さてここでも少し補足、「同和取材の裏話」だ。もしかしたら初めて「同和問題」に関する記事を読んだ人もいるかもしれないから、回りくどいかもしれないがお付き合い頂きたい。
同和問題が絡む自治体の対応は、いわば喜劇の世界そのものだ。「同和事業について聞きたい」この“魔法の一言”で窓口は、てんやわんやの大騒動。若い世代にピンとこないかもしれないが、『8時だョ!全員集合』でコントからゲスト歌手の歌の合間に流れる「盆回り」が流れるかのようである。まさにカオスだ。
突如、職員の一人がどこかに走り、また分厚いファイルを持ち出しては頭を抱える者、席を外しては携帯電話でどこかに連絡する者あり。しばらくすると参与などの幹部職員、下手をすると総務部長までが登場し“ソファーのある個室”に通され説明を受けることもある。
ひょっとしたら「話を膨らませている」と感じる人もいるだろう。ところがどっこい一字一句本当のことだ。
その点、善光寺事務局は、わりとスムーズに行った。ただ「大勧進に聞いてほしい」というだけ。そして大勧進の事務局に行ってみると、窓口には「同宗連」(同和問題にとりくむ宗教教団連帯会議)の身元調査お断りのステッカーがあった。なるほどいかにもだ。ちなみに同宗連とは、1979年に世界宗教者平和会議で、全日本仏教会理事長が行ったスピーチが部落差別であると糾弾を受けた。この事態を受け宗教界が同和問題の解決に向け結成した団体。現在は、64の加盟団体で運営されている。
さっそく大勧進に取材を申し込んだものの、そのガードは固い。
「貫主が否定している以上、何も言えない。弁護士に連絡してほしい」
この一点張りで、かなりナーバスになっている様子だった。
もちろん同和問題が絡んでいることもある。ただそれだけではないだろう。現在、同宗連は、天台宗が議長教団を務めている。その天台宗から“差別者”を出したとあっては大失態というわけだ。それも貫主が、である。したがって大勧進も神経を尖らせていることは、言うまでもない。
後に聞いたことだが、ちょうど本誌が取材に行った時は各院に“かん口令”が敷かれたとも教えられた。親小松派も反小松派であっても口が重かったのは、そのせいだろうか。
こんなところでいったん現地取材は、完了。あとは、現地で紹介された事情をよく知り、なおかつ“話してくれる”人に連絡を取ってみることにした。
事件のウラに「女」! 貫主の履歴書
差別発言騒動についてのフレームは、なんとなくできてきた。しかしどうまとめるか。なんだかかえって宿題だけが増えた現地取材だった。一時は、全国的にニュースになった善光寺問題も、そろそろ世間の関心は、薄まっている。どういう結果であれ情報の鮮度上、記事化は、7月中にすませなければならない。
あとは、担当弁護士と部落解放同盟に「あてる」(コメントを取ること)で本件に関するレポートを終えようと思った。そんな時についに事情をよく知る住職と連絡がついたのだ。匿名が条件だがとにかく何でも話してくれるという。とても心強い話である。この証言は、長野で聞いた話とほぼ符合したが、何より貴重だったのは「差別発言」についての詳細が聞けたことだ。
同氏は、開口一番、こう言った。
「あの人(貫主)は、全くどうしようもない」
まさに“お手上げ”というか呆れている様子がありありと伺える。
小松貫主は、若い頃、天台宗宗務庁、京都大原三千院などを転々としていたそうだ。ところがその時も“女性問題”が浮上していたという。“転々とした”というのは、そんな事情があったのかもしれない。
とは言え善光寺の貫主にまで出世したのだから、相応の実力は、あったのだろう。善光寺に来た時も“書でも何でも優れた高僧”という触れ込みだったそうだ。ところが善光寺に取材に来た女子アナとの交際などが報じられてしまう。
また「大勧進には、有名な茶室があって市内で茶道をやる女性たちが茶会をやったが、彼女たちに対しても“品定め”をするようになった」(同前)ということだ。この通り、貫主には、女性問題が枕詞のようについて回る。これでは、善光寺のメンツに関わってしまう。
加えて「自分の書を限定販売と銘打って売り始めた。新聞広告にも“善光寺大勧進貫主”と載っている。これじゃ通販会社じゃないか。善光寺の名誉に関わる、ということでいよいよ貫主の座から降りてもらおうということになった」(同前)。確かに歴史ある善光寺が“限定発売”とは、随分チープな話だ。
一度は、信徒総代らも交えた秘密会議で小松貫主に辞めるように迫った。そして一端は「辞める」と誓ったという。その場で念書までしたためたというが、期日が来ても一行に辞めない。それどころか貫主は、そのような念書を知らない、とまで言い出した。
そこで一山らが小松貫主を相手取って民事訴訟を行ったのだ。結果は、高裁まで行き小松貫主の敗訴。ところが今もこの地位にいるのには、こんな訳がある。
差別発言の正体見たり!
