ある時は自由同和会神奈川県本部会長として「人権」「同和問題」を雄弁に語り、その裏で「同和で相続税が安くなる」と地主に持ちける。一介の塾経営者から行政を手玉に取る「同和系列の実業家」という人生。熱海市土石流遺族、被災者あるいは不動産取引の被害者からすれば「不快」そのものに違いない。だが湘南の怪紳士、天野二三男氏は「ノンフィクション」の題材として非常に面白い。だから天野氏にまつわるエピソードは聞き知った以上、話さずにいられない。90年代から大麻、覚醒剤所持・使用でたびたび芸能ニュースを騒がせた歌手、俳優の清水健太郎氏、天野氏の間に交遊があったといえば興味津々ではないか。
同和と芸能界、天野氏と芸能人の接点
1977年、デビュー曲『失恋レストラン』でこの年のレコード大賞新人賞、日本有線最優秀大賞など賞を総なめにし同年の紅白出場を果たした昭和のスター、清水健太郎氏。同曲が出世作となり清水氏は音楽活動以外でも俳優として活躍していく。妙齢の女性にすれば未完の大作『ガラスの仮面』(白泉社)での描写、「失恋レストラン オーディション」といえば顔が綻ぶ人も多いはずだ。
端正なルックスと歌唱力は定評があったが80年代から複数回、大麻・覚醒剤所持で逮捕されたのはご存知の通り。あるいはひき逃げ・交通事故も芸能ニュースを賑わせてきた。ご本人には申し訳ないが“お騒がせ芸能人 ”というのが一般的なイメージだろう。
そんな清水氏と天野二三男氏との間に「交遊」があったと元関係者らの取材の中で耳にした。天野氏と芸能人といえば往年の名女優、磯村みどり氏とも関係がある。

磯村氏は湘南オーガニックファームの役員にも名を連ねる。実績ある女優がなぜ怪紳士・天野氏と関係を持ったのか理解に苦しむ。強いていえば知名度はあるが、芸能界のメインストリームにいない歌手、俳優、タレントを同和団体関係者、あるいは反社組織が利用するのはありがちな現象だ。
そこをいくと清水氏はVシネマなど任侠映画、ギャンブル映画といった作品群の常連俳優。アウトローなる人々が憧れ、擦り寄ってくる要素がある。また怪しげな紳士が接近したことも少なくないだろう。その一人が天野氏というわけだ。
天野氏を取り巻く関係人物、関係企業は多数。関連エピソードも枚挙にいとまがない。そのせいか時に盛り土や同和行政といった本丸の話題から脱線し“サイドストーリー ”になることもしばし。元関係者らが同席し小田原談義が盛り上がる。やり取りが面白かった。
「芸能人? 音楽ショーなんかもやってたよね」
「清水健太郎じゃん」
ん? 意外な名前が飛び出したから“ 耳がダンボ”というものだ。
「ホテルで清水さんを招いてショーをやったんだよ。同和会の活動? 会社の主催? どっちでもないよね。(人権団体も会社も)一緒なんだもん」
ショーは何の目的なのか聞いてみる。
「要するに資産家や地主を集めた囲い込みパーティーだよ。ご機嫌とりだよね」
話は続く。
大井町、天野物件に住んでいた清水氏
清水氏は一時期、足柄上郡大井町に住んでいた。同町では割とよく知られた話だ。先の元関係者らによれば件の物件は天野氏も売買に関与していた。90年代、覚醒剤事件などで清水氏のもとに芸能記者、レポーターらが殺到。そこで天野氏関係人物が清水氏を匿ったとの話である。
とにかく天野氏に関わった人物は高確率で損害を被るものだ。もしや清水氏も何らかのトラブルに巻き込まれたかもしれない。また一体、どういう縁だったのか。清水氏の所属事務所「オフィスKS」に天野氏との交流、また大井町に在住した当時のことを質問してみた。すると一旦は
先日、天野氏についてのお問い合わせにつきまして、清水に確認したところ記憶になく、お答えすることができません。との事でした。お役に立てず申し訳ごさいませんが、宜しくお願い致します。
