実録・淡路島5人殺害事件(4)録音されていた殺戮

アバター By 鳥取ループ

※写真は最初の殺害現場となった平野毅宅。本文には残酷な表現があるのでご注意ください。

2015年3月9日午前2時56分、平野達彦はタバコを吸いながら自宅離れのPCから、「テクノロジー犯罪」被害者支援組織にメールを送った。このちょうど一時間後、ベルトに鞘に入ったサバイバルナイフを着け、ポケットに録音状態にした2台のICレコーダーと携帯電話をしのばせてリュクサックを背負い、離れを飛び出し、隣家へ向かったと考えられる。

実は本来は前日の3月8日の深夜に犯行を決行するつもりであった。しかし、その日には一度同じ装備で自宅を出たが引き返している。犯行を思いとどまった理由について本人は裁判で「分からない」と語っている。

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犯行の舞台となった淡路市中川原町中川原は家が密集しておらず、航空写真で見ると田畑の間に家が点在した散居村のように見える。それでも、最初の犠牲者が出た平野毅宅は平野達彦の家から直線距離で30メートルほど、道伝いにいっても70メートルしかない。犯行開始から最初の犠牲者が出るまでの時間はわずかしかなかったはずだ。

平野達彦は、まず平野毅宅の門を開けると鍵がかかっていない離れに押し入った。そこで平野毅の妻の平野恒子がベッド寝ているのを見つけると、サバイバルナイフで胸を何度も刺して殺害した。

この時、平野恒子は叫び声を上げている。そして、少なくとも10回刺された。なぜそれが分かるかと言えば、平野達彦がポケットに忍ばせていたICレコーダーに女性の叫び声と「ザッ ザッ ザッ」とナイフで刺す音が記録されていたからだ。

なぜ、犯罪の証拠となるような音声をわざわざ録音したのか? 裁判で平野達彦は「身の潔白を証明するため」と語っている。彼なりに犯行は正当なものだと確信していたという意味であろうが、普段から外出する時は2台(1台では不確実なので2台)のICレコーダーを持つのが習慣となっていたということなので、犯行当時もその習慣に従ったということだろう。

平野達彦は「天誅」と唱え、平野恒子の頭部を刺したと裁判で語っているが、実際は前述の通りである。医師による検死結果でも、死因は胸部の動脈と心臓の損傷による失血死である。なお、検死結果によれば刺し傷は全部で29箇所あった。

平野恒子を殺害した平野達彦は、次に母屋に押し入った。母屋にも鍵はかかっていなかった。そして、ベッドで寝ていた平野毅に襲いかかった。「やめてくれ」と平野毅は声を上げたが、平野達彦は同じように胸や首を何度もサバイバルナイフで刺した。この時、ICレコーダーには刺す音と共に、「…のかたき」「よくもお前電磁波を」という平野達彦の声が録音されている。検死の結果大動脈と心臓が切断されていた。刺し傷は27箇所であった。

平野達彦は、次の犠牲者である平野浩之宅へ向かった。平野毅宅からは50メートルほどである。

「いま電磁波兵器で攻撃されています」そうつぶやきながら平野浩之宅の正門から入って母屋に向かった。今度は玄関の鍵がかかっていたのでインターホンを鳴らした。しかし、反応がなかったため、平野達彦は一度自宅に引き返し、血のついたナイフを水道の水で洗った。

午前4時を過ぎていたが、春先なのでまだ辺りは暗かった。この後、平野達彦は自宅の離れでPCに向かいながらタバコを吸い、飲み物を飲みながら夜が明けるのを待った。

夜明けを待ってさらに襲撃

次の殺害現場となった平野浩之宅

完全に夜が明けて、日が昇っていた午前7時、平野達彦は再び同じ格好で平野浩之宅へ向かった。ただ、少し違ったのは手にタオルを持っていたことだ。

その時、平野浩之宅では母屋で浩之、妻の方子、母の静子、そして娘の4人が朝食を終え、それぞれの部屋に戻った直後であった。

平野達彦が同じようにインターホンを鳴らすと、平野浩之が出てきた。平野達彦は手に持っていたタオルを落として注意を引き、首の下辺りをサバイバルナイフで突き刺した。平野浩之はさらに胸を何度も刺され倒れたが、再び起き上がって門の外の方に逃げ出した。

その時、平野浩之が刺されたのに気がついた妻の方子が、娘に110番するように叫んだ。しかし、娘は気が動転していたのか通報できなかったため、方子は娘に隠れるように言うと、自ら洲本警察署に電話した。

玄関から母屋の中に押し入った平野達彦はそれを見て襲いかかった。

洲本署員の証言では110番ではなく、平野方子から警察署の加入電話に電話があった。時刻は午前7時13分、「近所の平野が家に入ってきて刺した」というのを聞いて、署員はすぐに平野達彦のことだと察した。洲本署でも彼はトラブルメーカーとして有名だったのだ。署員は聞き返そうとしたが、受話器が落ちる音の後に悲鳴が聞こえ、通話状態のまま会話が途切れた。

医師の検死結果では傷は32箇所。心臓が切断されており、ほぼ即死であった。

平野方子が洲本署に電話で助けを求めたのとほぼ同時刻、平野浩之と、浩之の娘から相次いて110番通報があった。

平野浩之は近くのあぜ道に倒れ、携帯電話で110番通報していた。母屋の勝手口から逃げた娘はそれを見て、近所に助けを求め、そこから110番通報した。

一方、平野達彦は母屋の玄関を出ると、離れに行って玄関を開けた。そして、玄関にいた平野静子に襲いかかり、「天誅」と叫んで首と胸を何度も刺した。

検死によれば傷は14箇所。心臓と胸部大動脈貫通による失血死であった。そして、かろうじて逃げた平野浩之も既に致命傷を負っていた。右肺を刺され、左内胸動脈を切断されていたため、呼吸が出来ず死亡した。

平野達彦は最初から平野浩之、方子、静子を標的としており、普段母屋と離れのどちらにいるのかも把握していた。娘については計画になかったが、もし居るのを知っていれば同様に「天誅」していただろうと裁判で語っている。

逆に平野達彦の標的となっていたが難を逃れた人もいる。平野達彦は以前に騒音を巡ってトラブルになり自身を鉄パイプで殴った平野毅の孫が平野毅宅の離れにいると見ていたが、孫は普段は実家から離れたところで暮らしており、週に1,2回ほどしか実家には戻っておらず、当日もいなかった。

準現行犯逮捕

平野静子を殺害した平野達彦は、再び自宅の離れに戻った。今度はナイフを洗わず、身体は返り血を浴びたままの状態だった。パソコンの前に座って叔母と母親に電話し、「復讐に成功した」と報告した。そして、警察や救急が集まって外が騒然となっているのを見ながら、煙草を吸った。

6人の洲本署員が平野達彦宅の母屋を訪れると、父親がいた。離れには鍵がかかっていたので、署員がスペアキーを持っている父親に開けさせた。

平野達彦は落ち着いていて、抵抗しなかった。「やったんか?」と署員が聞くと「報復したんや、詳しいことは言えんから弁護士を呼んでくれ」と答えた。

平野達彦の顔、服、靴には血がついており彼がやったことは明らかだった。この時も平野達彦はICレコーダーで録音しており「準現(準現行犯)でいこ」等の警察の会話が録音されている。

平野達彦は刑事訴訟法212条2項、準現行犯として逮捕され、洲本署に連行された。そこで署員が所持品からICレコーダーを見つけ、録音を止めた。

(次回に続く)

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