本来、敗訴した以上、対外的にそして何よりも本人のメンツとしても貫主の座を降りざるをえなかったはず。それでも辞めなかったのは、よほど強靭なメンタルの持ち主かどうかは、分からない。ただそれだけではなく、一山側にミスが生じた。
「一山側の弁護士が“裁判所から小松に貫主を辞めるよう命じる”ことも主張に加えた。ところが裁判所は“宗教行為に裁判所が介入できない”という判断を示した。これを小松が逆手に取って“裁判所が辞めなくていい”と解釈して、居直ってしまった」(同前)。
とは言え裁判でも負け、メディアでもバッシング報道。これでかなり女性たちは、貫主の周りから遠ざかるようになった。ところが今度は“周辺の女性”に声をかけるようになった。
それが差別発言を受けたという女性陣たちだ。同氏が解説する。
「彼女らは、善光寺の賄いさんでA子、B子、C子の3人がいた。今、貫主を告発している女性は、A子とB子だ」
A子はとB子は、小松貫主から誘われたものの拒否。ところがこのC子が貫主と親しくなったというのだ。「A子、B子もそんなことをやめろ」とC子を説得したが、関係はそのまま。そこから小松貫主のA子、B子に対する中傷が始まったと見られている。
差別発言について同氏はこう解説する。
「部落差別発言を受けたのは、このA子だ。時期は、昨年の暮れ頃の話。貫主には、付き人の小僧さんが何人かいるが、彼らに対して“A子は、部落出身だ”などと言ったそうだ。するとそのうちの一人が事務局に飛んでいった。“今、貫主がとんでもない発言をした”そう報告したそうだ。そしてこの小僧さんがA子に対しても“貫主があなたのことを部落出身だと言っていた”と話した。ここから差別発言問題が露見したんだ」
とにかくついに差別発言の核心部分は、固まった。
「あいつは、部落出身だ」
またもう一方の女性を「ヤクザの女だ」と中傷した、こんな証言も得ることができた。
「部落とヤクザの女」これが今回の差別発言事件の実相である。
ただこの付き人がICレコーダーでも仕込み、発言を録音したというならばまだしも現状は、証拠がない。確認会に出席しないことを「卑怯」という関係者もいたが、それは誤りだ。繰り返すが解放同盟の確認会自体、義務でもなければ何ら強制力はない。もちろんこのまま「出席しない」といったところで問題はない。いやむしろそれが本来のあるべき姿なのだ。
しかしそう簡単に引き下がる相手でもないだろう。では今後は、どう対応するのか? 小松氏の担当弁護士に聞くと差別発言については「そうした事実は“ない”という前提」とした上で「一人の方には“部落出身だ”というものと、もう一人の方には”ヤクザの愛人で入れ墨があったが消した“。先方からは、小松貫主がこういう発言をしたと報告を受けた」と説明。今後は「すでに確認会でも貫主自ら発言を否定された。今後確認会などに出席する予定はない」とした。
本来、4度目の確認会を予定していたが、これも小松サイドが拒絶し“お流れ”に。これでは“面目丸つぶれ”というやつだ。さらに天台宗も同宗連の議長である以上、何としても解決させなければならない。
双方に共通するのは、ズバリ「なんともしても貫主の口から“部落差別をしました”と言わせること」(小松派の関係者)これに尽きる。事態の落としどころは、この一点のみだ。
貫主、解放同盟、天台宗、三者の意地と思惑がしのぎを削っている。ところが貫主が認めない以上、打つ手はない。おそらくは、本人不在の「真相報告集会」のようなものを開いて「終了」になるのではないか。そのようにまとめ後は、解放同盟にもコメントを求めてこのルポを脱稿するところだった。そんな直前、また別の情報が寄せられたのだ。
解放同盟が天台宗務庁に! そして聞き取り調査か!?
