日本最大の部落は大阪の西成地区だが、2番目はどこかというと議論が分かれるところである。もし大阪の浪速地区を西成地区と一体の部落と考えるなら、2番目に大きな部落は神戸の番町部落であろう。1935年の記録では1057世帯、5262人とされる。
西成地区もそうだったが、これだけの規模になると現地に行っても、部落という実感はわかない。部落差別の起源が身分差別と考えるなら、これだけ大規模な賤民部落があったとは考えにくく、近代になってから多くの貧困層が集まってきた都市スラムと見るべきだろう。
この番町を語る上で、1995年1月17日に発生した阪神大震災のことは欠かすことは出来ない。神戸新聞が「震災と被差別部落 3年目初秋の報告 人権 新たな世紀へ」という記事を公開しており、阪神大震災でもっとも大きな被害を受けたのは部落であり、そこが番町であることは、公然の事実である。
一方、番町が既に「同和地区」との扱いを受けていないというのも事実。寺園敦史氏によれば、神戸市に市内の同和地区の場所を問い合わせところ、市の回答は、そもそも既に同和地区の指定を行っていないので、答えようがないというものだったという。
番町を歩くと、空き地、道端の瓦礫、ひび割れた建物の基礎や壁の跡を見ることが出来る。これらは20年以上前の大震災の痕跡なのだという。
古い家はほとんど震災で倒壊したか、震災に伴う火災で焼失してしまったが、わずかに残っているものもある。最も揺れが激しかった上、住宅密集地という不運が重なり、被害が大きくなった。
新しい家は、家が新しいだけではなく、震災後に移り住んできた新しい住民が多いという。
今も空き地が開発され続けている。
表通りには、巨大な公営住宅が立ち並んでいる。これも番町のもう1つの側面である。
公営住宅の住民に、震災のことを聞いてみた。確かにこの辺りは被害がすごくて、さきほど筆者が歩いてきた住宅地のあたりはほぼ全滅だったという。
この20号棟は半壊したものの、補修して今もこうやって残っているという。
しかし、正面の市営住宅は全壊し、今は空地になっている。
全壊して建て直されたのか、半壊で補修されたのかは、建物の銘板を見れば分かる。平成7年より前の建物は震災を生き延びたものだ。
この公民館別館の上層階は公営住宅になっているが、震災で全壊し、建て直されたものだという。
ここが部落の寺。ご覧の通り西本願寺だ。
震災よりももっと昔は、この辺りはどうだったんですか? と住民に聞くと、「部落や! 平家の落ち武者や。ここの住民はガラが悪うて、言葉遣いが悪い」と身も蓋もない答えが返ってきた。
それにしても、平家の落ち武者という話は初めて聞いたので、どこかにそれを示すようなものはないのか聞いてみても、祠があるけど、どこにあるかは知らないと、要領を得ない返事。
ただ、震災によって、部落は大きく変わったという。市営住宅には震災で住居を失った人が多数入居した。長田区外の人も多かった。そのような状況で、やれ同和住宅だ、誰が同和関係者だということは、無意味なことだろう。皮肉なことに震災は、神戸市が同和行政を止める原因の1つになったのかも知れない。
かつては部落解放同盟の支部があったが、今では全く活動していない。ただし、この診療所の隣には全解連の看板が出ているなど、共産党の影がちらつく。
…と思ったら「反共」と書かれた街宣車もある。
これは丸山中学校西野分校の跡地。未就学者が学び直せる夜間中学校という、本当の意味での同和教育で重要な役割を果たしていたが、震災で全壊。この地にはわずかな残骸があるのみで、学校自体は須磨区に移転した。
さらに探訪していると、非常に有用な掲示物を見つけた。1998年当時の部落の地図だ。これをもとに、再度チェックポイントを巡ろう。
これが長田公民館。ここは同和事業が行われていた時代も公民館だった。前に紹介した公民館別館は、もとは長田文化会館で、隣保館だった。
共成グランドゴルフ場と書かれたこの空き地。ここは「共成湯」という共同浴場だった。
