学術・研究:部落探訪(73) 奈良県桜井市初瀬馳向

カテゴリー: 部落探訪 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

桜井市にある長谷寺はせでらと言えば、牡丹と紅葉の名所。見頃の時期には観光客で賑わう。文字通りその長谷寺の向かい側にあるのが、今回訪れた馳向ちこう地区である。この地区は『同和地区精密調査報告書』に掲載され、詳細な記録が残されている。

ここが最寄り駅の近鉄大阪線長谷寺駅。

同和地区精密調査報告書(昭和37年及び昭和38年)

『同和地区精密調査報告書』に「交通の便がよい」と書かれている通りで、近鉄に乗れば大阪から1時間程度でアクセスできる。しかも、部落は駅のすぐ前である。…というよりも、駅のある場所が既に部落内。

部落の起源ははっきりしないが、「昔年、菅原道真の御神霊、京都北野天神より初瀬はせ與喜山よきやまに渡御の際、徒歩かち役として御召連れになり、故に與喜山の北麓に敷地を与え、之れに住居せしめられたり。されど彼等の稼業は死したる牛馬を取扱い、其の物を川にて洗い流すを以て、其の下流に住める初瀬村住人は大いに之れを忌嫌い字向井山、山林の所有権を与え、現今の処へ移住を命じたり」との伝承があるという。

しかし、ここは観光地。長谷寺を目指して多くの観光客が部落内を行き交う。このような部落は珍しいかも知れない。『同和地区精密調査報告書』にも、昭和初期に駅が開業したことで観光地化し、一見したところ同和地区とは分かりにくくなったことが書かれている。

1935年の世帯数は165,人口は727だったのが、1963年には322世帯、1356人とほぼ倍増している。ほとんどの世帯は農業か肉体労働の日雇いで、食肉業や皮革業が少数あったとされる。また、特徴的な産業として、野球のグローブ、ミットの製造がある。

駅は高台にあり、ここから部落を見下ろせる。今回導入した3連結自撮り棒でパノラマ撮影した。

見ての通り、部落は急傾斜地にある。

ここは、馳向区会館。隣保館ではなく、町内会館のようなもので、同和を思わせるような掲示物はない。

地区内はあまり同和地区という感じはなく、歴史ある奈良の街といった佇まいが多い。

しかし、昭和40年代テイストの古い同和施設、住宅もちらほら見られる。

廃墟となった建物もあるが、それほど多いわけではない。外見上は「部落産業」を意識させるものはあまり見られない。

小さなパン屋。店主はよそから移住してきたそうだ。他にもこの地を気に入ってやってきた移住者が多いという。

急傾斜地に家が密集しているだけあって、入り組んだ路地、細い階段もある。

浄土真宗本願寺派の寺。この寺の山号が部落の名前の由来となった。

寺の近くに藤井彦五郎公頌徳之碑と書かれた石碑がある。藤井彦五郎は、融和団体である大和同志会の設立者の1人である。

ゲストハウスや観光客向けの店があり、融和が進んでいるようだ。

こちらは隣保館。これを見ると、やはりここが同和地区であると実感する。

高いところにあるため、眺めがいい。雨上がりで空気が澄んでおり、桜井市内を見渡せた。

パノラマ撮影しつつ部落内を歩き回ってみた。

最後に、地区の西の端にあるという、とある神社に向かう。

地区の墓地があり、そこに神社へ続く階段がある。

神社のふもとには、体を清められる場所がある。

これが天龍津地妃子神社。何かこの地の由来に関係する、歴史ある神社かと思ったら、そうではなくて新興宗教のようだ。

鉄筋でプロテクトされた賽銭箱。賽銭泥棒に悩まされていることが伺える。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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学術・研究:部落探訪(73) 奈良県桜井市初瀬馳向」への13件のフィードバック

  1. 放浪流民

    5年前の今頃、長谷寺に紫陽花を見に行くついでに探訪しました。

    川の北岸は門前町として栄えており古めかしい土産物屋や飲食店が多くありますが、南岸にある馳向地区は驚くほどの急傾斜地に住宅がひしめいており驚きました。
    長谷寺駅から歩いて参詣する人たちには、骨の折れる道であったのではないでしょうか。
    改良住宅と思しき初瀬東住宅は、馳向地区の麓というのか、国道165号線から南に枝分かれした道から入っていきますが、その道が長谷寺駅前を通る県道とは交わらずに立体交差となっています。またこの立地は豪雨などの際、周辺と比しても浸水被害が起こりやすそうな場所に思えます。
    新しく移住してくる人がいる一方で、差別に結びつく物事も息を潜めている感じです。

    返信
  2. 長谷

    長谷寺はお参りされましたか??

    わたしは奈良に住んでいて、住んでいる街にも同和地区はありますが、ここは雰囲気が全然違いますね。

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      今回は部落だけが目的だったため、長谷寺には行きませんでした。
      馳向は他の同和地区とは違いますね。いろいろな意味で歴史を感じさせます。

      返信
  3. .

    「部落探訪記を書いて頂ける人がいれば、原稿を買い取るかも」という発言ですが、ガイドラインがあると書きやすいのではないかと思いますよ。

    某「なんとか案内」にも部落探訪記めいた記事がありますが、あれは書き方が下品です。ああなってしまうとつまらないと思います。

    返信
    1. 放浪流民

      同和地区wikiにデータベースが構築されていますので、それを参照しつつ現地で住民の暮らしぶりなどを確かめるのがベースになるかと思います。
      示現舎さんは探訪の際に地元の人からコメントをもらうことも多いですが、それをほかの人がどこまでできるかでしょうね。

      返信
    2. 鳥取ループ 投稿作成者

      写真と情報だけもらって、私が原稿を書くのがよいかも知れないですね。我こそはという方はメール下さい。

      返信
  4. 地誌研究家

    奈良県の部落で昔の風景を留めている代表がここです。国道165号で宇陀市から桜井方面へ走ると山の北斜面に密集しているのがよくわかります。

    返信

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