまい逢初川(あいぞめがわ)流域が変形してしまったのだ。県の報告書では盛り土の流出が地下水だと指摘されているが、地下水の流動速度は一日およそ10㎝程度に過ぎない。土石流を起こすほどの水量にはならないというのが塩坂氏らの主張だ。
しかも土石流起点のすぐ脇にはソーラー施設建設のための道路が通っており、工事車両の通行による振動が崩落を招いたという可能性も排除できない。それを検証した痕跡すらない。ところが難波氏は「盛り土だけに注目していればいい」という方針だった。奇妙なことに崩落原因調査委員会でもソーラー発電所施設が議論に上がったこともない。静岡県、難波氏ともにソーラー発電所から目をそらすような発表を続けていた。
突然、難波市長が田久保市長発言にモノを申す

まるで太陽光発電の守り神のような難波市長。
まず断っておきたいのは田久保市長の発言も稚拙という点だ。伊東市八幡野地区の伊豆高原メガソーラー計画をめぐっては田久保市長が曲解、誤解のような発言をしてきたことは事実。特に7月31日の記者会見で発した「伊豆高原メガソーラー問題も新図書館建設計画も水面下で激しく動いている」のは正確ではない。
発言については田久保市長自ら伊東市Webサイトで新図書館建設事業及び伊豆高原メガソーラー計画に関して訂正した。
さらに伊東市は9月2日、Webサイト上で「メガソーラー計画の工事進捗は見られず」「事業者からの連絡も最近は全くない」と追加発表。市長発言を強く打ち消した。
しかしこれより先立つこと8月5日の静岡市の市長会見。難波市長は質問が一通り終わると「最後に静岡市政とは関係ないことを1つ申し上げたい」と切り出して、田久保発言について言及した。
難波市長は「メガソーラー計画については河川占用の許可が得られておらず、橋梁の設置や排水ができない状況であり、太陽光発電事業を実施できる状態ではない。市職員は言いにくいから自分が代わりにしっかり伝える」と説明。
さらに「市長がいなければメガソーラーは止まらないということはない」と難波氏は語気を強めた。これは田久保市長が続投理由を「メガソーラー建設の阻止」を掲げたことに対しての批判、挑発的な意味がある。
確かに難波市長の指摘はもっともなことだ。しかし本来、全く無関係の静岡市長がなぜ突如、伊東市について言及するのだろう。副知事時代、土石流の原因からソーラー発電所を検証から除外した人物である。突如、伊東市のメガソーラーの火消しに走ったのも意図を感じてしまう。
もう一点、難波市長から漂う胡散臭さ。土木、港湾開発といった分野の専門家でありいわゆる建設族だ。このためある自民党大物との関係が指摘されている。
「古賀誠元幹事長と懇意にしているのです。福岡県八女市の朧大橋は通称〝誠橋〟と揶揄されています。2019年の静岡市長選の立候補を断念したのも古賀氏の意向だと言われています」(地元元市議)
田久保市長を皮肉ったまでは良かったが、実は難波市長自身も闇を抱えている政治家なのだ。