学術・研究:部落探訪(158) 特別編 和歌山市“芦原地区” 前編 自治会長逮捕の背景は?

カテゴリー: 部落探訪 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

和歌山市の芦原地区は、和歌山県でも最大の同和地区であり、それだけでなく地方都市の同和地区の中では全国でも異例の規模である。

1934年の記録では1797戸という規模だったとされる。現在の和歌山市雄松町、汐見町、三沢町、島崎町が含まれるとされ、また和歌川対岸の手平の一部も該当するとされるが、境界線ははっきりしない。いずれにしても千世帯を優に超える巨大同和地区であることは間違いない。

このコインパーキングから探訪を開始した。あちこちに路上駐車されているが、住民によれば最近は時々警察が取り締りに来るので、長く停めるなら路駐はしない方が無難らしい。

報道でご存知の方も多いと思うが、現在この地区は自治会長の逮捕に揺れている。非常に大きな地区のため30くらいの自治会があるのだが、その連合体である芦原地区連合自治会長の金井克諭暉よしゆき(韓国籍で本名は金正則)容疑者(63歳)が10月23日に詐欺容疑で逮捕された。

直接の容疑は業者から自治会に対する協力金として受け取った30万円を、実際は自分の懐に入れていたということである。しかし、それだけではない、背景にある芦原地区の自治会と和歌山市との異常な関係が次々と明らかになった。

金井会長は詐欺容疑での逮捕の前、10月2日に妻の福井さつき(51歳)と共に、スナック「サクセス」を無許可営業した疑いで逮捕されている。この件は、金井会長は嫌疑不十分で不起訴、妻は罰金50万円で決着がついた。しかし、サクセスはかなり昔から営業しており、市の職員が出入りしていたことでも知られ、なぜ今さら摘発されたのかという声も聞かれる。つまり、本丸の詐欺での立件の足がかりとして別件逮捕したのではないかということだ。

まず目についたのが、この芦原文化会館。隣保館である。市の施設であるこの建物の会議室が自治会の「会長室」になっており、私物が置かれていた。市の職員が自治会長の秘書のようになっていたとの報道もある。

綺麗でスタイリッシュな建物は、筆者が今まで見た中でも最も新しい隣保館で、2015年に竣工した。

同和施設であるかどうかは棚に並べられている小冊子を見ればすぐに分かる。公益財団法人人権教育啓発推進センターの情報誌「アイユ」は普通の公民館ではまず見られない。実際、ここは市役所の人権同和施策課が所管している。

「会長室」のことについて職員に聞くと、取材は本庁を通してほしいとのこと。

一方、こちらは芦原地区会館で、公民館に相当する。ここには市役所の「連絡所」がある。和歌山市特有の事情だと思うが同和地区に限らず、各地に連絡所が設置されている。こちらは自治振興課の管轄となる。

ここにも「会長室」があったが、中の私物は既に撤去されたとのこと。職員と話していると電話がかかってきて、何やら手回しをされていた。やはり、取材は本庁舎を通してほしいとのことだ。

気になったのは、壁に掲げられたカレンダー。「株式会社昭榮」は金井会長の実兄が経営する警備会社である。

地区内には公営住宅団地がいくつも建っている。地方都市の部落としては異例の規模で、大阪の浪速地区や神戸の番長地区のような大都市部落とよく似た風景である。

当然、これらは同和対策で作られたものである。

住民によれば、40~50年前は畳一枚に何人も寝ているような家が普通にあったという。芦原地区はもともと皮革産業の街で、100社くらいが加入した皮革組合があった。同和事業が始まったころ、組合が日当5000円でバス10台に500人くらいを引き連れて毎月のように国会議員に陳情に行き、事業の実施を実現したという。

同和対策なので、建設費の3分の1が和歌山市の予算で、残りは国の予算である。用地は住民の土地を市が買い上げて確保した。すると、住民としては和歌山市から与えられた住宅というよりは、自分たちの力で国から和歌山市に予算を引っ張ってきたという意識が強いという。他の同和地区でもしばしば見られる、公共物であるのに「自分たちが勝ち取ったもの」という感覚だ。

当初は月1800円くらいの家賃だったが、現在は一般の公営住宅と同様の基準になっているという。そのことで、和歌山市は遠慮しているのではないかと住民は語る。

団地の脇には集会所がある。これらの団地1つ1つに自治会が結成されている。

団地は空き部屋だらけになっているものと、全て埋まっているものがある。古い団地は耐震基準の問題があり、新しい団地に住民を移し、古い団地は改修するか取り壊すことを市が計画しているのではないかということだ。

もともと同和対策で作られた団地だが、先述の通り既に一般化されている。それでも、この地には特有の事情がある。

住民によれば、この団地に入るには、まず金井会長が窓口となる。そこで、住民税を滞納しているなど、入居基準を満たさない人は排除される。本来は市役所がやるべきことで、これも利権の温床になりそうな気がするが、なぜそのようなことをするのか?

どこまで本当か不明だが、芦原の団地に入ろうという人は、訳ありな人が多く、入居を断ると市役所に延々と抗議して大変なことになるからだという。住民曰く「芦原は同和地区だから、ビビっとるんや、市役所が」ということなのだ。

市営住宅は他にも利権の温床となっている。これだけ大規模な団地だと小規模な修繕は頻繁にあるのだが、それらは随意契約で地元の少数の業者に発注される状況が続いているという。

古くからの住民の、戸建ての家も多い。

芦原地区の土地の相場は坪10万円くらい、これが地区外なら50メートルほどの違いでも坪30万円程度だという。

地区内には国民民主党の岸本周平代議士のポスターがあちこちに見られる。かつては自民党の谷本龍哉元副大臣の地盤だった。

芦原地区は世帯数が多く、自治会も強いので大票田だ。当然ながら政治家は配慮する。地元の祭りには市長、衆議院参議委員議員が訪れる。

この辺りが汐見町で、報道によれば金井会長の住所はこの付近である。

住民によれば、金井会長は在日コリアンであるが、芦原で生まれ育ったことは間違いなく、「まさのり」と呼ばれているという。多少怒りっぽいところはあるが、悪い印象はない。しかし、自治会の協力金のこととなると、住民は話をぼやかし、あまり話したがらない様子であった。

一方、金井会長はベンツを乗り回し、派手な生活をしているので、妬まれているのではとも言われる。

歩いていると、噂に聞いていた警備会社が。

後編では、さらに事件の核心へと迫る。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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