国政・地方問わず議員のパワハラ・暴言に対して厳しい目が向けられるこのご時世。〝人権の党〟を標榜する公明党・米田昌玄大和高田市議は市職員の間で〝強面議員〟として通っているのだ。同市議の所属は公明党会派だが〝武闘派〟の「会派絆・日本維新の会」と歩調を合わす。議会・委員会でも発言は威圧的だ。
担当部長を「記憶喪失」と詰問する

「米田市議は普段、話す時はソフトな口調なのに議会や職員に対しては豹変します」(市関係者)
昨年末から米田市議の暴言について情報が寄せられてきた。筆者も実際に接触してみるとむしろ温厚な印象を受けた。だが証言通り庁舎内では態度が一変するようだ。
議員‐自治体職員との間で馴れ合いは芳しくないが、かといって過度の緊張感は職員を萎縮させるだけである。
その点、米田市議の態度は「過度」としか思えない。同市議の直近の活動を見ていこう。
【奈良の闇⑨】クリーンセンター120か所のヒビ 施設塗装は自由同和会奈良県会長・仲本市議企業
完成1年にして120か所のクラック(ヒビ)が見つかったクリーンセンターの内幕を【奈良の闇⑨】でレポート。今月5日に開催されたクリーンセンター施設整備特別委員会でも委員の一人として米田市議は市側を追及した。
同委員会は「職員や施工業者の吊るし上げになる」との事前情報を得ていた。だが「吊るし上げ」や「紛糾」というほどでもない。米田市議の質問内容や態度は特に威圧的でもなく妥当なところだ。
ところが13日の予算特別委員会での発言が内部で問題視されている。後の話になるが新年度予算案は委員会で否決され、21日議会で堀内大造市長は予算案を撤回した。
反市長派の中心、絆・維新会派に米田市議、少数会派が加わり反対票が上回ったのだ。問題発言は予算案反対の伏線ともいえよう。

米田市議の質問は先の市関係者が解説する。
「絆・維新一派は市長が委員会前に議員の審議に影響を及ぼす働きかけをしていた、として説明を求めました。ただこれは働きかけというよりもリサイクルセンターの予算が否決されてしまうと、国からの補助金が受けられなくなります。このため、市長が担当部長に指示して、事前に各会派へ説明に回らせました」
国庫補助を得るための根回しというわけだ。市にとってはメリットがある話である。ところが予算の否決派はこれを審議への介入として追及材料とした。
「13日の予算特別委員会で米田市議は相当、高ぶっていたようです。米田市議は担当部長がどの会派の誰に説明をしたのかを問いただしました。ところが部長が回答に窮したところ米田市議が〝記憶喪失ですか〟と揶揄したのです。委員からは笑い声も漏れていました。委員会は市議会HPでもアーカイブで視聴できます。誰でも確認できる場で〝記憶喪失〟と揶揄したのは議員としての品位を疑います」(同)
議会が紛糾して言葉が過ぎるということはありえる。だが米田市議の場合、普段から言動が問題視されてきたから余計に反発を招いてしまう。
地元公明党関係者によれば米田市議は絆・維新会派と組むと一層、血道を挙げるという。
「米田市議はリーダー格、森本尚順市議(会派絆・日本維新の会)に心酔しているのです。このため絆・維新会派が最も関心を寄せる市立病院移転反対になると〝爪跡〟を残そうとします。それが暴言につながるかもしれませんね」
米田市議「高田に住めなくなるよ」

