JAXA出身の〝宇宙かあさん〟こと立憲民主党・水野素子参院議員にパワハラ報道。『週刊文春』(2025年5月22日号)は水野氏の暴言などで2年10カ月の間に秘書11人が退職していたと報じた。水野氏は夏の参院選を辞退すると発表したが退任寸前で質問主意書100本提出するという。これでは秘書どころか役人も逃げ出したくなる!?(写真は2019年の参院選の街頭演説)
人権の立憲民主党がパワハラ報道とは

立憲民主党は人権、ジェンダー平等、多様性社会を掲げる政党だ。所属議員たちは、シンパや支援者、マスコミの前では心温かな善導者のように振る舞う。
一方、政治理念が異なる者に対しては憤怒の形相と化す。その典型例が昨年の都知事選に立候補した蓮舫前参院議員だろう。
パワハラ報道があった水野素子参院議員は産業振興の他、子育て環境の改善などを訴えてきた。議員になった経緯は複雑だ。2019年の参院選で国民民主党から出馬するも落選。立憲民主党に合流した2021年の衆院選も落選した。2022年の参院選に立憲民主党の公認で立候補。当時、横浜市長選に転じた松沢成文現参院議員の残り任期を引き継ぐ形で補欠当選した。次期参院選は神奈川選挙区で当選を狙っていた矢先のスキャンダルだ。
文春報道によって2年10カ月の間、公設秘書2名、私設秘書9名の合計11名が退職していたことが判明。「使えない」「明日から来なくていい」「お前」などの暴言を浴びせていたとされる。
活動家肌の議員が目立つ立民にあって水野氏は東大法卒、「旧宇宙開発事業団」(現・宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉)に就職し、法務・コンプライアンス課長、航空産業協力課長などの役職を歴任。輝かしいキャリアを持つ。政治活動に入ると宇宙かあさんのキャッチフレーズがついたから温和なイメージだった。このため水野氏のパワハラ報道は意外と感じた有権者も多かったはずだ。
報道を受けて水野氏は5月22日、自身の公式サイトで「私、参議院議員 水野もと子(立憲民主党 神奈川県参議院選挙区第4総支部長)は、第27回参議院議員通常選挙への立候補を取りやめることとし、立憲民主党の公認を辞退する旨を党本部に申し入れ、昨日正式に了承されました」(原文ママ)と報告した。
出馬辞退を決断した水野氏だが、まだ火種はくすぶっていたのである。
質問主意書100本はおかしいとの声「まるでパブコメ募集」

「水野氏は自身の公式サイト上で質問主意書100本を提出するという計画を発表していました。あまりに無計画ではないかというわけです」(政治ウォッチャー)
同サイトにはこんな文言が書かれていた。
あなたの声を、国会へ届けます。 質問主意書100本チャレンジ! 【ご意見・ご提案募集 締切:2025年6月6日(金)】 ※通常国会の提出締切が実質6月20日(金)になるため 私、水野素子は、任期満了(2025年7月28日)までの間に、皆さまの声をもとに、政府への質問主意書を100本提出することを決意しました。 暮らしの中で感じる「これってどうなの?」「なぜ改善されないの?」という疑問やご提案を、どうか「宇宙かあさん目安箱」にお寄せください。 匿名投稿も歓迎します。 採用されたご意見は、質問主意書として提出されるほか、ホームページ等でご紹介させていただく場合があります。 あなたの“ひと言”が、政治を動かす力になります。 ↓こちらから是非よろしくお願い致します!(原文ママ)
質問主意書とは日本の国会議員が政府(内閣)に対して文書で質問を行い、それに対し政府が文書で回答する制度だ。原則として提出後7日以内に政府は回答しなければならない。ところが霞が関の役人の間では〝厄介者〟扱いされている。
なぜなら質問主意書が提出されるとまず1時間以内にどの省庁が担当するのか決定しなければならない。
一般的には1時間ルールと呼ばれている。また回答期限は7日間あるがその間、関係省庁との協議、内閣法制局の審査、閣議決定など様々な手続きを踏まなければならない。
