現在、交野市幹部のパワハラ問題に注目が集まるが、山本景市長の支援者企業・野村工務店が受注した「星田エリア全体事業」も検証したい事案である。筆者は同事業についての契約書等の公文書を入手したが、どう考えても野村工務店への発注ありきとしか思えない制度設計なのだ。そして市側に疑問を投げたが、その返答に呆れてしまった。
大型公共事業を受注 個人献金で済むのか?

山本市長と野村工務店の関係についての過去記事。
【交野市】献金で〝太客〟野村工務店が受注した開発事業の怪〝フェイク改革派〟山本景市長の正体②
星田エリア全体事業に関する公開文書は以下をクリック。特に専門業者、行政関係者がご一読頂いた場合は、ぜひご意見を頂戴したい。
交野市の有力企業、野村工務店は現在、市内の各地で宅地開発を行っている。交野市随一の住宅メーカーだ。令和4年(2022年)分の政治資金収支報告書によると同社・野村健二社長は山本市長の政治団体「チェンジ交野」に140万円、「新時代の交野を作る会」「チームみんなの交野」にそれぞれ150万円を寄付した。
この点について「個人献金」と反論されたらそれまでだ。しかし億単位の公共事業を受注した企業の代表者ということを鑑みて「個人献金」で通るのか。特に山本氏を支持する左派・リベラル系の会派市議は疑問に思わないのか不思議だ。
当の野村工務店が手掛ける星田エリア全体事業について説明しよう。同市南星台に位置する「市民創造の森」の崖部分は長年、危険性が指摘されてきた。そこで市民創造の森の急傾斜地対策工事と全現堂池(大字星田)の処分事業を一体で行う。業者選定は「公募型プロポーザル方式」が採用された。
公募型プロポーザル方式については過去記事でも問題点を指摘したが改めて整理する。本来の趣旨は企画内容や技術力を総合的に評価することだが「選定過程が不透明なこと」「発注者の裁量で大きく基準が不透明」といった批判も強い。反論する向きもあるが、ならば同方式をめぐって逮捕事例が多発していることを説明してもらいたい。

2023年にプロポーザル方式で公募した結果、市民創造の森急傾斜地対策工事を(株)佐々木産業(寝屋川市)が2億4882万円で落札。また野村工務店は大字星田5098番8外8筆の土地を1億2100万円、全現堂池を7億2千万円で落札し購入した。池はすでに埋め立てられいずれ宅地として売り出す見通しだ。


今回、筆者が入手したのは野村工務店、佐々木産業が市と交わした「基本協定書」、「不動産売買契約書」「星田エリア全体事業に係る公募型プロポーザル実施要項」の3点。
契約書の文言を拾っていくと野村工務店と佐々木産業が落札できるような入札条件としか思えないのだ。
業者「全現堂池に7億2千万円もよく払えたな」
上記に掲載した公開文書から重要箇所を抜粋する。実施要項をみると(5)の池の最低価格は4億3700万円。ところが野村工務店の落札額は7億2千万円だ。協力者の一人、大阪府内の建設業者はこう驚く。
「ため池に7億2千万円もよく払えたな。池底に危険物があったり、埋め立てても液状化する土地かもしれない。その池(全現堂池)のことをよく分かっていないと(市外からは)手が出せんわ」
全現堂池を埋め立てた造成地は特に地震の時などのリスクは高まる。それでも莫大な費用を投じ購入したのは同池が「安全である」という情報を持っていたかもしれない。
先の業者は公共事業に精通する人物。最低価格と落札価格の差額に着目した。
「気になるのは最低価格を大幅に上回ってるやろ。〝誰でも入札に参加できますよ〟という風に応札のハードルを下げたとちゃうんかな」
つまり公正な公募であることを示すためにより多くの業者を集めたいという意図が透けて見えた。

参加資格についても要項の記述は不透明である。


「JV等の複数企業での提案も可」とある。逆にJV(ジョイントベンチャー)以外で複数企業の参加とはどういう企業体を想定しているのだろう。条文を直接、解釈すればJV代表会社に建設業や交野市入札参加資格を求めていないようだ。これも参加資格を「下げた」ということになる。その一方で③「大阪府内」と限定した。その上で「面積1ha以上の住宅開発実績及び住宅分譲実績を有する」という条件を課した。
住宅メーカーや建設会社の関係者ならばお分かりだろうが1haの土地の開発、分譲はかなり広大だ。最低価格や参加資格の条件を下げつつ、実はここで一気にハードルを上げた。
なぜ用途を「戸建て住宅」に限定するのか