それが如実に表れたのが2023年6月に開催された街づくり予算のための公明党会派の勉強会だという。
背景を説明しておかなければならない。大和高田市立病院は老朽化のため移転・建て替えが検討されてきた。前出市関係者は「もともと荒井正吾前知事時代に県産業会館を安く売却してもらい移転先にする計画でした」と説明する。
ところが山下真知事になり計画が白紙。建て替え派の急先鋒である絆・維新会派は昨年9月17日に知事宛て意見書を提出。県産業会館の売却について慎重になるように申し入れた。
特徴的なのは公明党会派内で唯一、米田市議が意見書に名を連ねたことだ。米田市議と絆・維新会派が協力関係にあることの一端が垣間見える。そして話は問題の公明党会派の勉強会。
再び地元公明党関係者はこう明かすのだ。
「本来は街づくり事業の勉強会。担当者は街づくり予算について説明しようとしたところ事業の候補地が病院の移転先と同じだったのです。そこで米田市議が病院移転の予算だと勘違いして怒り出しました。〝よくこんな予算が計上できるな!〟〝何を考えているんや〟と血相を変えて担当職員に詰め寄ったといいます」
病院移転の予算ではなく街づくり事業の予算と説明しても聞く耳持たぬといった様子。とにかく「病院移転反対だ」などと一方的にまくし立てたという。
「担当者に対して〝こんなことしてたら高田に住めなくなるよ〟と迫ったのです。暴力団が〝夜道に気をつけろ〟とか〝背中に気ぃつけ〟といった脅し文句と同じじゃないですか。さすがに担当者が〝どういう意味ですか〟と返すと〝開き直るのか!〟と逆上していたそうです」(同前公明党関係者)
これらの発言は庁舎内でも広く知られていたことだ。
声を挙げるにも報復を恐れて沈黙せざるを得ない。しかも実際に市職員への報復は存在した。報復といえば前回記事【奈良の闇⑩】妹職員も同乗!森本市議親族が市職員を車で襲い罰金刑 市施設敷地の無断使用も発覚で報じた通り。絆・維新会派のリーダー格・森本市議の親族が市職員を車で狙うという事件も発生したほど。
職員たちが萎縮するのも当然のことだ。こう一連の言動について米田市議に問うた。
「公人ですが全ての回答する必要はないと思います。コメントは控えます」
また公明党会派代表の砂原弘治市議にも会派としての見解を求めてみた。
「〝高田に住めなくなる〟といった発言は威圧的な意図ではなかったと記憶しています。また病院移転については(絆・維新と同調していることについて)米田議員の政治信条があると思いますので特に問題ありません。記憶喪失といった発言についてはご本人に確認してください」
しかし議会では舌鋒鋭い米田市議も自身の問題については知らぬ存ぜぬというわけだ。同市人事課によれば「職員間のパワハラや暴言ならば人事課対応になりますが、議員‐職員の問題になると議会での対応になります」と説明。ならば一連の問題発言について議会での解決を求めたい。
一方、絆・維新一派の威圧的な言動について地元オンブズマンも同調する。
「3月12日の予算特別委員会で市民交流センター内で、販売業務を委託していることについて担当課長から説明がありました。市の負担が増えた場合について仲本博文市議は〝もしどうしても必要なんやったら課長、払いいよ。この金、自分で〟と詰め寄りました。さすがに発言が行き過ぎということで委員長から注意がありました」

病院移転をめぐり絆・維新会派&米田市議の鼻息は荒く周囲の目には〝増長〟のように映っているようだ。この点については「山下真奈良県知事の責任も大きい」と地元メディア関係者は指摘する。
「先の意見書の事実関係に誤りはありません。しかし知事‐市長が話し合う前に一部の市議だけで意見書を提出するのはおかしいですよ。まるで議会が全て移転反対で同意したかのように読めます。しかも知事がいきなり記者会見で意見書を配布してしまったのです。急いで移転反対を既成事実化させたいように思えました。それに違う意見を聞かないで一方の情報だけ流すのは知事として公平性を欠いています」(同)
なにしろそこは噂の〝K-POPゴリ押し知事〟。強引な進め方は山下知事らしい。同じ維新である森本市議との関係性から山下知事が援護射撃をしたとみるべきだろう。
前回お伝えしたような厄介な住民に加えて、高圧的な議員たち。その狭間で苦悩する自治体職員たちは決して少なくないはずだ。特に「人間主義」を掲げる公明党の議員が反社まがいの発言で職員を萎縮させるなど言語道断である。