「年収103万円の壁」の引き上げ、ガソリン税に含まれた暫定税率の廃止などの提案が評価され世論調査で初めて国民民主党が野党1位になった。一方の自民党は回復傾向にあるが、次期参院選を控え党内の結束を固めたいところ。そこで12月初旬、森山裕幹事長と萩生田光一元政調会長が会談し反転攻勢策に合意したという。
政策活動費廃止で大幅譲歩
10月の衆院選で自民執行部は政治資金パーティー収入のキックバックを受けたが収支報告書に記載しなかった「裏金議員」の一部を非公認、また比例重複を認めない厳しい措置をとった。党としてはすでに4月、処分を下しているがこれに対して二重処分といった不満が噴出。特に旧安倍派議員が多かったことから事実上の安倍派潰しともいわれた。
石破首相としては政治と金について「厳正な対処」を有権者にアピールしたが、結果は自民党の惨敗。
そして少数与党となった自民党は運営にも苦慮しており、本国会では野党に大幅譲歩。特に領収書不要の政策活動費が完全に廃止されたことは象徴的なシーンといえる。12月4日に開催された政治改革に関する各党協議会、この場で提出された改正案ではまだ「要配慮支出(仮称)についての公開方法の工夫」として一部非公開の余地を残した。
改正案で「要配慮支出」を盛り込むことで支出先を一部非公開を目論んだ。ところが「抜け道になる」といった批判を招き、「公開方法工夫支出」と改称するも理解が得られず削除になった。
自民一強時代では考えられないことだろう。
微増とはいえ支持率は回復傾向にあるがそれでも、石破政権の不安定感は払拭できない。しかも来年7月には参院選も控えている。党内融和が必要だ。そこで12月5日、森山裕幹事長が動いた。旧安倍派5人衆の一人、萩生田光一元政調会長と会談の場を持った。
野党の要求には応じないことを確認
17日から3日間、開催された「衆院政治倫理審査会」で旧安倍、旧二階両派の議員15人の弁明が終了した。野党からは解明できていないとの批判が強く、今後も追及していく方針だ。
一方、自民側はこれで幕引きを貫くという。自民党関係者はこう話す。
「12月5日、森山幹事長と萩生田光一元政調会長の間で会談が行われました。そこでは年明けからは野党に反転攻勢を仕掛けるという方針で一致したといいます。具体的には〝衆院の政倫審は年内で決着して今後、野党の要求には応じない〟や〝安倍派を委員会理事ポストに復職させることや落選中の安倍派候補を支部長に戻す〟などが確認されました」
その上で「野党には任せられない」といった強いトーンで攻勢を強めるというのだ。この方針については「石破首相もすでに了承済み」(前同)ということで党内融和、結束路線に踏み切る可能性が高い。
内情を確認しようと萩生田光一事務所に質問状を送付したが「担当者が不在」と説明はなかった。
なにしろマスコミ受けする言動が目立つ石破首相。しかしこれ以上、政治資金問題で〝厳正な対処〟といったポーズは自身の立場を危うくする。年明けからは再び野党からの追及が予想されるが、これを突っぱね反転攻勢していくというわけだ。
しかし大きな期待が集まった103万円の壁も引き上げは自公国3党幹事長で合意された178万円ではなく「123万円」に落ち着きそうだ。失望の声が漏れ伝わる。党内結束を模索する自民だが、反転攻勢をかける材料がないのが現状ではないか。