さらに「用途制限」には「売却対象地の用途は専用住宅(戸建に限る)のみとする」と住宅に限定したのは奇妙だ。広大な用地だから例えばスーパーマーケットなどの商業施設、あるいはマンション、福祉施設なども需要があるだろう。あえて戸建てに限定する必要性とは? それは「住宅メーカー」が入札することを前提にしたのではないか。
広く募集をかけたようで実は限定的な入札条件になっている。

繰り返すが本来のプロポーザル方式の趣旨とは「企画内容や技術力を総合的に評価すること」だ。ところが選定は非公開というのはおかしい。「企画内容や技術力」について明確な根拠、理由を外部業者、市民に周知されるべきである。むしろ非公開とは不正の温床になる気がするが、交野市にはそうした認識はないものか不思議でならない。
次いで入札参加までのプロセスを掲載する。まず確認しておきたいことは「市民創造の森」周辺の利活用は1989年以来、市の課題だった。30年以上の難題だったにも関わらず工事についての質問はわずか1週間程度。しかも例によって土日を挟む方法だ。すなわち一見は「質問する猶予を与えた」というポーズだろう。
こうした指摘についてもし市側は不満があればぜひこの日程について説明してほしい。

こうした筆者の疑問について同じく「星田エリア全体事業」について問題意識を持つ市関係者も同調した。
「一見して参加資格は下げているが、実際は住宅メーカーを対象です。また大阪府での実績、対象箇所の資料が乏しい、質問期間が短い、公募期間が短いなどは確かに疑問に思います。事前に案件を把握している事業者で対象箇所について知り尽くした事業者が有利と考えます」
つまり野村工務店、佐々木産業が入札することありきで設計された入札方式ではなかったか。

審査結果はH社の野村工務店、D社は(株)サンエース(枚方市)、S社は(株)パシオン(枚方市)の順だ。ところが評価点について各項目の採点は非公開。〝改革派〟としてマスコミ、左派政党にも評価されてきた山本景市政ならばぜひ公表して適正な審査であったことを証明してもらいたい。
交野市「貴社の報道姿勢に疑問を抱いており協力できない」
以上の疑問点を質問したところで市側の回答は「審査については非公開」「コメントできない」などが予想された。
そこで担当部署である交野市財産管理室、そして山本景市長宛てに質問状を送付した。主に以下の質問項目だ。
「JV等とは何か。JVの他に複数企業での申し込みについてどのような形態を想定しているのか」
「実績の保有を求めているが、単体企業、またはJVとしての実績のことか」「複数企業が集合して実績の提出があった場合、個々の企業が保有しない実績も集合企業の中で保有者がいれば参加条件を満たすのか」
「用途制限として専用住宅(戸建てに限る)及び所有権移転の禁止として完成宅地から3年間は所有権の移転を禁止している。受注者は戸建てハウスメーカーを想定しての発注か」
「公募の周知方法はどのような手段で行ったか」
「現地の状況を把握している者が有利ではないか。参加希望者が十分な現地調査をするだけの時間がなく、また質問期間、募集期間も短く設定されており、発注方法について誤解を招く募集方法ではないか。市の考え方を教えてほしい」
「入札参加申し込み時の佐々木産業の立場を教えてほしい」
すると交野市企画財政部情報マーケティング課広報担当名で回答があったが、その内容に絶句した。
2025年11月6日付で財産管理室宛に送られました質問状につきまして、本市では貴社の活動及び運営されているネットニュースサイトから、取材活動の一環として見なしております。本市といたしましては、貴社ニュースサイトの記事を拝見の結果、虚実ないまぜにした記事が掲載されていることから、貴社の報道姿勢に疑問を抱いており、取材や問い合わせに対する協力はいたしかねます。ご理解をお願いいたします。(原文ママ)
質問内容は至って適正だが、なんという傲慢な回答文だろう。相手がマスコミならばまずこういう返答をしないはず。それに通常、行政職員とはまず感情を露わにしないもの。不快感に満ちていた。
実は山本市長本人による回答ではないか。情報マーケティング課に確認してみると「部内で検討したもので市長が書いたものではありません」と繰り返す。あくまで全員で協議した回答ということだ。
「虚実ないまぜにした記事が掲載されていることから、貴社の報道姿勢に疑問を抱いており」とは随分な言い様だ。しかし同和行政取材慣れをしている筆者としてはむしろネタでしかない。
半ば逆ギレのような態度だが、果たして今後、トラブルなく「星田エリア全体事業」は遂行されるのか。地元記者はこう耳打ちする。
「実は市民創造の森急傾斜地対策工事について次の議会で工事費の増額が提案されます。果たして議会が容認するのか注目するといいですよ」
議会の追及に期待したい。特に10月末にWebサイト「日本共産党が与党の自治体」から「交野市 山本景 支援」を外した共産党市議団は腕の見せ所だろう。