公営店舗の肉屋。本場の神戸ビーフはこういうところで買えるのかも。
長田ふれあいサロンという建物だが、建物の造りはどう見ても風呂屋。実際、ここは「三六湯」という共同浴場だった。たぶん、近くにある三六橋に由来するのだろう。隣の公営住宅の棟番号が36なのは、市の粋な計らいによるものか。
これはコリアンサポートセンター。在日コリアンも多いことを伺わせる。
部落内にもはや公営浴場はないが、少し離れたところに格安の温泉があったので入ってきた。天然温泉で入浴料は420円。ネーミングが共産党っぽい…というか実際に共産党なのだろう。
第一平和温泉ですが、建物に「民商」の捨て看板が立て掛けてあるので、経営者は確実に共産党員だと思います(笑)
あばれ政
https://youtu.be/zbvFhx9Npxs
諸説ありますがいろいろ複雑に絡み合って今があるような。
近畿圏にヤクザが多いのも菅沼さんの分析と合致してるような。
http://www.jita.jp/kawa/text/hyouron-1.html
兵庫県の公衆浴場(銭湯)の上限額は430円。
第一平和温泉は上限額より10円安くしてくれてるので良心的なお風呂ですね。
「平和」という屋号はよくある名前で、、こないだの地震で煙突が折れた枚方市の銭湯も平和温泉という名前でした。
「第一」というのがより共産党っぽいと感じました。
銭湯に当てはまるか分かりませんが、なぜか名前に「第一」が付く弁護士事務所は共産党系のことが多いです。
毒者さんが書いていらっしゃるように、民商の看板があるのでさらに鉄壁です。
以前阪神間の取材をお願いした者です。
ありがとうございます。大変興味深い内容でした。
さらに、兵庫の部落を探訪していますので、ご期待下さい。
神戸市には
他にもお越しして頂く価値のある
興味深い、よそ者が入っても
何か感じるような場所が沢山あります
是非、起こし下さい
右翼団体にヤクザ屋さんが多いのはなぜでしょうか?
思想的に通じるところが多いのでしょうか。
「同和の会長」にその辺りのことが伺えることを書いております。
役所が同和地区の指定を既に行っていない、と言うのは本当でしょうか。
なぜなら六番町に住む知人が「俺ら同和地区やから失業手当6ヶ月もらえる(普通は3ヶ月)」と得意気に言うのを聞いてびっくりした記憶があるので。15年ほど前の話ですが、その間になくなったのでしょうか。
失業手当6ヶ月はハローワークがやっているので、国の所管です。これはかなりいい加減で、地域ごとに基準がバラバラで、厚労省に聞いたら結局は職員の裁量次第だそうです。
「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」が対象となります。まだ制度は残っています。
ありがとうございます。
よく職業柄長田区へは行くのですが、タイヘイ丸福レコード(沖縄)やタイヘイ丸奄(鹿児島県奄美群島)のレコードや両地域をモチーフ歌謡曲を製造販売していたタイヘイレコードの石井さん(一さんや一二さん)のあたりの浸透ぶりも関係ありそうですね。神戸芸能社ぐるりですが。ちなみに両石井さんのご子息の県議さんや西宮の市長さんはなかなかの人格者ですよ。
神戸市長田区(西の方)出身です。小学校、中学校は宮川小学校でもなく丸山中学校でもありません。子供の頃、宮川や丸山ときけば怖かったですね。私が通っていた中学校にも同和地区から通学している生徒がいましたが、言動が粗暴な生徒が多かったです。
ただ、住んでいた町には在日韓国人が多く、これはこれで言動が粗暴な生徒も多かったです。
同和地区や在日の同級生の中には、その後、暴力団山口組に就職(?)した人もおり、彼らから駅で名前を呼ばれた時は、心臓が止まりそうでした(笑)
在日あり、同和ありの地区で生まれ育ちましたが、友達も多く、それはそれで楽しかった思い出もたくさんあります。懐かしい記事をありがとうございました。
こちらこそ、貴重な思い出話ありがとうございます。