思わぬ状況から連合赤軍の指導者、川島豪の生き様を探ることになった。共産主義革命の夢が潰えた後、屎尿汲み取りの会社の経営者に転身するという意外な経歴。そして岐阜の同和のドン、石井輝男との意外な交流。そして取材を深めるとさらに興味深い過去が判明していった。
安保闘争を留める盟友・塩見孝也、屎尿汲み取り業界の川島
あさま山荘事件の時に赤軍メンバーたちは、米・ニクソン大統領の訪中の報を聞き愕然としたという。革命思想の拠り所とした中国が“米帝”と手を握る。モチベーションの喪失、梯子を外された、そんな生易しいものではなかっただろう。そして今、あさま山荘の跡地は中国資本が買収した、そんな報道もあった。“地上の楽園”と奉じた北朝鮮に至っては、共産主義どころか金一族三代の“絶対王政”下にある。安保闘争に身を投じた人々もすでに高齢者となった。かつての同志たちは、革命より年金額や健康を案じていることだろう。川島が晩年、対談した赤軍派最高議長の塩見孝也は、健在でMIXIなどSNSで発信を続けている。
塩見の最近のMIXIのエントリーを見てみよう。「共謀罪制定に反対する。あくまで、憲法9条1項、2項を守り抜き、あらゆる核実験。核武装に反対しよう」(2017年4月20日)。
アラブや在朝の元赤軍派の「亡命組み」の「仲間達」が核実験、核武装に黙っていたり、賛成しているのは全くの思想的,理論的堕落といえます。 生物兵器の使用に沈黙することを批判する。反核実験、反核武装を日本列島の地域のみに限定するのは、スターリン主義への屈服の日和見主義以外の何物でもありません。一体、「一宿一飯の義理」が、どうして、自国と世界の人民の解放の基本原則となるのか!ある種の「世話になったり」「義理を負う」こととは、厳密に区別されて処理されるべき。元革命左派、佐藤保は、朝鮮核実験をおおぴらに支持する、と僕に言いましたが、どうしてそう言えるのか!永田・森両君が仕組んだ野合でっち上げ「新党」と同じような類の「同志殺し」の政治が再現されていっているではないか。
安保闘争時代の風を留めた主張。76歳にして気力溢れるという見方もできれば、「あの時代」で時間が静止している。そんな様子も伝わってくる。
そこをいくと、川島は――――。
大垣市外花。ここが川島ゆかりの地ということだ。田んぼ、時々工場、そんな風景が広がっている。しかし川島環境サービスという会社は見当たらない。地域住民に聞いても「川島? この辺りにそんな苗字はないよ。連合赤軍の人?」といった反応。外花集会所にある住宅図を見ても川島という苗字はない。大垣市南部子育て支援センターという大垣市の施設がある。職員に川島環境サービスという会社を尋ねても心当たりがないという。ひょっとしたらセンター隣にある家がそうではないか、ということだ。センター隣の家屋に行ってみると、確かに以前は、会社だった痕跡はある。しかし家屋前は、ゲートで閉ざされており、すでに空き家のようだ。ここが川島環境サービスであることを示すものはない。近隣の住民に尋ねると、どうやらここが元川島環境サービスで、現在はトバナ産業と社名変更し、羽島市に移転したという。どうやら振り出しに戻った格好だ。だがネットで「トバナ産業」と検索してみるとごく普通に会社データが出てくる。ここに行けば何らかの情報が得られるに違いない。
若干、無駄足のような気もしたが、連合赤軍・川島豪というキーワードを出した時の自治体職員、地元住民の反応が確認できたのは良かった。
おおかた「連合赤軍・・川島さん?」といった具合に困惑する。若い世代だと連合赤軍すら知らない人も多い。かつては世界を震撼させた連合赤軍も風化したものだ。いわんや川島豪と言っても記憶の片隅、あるいは世代によってはそもそも知らない人も多いのだろう。大方、こうした知識を有する人はリアルタイム世代、研究者、活動家、マニアの類だ。思い出してみると、中には、安保闘争時代のことを武勇伝のように語る人もいた。
出版業界にいるとこういう人種は、結構出会えるものだ。
「俺は、田宮高麿(よど号ハイジャック事件リーダー)と事件直前に会って計画をやめるよう説得した」
「秋田明大(日大全共闘議長)とケンカした」
こうした学園紛争の名うての活動家の名前を挙げると、いかにも自身も”思潮的に生きた”というアピールができる。しかしこの手の話はまず眉唾、大ぼらだと思っている。本当であったとしても自慢にもならなければ、何の得もないし、それ以前に本人の実績ですらない。要するに“あの時代”トークは、ごくごく一部の人たちで盛り上がる話なのだ。だから連合赤軍の指導者格、川島豪と言っても地元に戻れば、「知らない・関心がない」という反応が普通なのだろう。
対して、面白いことに自治体職員や地域事業者は、石井輝男ならば分かるという。「部落解放の人やら?」「同和の?」といった感じだ。鬼籍に入った年代も違えば、地域や行政に与えた影響力も違うから、こうした反応は、当然の話だが、兄貴分より知名度が高いことになる。少なくともこの「大垣市」においては。
バギュームカーが押し寄せ役所に抗議行動
そんな中、衛生環境に詳しい自治体OBから面白い話を聞くことができた。輝男とも交流があったこの人物は、川島とも面識があったという。
「確かに川島さんは、輝男さんと仲が良かったよ」
例えば夜の繁華街を二人で闊歩したとか?