実は、この件について解放同盟は、手をこまねいているだけと思っていた。
しかし直前、関係者からこのような連絡が入る。
「7月26日に解放同盟が天台宗務庁に貫主に確認会へ出席するよう要請に行った。今度は、念入りに調査し、差別発言の証拠もあるそうだ」
証拠とは? もしや発言の音声記録でもあるというのか。
部落解放同盟中央本部にコメントを求めると「示現舎だからという訳ではなく、どのメディアにもノーコメント」という回答だった。なお現在、本誌「示現舎」は、出版をめぐり解放同盟と係争中だ。ノーコメントとは言え回答をくれたことは、意外だった。
一方、天台宗務庁にも尋ねると26日に解放同盟が同庁を訪れたことを認めた上で「小松氏の発言問題の解決に協力してほしいという要請だった」と説明した。宗務庁の説明では、若干柔らかい文言だ。しかし情報提供者は、「宗務庁は、責任をもって小松貫主を辞めさせる、と解放同盟側に伝えたそうだ」と話す。
貫主側の押し切り勝ちになるか? と思いきやまだまだバトルは、続きそうである。さらに、だ。
「28日は、宗務庁から大勧進に聞き取り調査に行ったようだ」
という追加情報も入った。大勧進は「そのしたことはない」と否定。しかし天台宗務庁は、聞き取り調査に行ったことを認めた。どうも本腰を挙げたようである。何しろ日々、様々な事件やトラブルが報じられる現在、社会的には、過去のものになりつつある善光寺問題。だが水面下では、まだ“闘争の火種”は、燃え盛っているようだ。
「4度目の確認会」とはいかにも異様ですね。「被疑事実」を「被疑者」が認めるまで同じことをしつこく追及するという手口は、ふだん解放同盟が批判してきた国家権力の手口そのままです。
「疑わしきは罰せず」の法理は、解放同盟に有利な局面で持ち出すだけ。解放同盟が敵視する相手には「疑わしきは罰せよ」。
こういう二重基準を弄するから、解放同盟は信用できないのです。
たしかに、この坊主はうさんくさいのは間違いないだろうが、解放同盟に彼を首にする権限などない。こんなことで口を出すから、信頼を失い、批判を受ける口実をつくる。部落解放同盟の執念深さを物語る記事だ。意に沿わぬ者を貶め、失脚させることについては、超一流。
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/chronicles/visual/04kindai/kindai4-c1.html
尼崎の朝鮮人についても記事を書いて欲しいです
いつも興味深く読ませていただいております。
困難な取材を多数こなしておられる姿には敬服いたします。
ただ、三品さんの文章は、少々三品(サンピン)なところが目に付きます。
今回の記事に関しましては、
>あ彼女たちに対しても“品定め”をするようになった
>ところが貫主が認めない以上、打つ手はもう打つ手はない。
などが見つかりました。
出版物としてこういう文章が出ないよう、校正をしっかりとしていただけると、
記事の信憑性がより高まるのではないかと存じます。
内容は内容でいいのですが。
ライターさんなら文章の書き方を勉強したほうがいいですね。
>A子はとB子は、小松貫主から誘われたものの拒否。ところがこのC子が貫主と親しくなったというのだ。「A子、B子もそんなことをやめろ」とC子を説得したが、関係はそのまま。そこから小松貫主のA子、B子に対する中傷が始まったと見られている。
このC子
→どの?
「A子、B子もそんなことをやめろ」とC子を説得したが、
→A子、B子も「そんなことをやめろ」とC子を説得したが、
句読点の置き方も読みにくく、意味のつながりを分断するものばかりです。
参考にさせて頂きます