粛清、除名、離党処分…日本維新の会の強権的な党運営について過去、レポートしてきた。その中心にいるのが音喜多駿前参院議員だ。元党員、支持者から音喜多氏への反発は根強い。だが20日、東京・新橋駅SL広場で吉村洋文代表を迎え開催された街頭演説会にて音喜多氏が次期参院選東京選挙区の公認候補になったことが発表された。(写真は音喜多氏のXより)
東京維新の会議が紛糾した事情
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2019年の参院選に日本維新の会の公認候補として初当選し、2021年11月に政調会長に就任。党内には政策通と呼ばれるベテランもいたが異例の抜擢だった。〝河内の 旧車会風〟の関西系維新議員と一線を画すキラキラ感、政策通でもパフォーマンスが苦手な官僚出身者にはない饒舌さがある。メディア露出という点では党内屈指。
しかし党内、支持者から決して評価されているわけではない。参院議員からの鞍替えになった昨年の衆院選東京1区の結果が物語る。比例復活もできないほどの惨敗は、本人にとっても予想外だっただろう。
落選後は「社会保険料引き下げを実現する会」を立ち上げ政治活動を続けてきた。衆院に鞍替えの際は「小選挙区での勝利の先頭に立てるとすれば私しかいない」と強い決意で臨んだ。舌の根の乾かぬうちに参院選に立候補というのは〝議員バッジ狙い〟としか思えない。
今月19日、東京維新は参院選の候補者選定についての全体会議を行った。FNNプライムオンラインが「参院選東京選挙区 維新が音喜多前政調会長の擁立へ最終調整 地元組織「東京維新」では異論相次ぎ紛糾も」と報じた。
同記事によれば音喜多氏の参院選擁立をめぐって反発が起き紛糾したのだという。
ある東京維新の幹部は「マスコミが〝紛糾〟と大袈裟に書いただけです。20日に正式な発表があるのでお待ちください」と否定した。ところがメンバーの一人、海老沢由紀氏は19日、Xに「すいません。東京維新の会議紛糾してます。遅くなっても短時間でも配信はやりますので、明日あさ早い方は申し訳ありませんが、お待ちください」と投稿。幹部は否定するがやはり党内で激しい議論があったのは確かだろう。
20日、新橋駅SL広場で開催された街頭演説で吉村代表が音喜多氏の参院選立候補が発表されたのだった。東京維新内部では異論があっても一部幹部がごり押しした結果だ。
東京維新の事情通はこう明かす。
「音喜多氏を優遇しすぎているという不満があったのは事実です。さらに問題視されたのは音喜多氏は投資家の村上世彰氏を比例で擁立させようとしたこと。もともと音喜多氏は衆院選でも村上氏を比例のトップに据えようと提案したこともありました。他の党員にすれば公認権の乱用とさえ感じているでしょうね」
令和4年の政治資金収支報告書によると音喜多氏が代表を務める参議院東京都選挙区第1支部に村上氏は500万円を寄付していた。また村上財団が主宰するパブリックリーダー塾でも講師として音喜多氏は登壇したことも。

こうした関係上、音喜多氏が村上氏を推すというのは利己的と受け止められても仕方がない。
19日の全体会議の内情について東京維新に質問してみたが「書面で質問状を送ってください」というが返答はない。またある党員は「示現舎の取材には応じないように指示があったのでお断りします」と取り付く島もなかった。しかしこれまでの音喜多氏の言動をめぐって党内が動揺しているのは間違いない。
また維新支持者たちも音喜多氏に対して警戒感が強いようだ。
5月5日、音喜多氏が共同親権パレードに現れる
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昨年5月に可決された改正民法では離婚後の親権について、父と母の双方が親権を持つ「共同親権」の導入が定められた。しかし夫婦間の合意を前提とした共同親権のため実質的には単独親権維持で骨抜きになったというのが専らの評価。
日本維新の会は独自に共同親権骨子をまとめたが、音喜多政調会長(当時)預かりにしたという経緯がある。このため推進派の間では「音喜多氏が法案を潰した」と批判が根強い。だが音喜多氏本人としては共同親権の成立のために尽力してきたという思いのようだ。
5月5日、渋谷区内で開催された共同親権を実現するオレンジパレードでのこと。神宮通公園をスタートし渋谷の街を行進。パレード後は同公園で集会が行われ議員や候補者らが共同親権実現に向けたスピーチを行った。そこに現れたのが音喜多氏。パレード関係者は当時を振り返る。
「主催者側が呼んだ訳ではありません。参院選に立候補する予定だと聞いていたので選挙活動の目的もあったのでしょう。本人的にも推進派にどう思われているのか理解していたと思います。他の方と比べると拍手もまばらだった気がしますね」

マイクを渡された音喜多氏。話はのっけから改正民法の成立時に及んだ。
「昨年、民法が改正されまして散々、音喜多駿が法案成立の邪魔をしたと皆さんに怒られ続けてきたのですが、全くの誤解であるともう一度、ご説明したいと思います」
反発が強いのは強く自覚しているようだ。
「私自身も再婚家庭の当事者として10年以上前から共同親権は必要だと子供の最善の利益のために必要であると取り組んできました。その間、様々な意見があったのは事実です。民法の改正は成立しました。私自身も十分なものであるとは思っていません。まだまだ改善すべき点がある、この点は最後、法務委員会の質疑でも40分に渡って指摘をさせて頂きました。様々な方の意見に耳を傾けながら最後は一歩でも前に私たちは政治を進めて行かなければいけない。その強い決意をもって私も共同親権、共同養育、今よりもより良い制度は皆様のために、子供の最善の利益のために努力をして参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」
説明すると言ったものの、説明にはなっていない。推進派の多くはやはり維新の骨子案を音喜多氏が「預かり」としたことに不満を持っている。骨子案については全く触れていない。また法改正の議論が佳境に入った頃、音喜多氏の意向で維新内の論客、串田誠一、梅村みずほ両参院議員が法務委員から外れたと考えられているのだ。
しかも梅村氏に至っては参院選の公認が得られなかった。これは梅村氏が代表選に立候補したことへの粛清とみられる。推進派は梅村氏への信頼が厚く、こうした不満も音喜多氏に向けられたかもしれない。
スピーチで語った決意というのも疑わしい。後日談も推進派の間で話題になっていた。
「それほど共同親権に並々ならぬ思いがあるのならXにポストすべきですよ。オレンジパレードについてSNSで触れていません。推進派と距離が近すぎると思われたくないのでしょうか。演説も白々しく思えます」(参加者)
これもまた音喜多氏らしい話だ。しかしともかく維新の参院選候補となった。では勝因はあるのだろうか。
「東京維新から所属議員が次々に離党していきました。普段はたいした意見も言わない石井苗子参院議員ですら〝何をやっているんですか〟と苦言したほどです。音喜多氏の当選に向けて一丸となって戦うというムードではありません」(前出事情通)
内部は崩壊寸前、しかも東京選挙区には多くの候補者がいる。
「東京都は第三極の政党を好みます。その受け皿が日本維新の会でしたが、国民民主党や石丸新党『再生の道』が出てきた以上、もうその役目は終えたと思います。音喜多氏は厳しいでしょうね」(前同)
音喜多氏にとっては後がない参院選なのだ。