亀井文夫監督作品、「人間みな兄弟」で「山また山の紀州の奥に12戸ばかりの部落がある」として紹介されている、和歌山の部落がある。亀井文夫監督の足跡と、この部落を特定できたと読者の方よりメールを頂いた。そこで、実際に現地に赴くことにした。
映画に出てくるこの場面、これは現在の新宮市から見た熊野川の河原であることが分かった。
国土地理院の地図・空中写真閲覧サービスで1976年11月1日に撮影した、新宮市南檜杖付近の地図を見ると、映画の映像の下の方に見える、先が細くなった特徴的な地形が見える。
ここには国道168号線が通っているが、新しい道は低い位置を通っているので、映画は現在の越路トンネルの上を通る旧道から撮影したものと考えられる。
越路トンネルは、現在は古いトンネルと新しいトンネルが並行しているが、この場所から左に曲がると、さらに古い道がある。
旧道は途中までしか舗装されておらず、その先はあまりにも荒れた道なので、自動車では進めない。徒歩で旧道を進むと、戦前に作られたと思われる、天井から水が漏れてくる古いトンネルがあり、そこを抜けると目的の場所だ。
ここは旧道マニアのスポットにもなっているようなので、詳しくはこちらをご覧いただくのがよいだろう。
周囲に木が生い茂っているため、見晴らしはよくないが、山の稜線は完全に一致する。撮影場所は間違いなくここだろう。当時はもっと視界が開けていたと思われる。
映画には、部落の子供が通った「芦尾小学校」が出て来る。しかし、1972年に二川小学校に統合されて廃校になった。
熊野街道を目的地へと進むと、まさに山また山という感じ。川の水が驚くほど澄んでいる。
ここが芦尾小学校のあった場所なのだが、今は木材加工場になっていて、もはや学校があった頃の面影はない。
道路側にグラウンドがあり、山側に校舎があったのだろう。
木材加工場の駐車場。芦尾小学校があった当時はここが道路で、橋がかかっていた。
周囲の景色をパノラマでお楽しみいただきたい。
(次回に続く)
特徴的な地形ではありますが、実際は「やな漁」のために人工的に掘られた水路(魚道)ですね。
増水などで砂州の形などが変わると魚道の掘り方も変わりますが、基本毎年同じような形で掘られます。
やな漁の水路とは思いもしませんでした。お詳しいですね。
1970年代の航空写真は映画の撮影からかなり年月が経っているはずなのに、同じような地形が見られる理由がよく分かりました。