「どうかな、輝男さんはともかく、川島さんは下戸だからね」
川島豪は、共産革命の夢破れ、逮捕されたとは言えエリートでインテリ、それがなぜ荒くれ者の輝男と意気投合したのか尋ねてみると
「川島さんってエリートなのかな。大垣北高校だけど最初は岐大(岐阜大学)だからね。インテリかもしれないけど、エリートとは思わないよ」
なるほど。川島の母校、大垣北高校は県内屈指の名門。県下トップの岐阜高校に次ぐ進学校だ。そこからして岐阜大学というのは失礼ながら“並”だ。本人もそれが分かっているから上京して東京水産大学に再入学したのだろう。
「知り合ったきっかけも詳しいことは分からない。川島さんは、学生運動をやっていたから、当時、解放運動の活動家とも関係があったんでしょ。そんな人脈を通じて知り合ったんじゃないか」
まあそんなところだろう、と思いつつも腑に落ちない。川島は、日本共産党(革命左派)であり、部落解放同盟員の輝男と行動を共にするのも妙だ。もっとも輝男自身が解放理論であるとかそういう筋の活動家ではない。単純に人として川島とウマが合ったのだろう。
同氏は続ける。
「ただ川島さんが解放運動をやっていたわけじゃないよ。大垣に戻ってからお父さんが経営していた川島環境サービスを継いだ。その仕事を石井さんに手伝わせていた。80年代の岐阜県の屎尿汲み取り業界は、業者同士の対立とか権利闘争と激しくてね。汲み取り料金を不当に安くしていた橋本(岐阜県可児市)と川島さんたち西濃の業者がケンカになった。その時に、石井さんが“俺がまとめる”と言って話をつけてきたとか。なんでも可児市役所にバギュームカーを並べて抗議したというけども」
またしても気になる名前が浮上した。輝男と対立したのは、株式会社橋本。現在の同社会長は、自由同和会岐阜本部の会長でもある橋本敏春氏なのだ。屎尿汲み取り業界にまで「同和」がついて回るというのも驚いたもの。バギュームカーの群れという壮絶な光景だ。通常、部落解放同盟が役所に街宣車を送り込み抗議や要求をすることは珍しくない。あるいは在日コリアンの場合、チョゴリを着た女性を引き連れる。
街宣車にせよチョゴリにしても単なるモノではなく、この場合、一種の「記号」だ。それだけで社会弱者あるいは権利闘争ということを表現できる。そうした道具がバギュームカーとなるとさらにインパクトは大きい。あまつさえ石井輝男というコワモテが関わるならなおさら厄介そう…。
こうした取材結果を持ち、今度は旧川島環境サービス、現在のトバナ産業(羽島市)に向かうことにした。そして同社でより詳しく川島について聞くことができた。
橋本も「地区外」なんですか?
去年、橋本会長に取材をお願いしようと思ったのですが、当時ご病気とかでかなわなかったのですが。自由同和会は注目しているので、ぜひその辺りの事情も伺えるようインタビューでも申し込もうと思っています
塩見孝也氏も昨日にお亡くなりました。塩見孝也氏は川島氏と同和との関係をご存知だったのか、
そんな疑問を持ちましたがもう聞けません。
メアドを教えてもらっていたので、続編的にインタビューを申し込んでいたのですが、体調を崩されていたとは知りませんでした。残念です。
MIXI ではなく mixiです。
川島豪は連合赤軍ではありません
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