そもそも固定資産税の同和対策減免はどのようなもので、何の意義があるのか、その点を説明しておく必要があるだろう。
同和減免とは何かと言うと、端的に言えば、同和対策全盛期はいわゆる「部落民」であれば固定資産税を払わなくてよいということが普通にあった。これは「同和利権」「同和特権」であると考えて差し支えない。払わなくて良いとまではいかなくても半分で良いとか。3割引されるということもあった。
意義はあるのかと言うと、身も蓋もない言い方をしてしまえば、実質的には何の意義もないと考えられる。
固定資産税の同和減免の必要性については「同和地区の土地は取引され難いから」という説明をされることが多い。しかし、よく考えるとこの説明は矛盾している。
しばしば「属人主義」と言って、いわゆる同和関係者が所有する土地・建物に適用されることがあり、琴浦町も以前はその方式であった。すると、そもそも 「 同和地区の土地 」というくくりでは減免していないということになる。
高塚議員によれば、この属人主義について、誰がどのような基準で判断するのかということに批判があったという。例えば、同和地区から出ていった後も、子や孫まで何代も適用するのはおかしいのではないか、県外の同和地区から来たと言っているような人についてどう真偽を確かめるのか、といった問題だ。そのため、現在では地域を対象とする「属地主義」となっているという。
しかし、属地主義にしても矛盾が解消された訳ではない。減免の要綱では「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」が対象となるとしているが、実際に対象とされている地域を知ると、現在もそのような状況とはとても思えない実情がある。例えば、出上の一部が移転して出来た区域(東桜ヶ丘地区のことと考えられる)はむしろ一般地域より綺麗に整備されている。それで、高塚議員の件の質問となったわけだ。
それでも、なぜ減免が今に至るまで続けられてきたのか、高塚議員は次のように語る。
「ほとんどの議員は一般常識としてこのような制度は必要ないと考えています。ただ、同和タブーというのがありまして、言いにくい面がありました」
そして、もう1つの問題は旧赤碕町の解放同盟員の意識だ。
「以前、同和地区が対象だった進学奨励金を同和地区以外にも広げて一般化しました。その時の議論では、解放同盟がやじを飛ばしてきました。あれは我々が戦って得たものだと」
古株の自民党議員は、「減免は不要だと思うけど今はまだその時期じゃない」というような曖昧な態度を取り続けてきたが、今年の3月にはようやく減免の廃止に賛成し、議会で同和減免の廃止が議決された。
それでは、減免の廃止に反対し、今回の高塚議員の発言を差別事象とする報告書を撤回すべきとする議案に反対した議員はどのように考えているのか。その1人である澤田豊秋議員に話を聞くことが出来た。
ご承知の通り筆者は解放同盟と裁判をしている状況で、「鳥取ループ本人です」と名乗ったらまた拒否されるのかと思ったら、意外にも澤田議員には丁寧に応じていただいた。澤田議員の見解は次のようなものだ。
「固定資産税減免については、廃止をして問題ないのか、差別の実態調査をするべきです。同和地区の土地建物は、どうしても忌避されるという実情があります」
また、固定資産税減免には所得制限があるので、同和地区であれば全員が対象となっているわけではないそうだ。
ただ、そもそも琴浦町のようなところで、そんなに土地建物が取引されるのか、そして不動産を誰かに売るときに「ここは同和地区だけど固定資産税が安いのでお得ですよ」といった売り方をするのかと問うと、「それはよく分からない」ということであった。
筆者には少し引っかかるものがあったので、澤田議員や前田議員は「解放同盟系の議員」なのか直球に聞いてみた。
「解放同盟とは関係があると言えばあるし、関わってはいますが、役員ではありません。また、選挙のときは私も前田議員も出上の自治会から推薦されて出たものであって、解放同盟から推薦は受けていません」
つまり、立場としてはあくまで出上という地域の声を代弁しているのであって、解放同盟の代弁者ではないということだ。ちなみに、前田議員の住所は「自由民主党赤碕町支部」である。
政治の場で「忖度」という言葉が流行して久しいが、同和タブーがあるゆえに真正面から声を出して議論せず、各人が勝手に他人の意思を推し量った結果、実は多くの人は望んでいない方向に物事が進んでしまった。そのような面もありそうだ。