奈良県大和高田市・森本尚順市議と周辺に蠢く怪しげな人脈。それを〝中和グループ〟として背後関係をレポートしてきた。取材の渦中、大和高田市内で奈良県議が電車事故による怪死も闇を感じさせる。さらに森本氏と同会派「会派絆・日本維新の会」の仲本博文市議に土地転がし疑惑が取り沙汰されているのだ。
市役所駐車場で起きた異様な事件
奈良県中和地方を中心とした政治・行政の裏を暴く連続レポート。もとは2018年、県内の建設業者から2000万円を恐喝したとして高倉忍(現在、服役中)が逮捕された。彼のビジネスパートナーであったのが日本維新の会、大和高田市・森本尚順市議だ。両氏は賢英エージェント株式会社(同市幸町)で役員として登記されていた。
高倉氏が役員なのは会社法331条で定められた取締役の欠格事由に該当し、違法の可能性がある。市議として不適切ではないか。調べてみるとこの地域では森本市議を中心とした〝中和グループ〟が形成されていた。森本市議をめぐる人脈と関連トラブルを報じてきた。
その渦中、今年5月9日、日本維新の会所属の福田倫也県議(当時)が市内で電車事故により死亡。自殺とみられる。「奈良の闇」と題したレポートの中で発生した県議の怪死。それこそ「闇」を感じないではいられない。
しかも再び〝中和グループ〟絡みの人物による事件が発生したのは10月のことだ。
市関係者はこう証言する。
「森本市議の親戚で元暴力団の男性が10月9日の早朝、市役所の駐車場で市職員を狙って車で轢こうとしたのです。幸い軽傷ですみましたが男は逮捕されました」
男性は同市土庫の自治会で総代を務める。当サイト読者、地元住民ならば土庫は〝歴史的背景〟があるのをご存知の方も多いだろう。土庫には市営住宅があり、男性も自治会活動で一室を利用する。
問題は職員を狙ったその動機。原因は男の妹をめぐってのことだ。
「男性の妹は臨時職員として市役所に採用されたのです。その後、本採用にしろと要求が激しかったので、部長級職員(現在は退職)が正職員として採用しました。ところが彼女の素行がとても悪く職員の間でも手を焼いていました」(同前)
その一つが駐車場問題だった。
「大和高田市役所の駐車場は基本的に有料(1時間内無料)で職員は公共交通機関を利用することになっています。ところがこの妹が無料で駐車場を使用していたことが問題視されてきました。轢かれた職員は改善を促した一人。そこで怒った兄が仕返しにやってきたわけです」(同)
この場合、非があるのは明らかに女性職員(妹)。にも関わらず逆上して職員を車で狙うという発想は驚く他ない。男性に話を向けると「脅かそうと思っただけ」と話していた。森本市議周辺を取材中に今度は親類が市役所内で事件を起こした。なにしろこの中和グループはキナ臭い話が続く。本稿のメインテーマである土地転がし疑惑もやはりグループの一人によるものだ。
森本市議と同じ会派「会派絆・日本維新の会」に所属する仲本博文市議である。
市街化調整区域の雑種地を5千万円で売る!
現在、仲本市議に「土地転がし」の疑惑が囁かれている。同氏はもう一つの顔として「自由同和会奈良県本部会長」という肩書きを持つ。本稿、奈良の闇連続レポートでは2回目で登場する。
一般メディアでも仲本市議の名が挙がったことがある。昨年4月の統一地方選で仲本市議を当選させようと有権者に現金を渡した運動員2名が公選法違反で逮捕された。そんな仲本市議に今、土地転がし疑惑が向けられている。
経緯を説明していこう。
開業医らが共同で運営する「一般社団法人葛城メディカルセンター」(大和高田市西町1)は市中心部に位置する。同センターは検査、リハビリ、健診などを行う医療関連施設で、施設が手狭になったことから移転先を探してきた。
さて一方の仲本市議の動き、だ。
2020年(令和2年)11月26日、仲本市議は市内の女性から市役所通り沿いにある大和高田市市場616‐1の雑種地約270坪を入手。この土地は昨年1月26日に葛城メディカルセンターに売却。続いて市内在住の男性が所有する隣接地617‐1の約292坪が昨年7月26日、同センターに売却された。そして売却に関わったのが仲本市議というわけだ。実は市場も〝歴史的背景〟の土地。これを同和団体幹部が医療施設に売却したというのである。
何より額を聞けば大和高田市民はきっと仰天するだろう。事情を知る人物はこう明かす。
「センター側はなんと総額約5千万円で購入したのです。どう考えても高額すぎる上、購入後にメディカルセンターは建設できない土地だと知って役員たちは真っ青。センターにすれば〝騙された〟と思うかもしれませんが、条件も知らないで大金を支払ったのは〝医者は世間知らず〟と笑いものでしょう。このため外部に漏らすわけにもいかず土地は宙に浮いた状況です」
地元不動産業者や路線価などの証言から計算すると坪単価は高くても5万円。という点からして誰もが5千万円は法外な価格だと驚く。もちろんセンターにとっては失態どころの話ではない。
なぜ葛城メディカルセンターは購入したのか。購入当時の事情を知る同センター前代表理事に説明を求めたが「コメントはできない」というのみである。土地購入の窓口になったという同施設のセンター長に第三者を介して取材依頼したが、証言や説明を得ることはできなかった。
その心情は理解できる。センター側としては全くの二束三文の土地を〝つかまされた〟のだから公表したくないのだろう。
ここで重要なのは売却の「意図」だ。仲本市議はこの土地にメディカルセンターが建設できないと承知の上で売却したのか? もちろんセンター側の確認不足、認識不足という点も否めないが「市議会議員」だから信頼したという背景もありえるだろう。どうあれ結果的には「土地転がし」のような行為を市議会議員が行った、こう批判されても仕方がないことだ。
そこで仲本市議に対して以下の質問状を送付した。質問の要旨を掲載する。
①同センターに両土地を売却したのは仲本先生か。
同地でメディカルセンターの建設については「困難」と県から指導を受けたというのは事実か。
③同地を売却するにあたり、どのような説明をしたのか。
④どのような手続きで葛城メディカルセンターに売却されたか。
⑤総額約5千万円の売却額は事実か。どのような算定で売却額が決定したか。
⑥葛城メディカルセンターには無用の土地になるが、どう対応するのか。
次回は仲本市議からの回答を踏まえ、さらに詳細をレポートする。