と事務所側は関係を否定した。しかしこれまで非常に精度が高い情報を提供してきた元関係者らの情報だ。間違いや記憶違いとは思えない。
再び大井町時代の所在地を明記した上でもう一度、問い合わせてみると担当者から連絡がきた。
「確認したところ清水は“天野さん ”という方の記憶があると申しております。ただ大井町在住は天野さんという方と無関係です。刑務所から出所した96年頃、帰住地が必要ということで身元引受人が紹介してくださったのがその住所です。ショーについてですが親しい方に頼まれて歌うことはありますが、天野さん主催のショーは本人(清水氏)も記憶にないと申しています」
一体、どういう接点なのか気になるところだ。
「大磯町の床屋さんに清水が通っており、天野さんも常連の一人だったそうです。床屋さんのご主人に“こういう人(天野氏)がいるよ ”と紹介されたということです。もともと(清水氏は)大磯には知り合いも多いですし、そのお一人という認識ですね。どんな交流? 一度食事をしたとかそのぐらいではないでしょうか」(担当者)
天野氏と清水氏は面識があったという点は事実だった。芸能人とはつくづく因果な商売だ。純粋なファンだけではなく、胡散臭い人物も寄ってくるもの。当時の清水氏もまさか後の「天野二三男」とは想像だにしなかったことだろう。
食中毒を逃れた悪運の強さ――そして尽きたか?
この通り、天野取材をしていると思いがけない場所で名前が浮上したり、意外な人物が登場する。清水氏もその一人だ。おそらく日常的に天野氏は広くアンテナを張り巡らせているからだろう。こうした点も天野氏の力の一要素かもしれないが…。そこで先の元関係者トークに戻らせてほしい。
「資金繰りに困ると必ず人のいい地主と知り合って金を引っ張るんだよ」
「SFCG(旧商工ファンド)からも億単位の金を引っ張ったけど向こうが倒産しちまったからな」
天野氏の「強運」について証言する元関係者たち。行政指導を受けても対象は部下を社長に据えた子会社で本人は雲隠れ、袂を分かった元部下がまた天野氏を頼ってくる、そしてなぜか現れる純朴な資産家、用意周到なのか天運なのか異様な悪運があったことは事実だ。
それを象徴するのが先の清水氏のショーだという。実は先のショーにはこんなオチがついた。
「あのショーって確か食中毒を起こしたんじゃない?」
「そうだったね。天野さんは酒が飲めないし資産家や地主を口説かないといけないから飲食するヒマもない。ところがスタッフ連中は飲食して発症したけど、天野さんは難を逃れたんだ。こういうところなんだよ。あの人の悪運の強さは…」
元関係者の間で天野二三男の“ すべらない話”の如く伝わっていた。やはり天野氏には説明がつかない「強運」が備わっている気がしてならない。そこに「行政」というバックがつけば鬼に金棒である。
ところが神がかった悪運も伊豆山土石流とともに崩れ去った。もちろん事件の解明は道半ばとはいえ少なからず天野氏の所業が露見した。だがこのことを裏返せば死者26名、行方不明者1名、また多数の被災者を引き換えにしなければ天野氏の曲事を暴けなかったことを意味する。「同和行政」という存在に対し不条理と絶望を感じないではいられない。天野氏、それから彼を支えた人々は何を思うか。

司法が動き出すようなことになって審判が下されたとしても、
津市の時と同じように同和(を自称する)側も行政側も屁でもないような処分しか下されないんだろうなぁ
アウトロー辞めたら同和になるべきって言いたくもそらなるよなぁって思いました
同和万歳している人たちが万一、同和絡みの反社に不利益を
受けた場合、司法は決してご自身らの味方にならない、なれない、と。
老婆心ながらお伝えしたいです。