提出する議員にとっては提出して回答を待つだけである。しかし官僚たちにとっては途方もない労力が必要なのだ。官公庁内部でもすり合わせの上、閣僚まで相手だからその心労は並大抵ではない。
「JAXAで法務・コンプライアンスを担当していた水野氏がこの苦労を知らないはずがないでしょうにね。サイト上の文言はまるでパブリックコメントを募集しているような軽さでした」(同前)
質問主意書は年度で異なるが2020年から2023年の間は概ね衆参合わせて400~450件提出されている。その中で水野氏の100件がどれだけ突出した数字なのかよく分かるだろう。
「質問主意書パワハラか」と冷笑する声も聞かれた。こうした疑問について水野氏はどう回答するのか。自身もJAXA時代は法案提出に関わるなど永田町・霞が関の手続きの煩雑さ、過酷さは理解しているはずだが…。
水野素子事務所に連絡してみると「質問主意書100本と言っても実際に提出する訳ではありません。例えば野球の練習で〝千本ノック〟と言いますが、実際に千本もノックをしないでしょう」と妙な説明だ。その上で改めて正式に回答するという。
――すでに退任が決定した中で質問主意書の扱いはどうなるのか。
議員として民意を踏まえ政府の政策を質すことが国民からの負託です。霞ヶ関止まりでなく永田町に届くことが国会質問と主意書の特質です。国会質疑で政府回答が不十分なもの、所属委員会所掌外など国会質問の機会がない事項、今回寄せられた意見などをもとに内容を検討します。回答は、自身の活動のほか、党・同僚議員の政策検討などで参考とします。
――答弁作成の負担が大きいと批判がある中で100本の質問主意書の数は異常ではないか?
「100 本チャレンジ」は意見を広く頂きたいという表現でしたが、ご心配の声を受けて表現を改めました。現在貴重なご意見・提案が多く寄せられており、現場負担に配慮して厳選します。なお、国会法第 75 条で内閣は質問主意書を受け取った日から「原則 7 日以内」に答弁することを定めていますが、回答締切(原則)の緩和も必要と考えます。
実際に100本の質問主意書を提出するというよりは有権者から広く意見を求めたという見解だ。だが文言からしてどう考えても100本提出するとしか読み取れない。
結局、100本チャレンジは公式サイトやXからもひっそりと削除されていた。
官僚を使い倒すことが「仕事」と感じる議員たち
水野氏に限らず質問主意書を多数、提出すること自体を誇る議員は存在する。
旧民主党関係者はこんな体験談を話す。
「一つには官僚をとっちめる、使い倒すこと自体が痛快で仕事だと感じる人がいるのは確かです。例えば旧民主党政権で行われた2009年の事業仕分け (行政刷新会議)などが好例でしょう。官公庁を伏魔殿として捉え追及するのは確かに良いアピールになります。ただし同年11月に行われた最初の事業仕分けの会場は国立印刷局市ヶ谷センター体育館。これは財務省の施設で同省主導だったことの証明です。要するに省庁のムダ削減と言いつつ、財務省の敷いたシナリオに便乗したに過ぎません」
役人を吊し上げる姿は痛快だとして話題になった事業仕分けも結局、財務省の掌にあったわけだ。
もちろん官公庁は追及する必要があるが、そのことと議員の政治パフォーマンスはまた別の話だ。また無用な負担を強いることは労働問題でもある。官僚とは言え旧民主党、立憲民主党は労働者の味方の政党ではなかっただろうか。
「旧民主党と言えば2015年、質問主意書の答弁書84件のうち55件が小西祥之参院議員(現立民)から提出されたものでした。小西氏も官僚出身。答弁作成の大変さはよく知っているはずですがね」(同前)
水野氏にせよ、小西氏も然り、質問主意書の数にこだわるのは民主党マインドかもしれない。とかくファイティングポーズを支持者に見せることは旧民主系議員の〝政癖〟だ。質問主意書はその材料であり、活動家肌の野党議員の“アリバイ仕事”に堕してはいないか。このため水野氏が去ってもまだ質問主意書地獄は続くだろう。
中には政府から情報を引き出すため重要な質問主意書を提出する議員もいるため改善して欲しいものだ。