北名古屋市・小村貴司市議が愛知維新の会から正当な理由なく除名されたとして350万円の損害賠償を求めた裁判。11月29日、第2回口頭弁論が開かれたがこの日は維新側の反論書など書面確認で終わった。維新側の反論としてはいわゆる「部分社会の法理」。つまり政党内の問題で司法の判断は及ばないという主張だ。
公開質問状に対して 維新本部は回答なし
本件の原因は岬麻紀前衆院議員のパワハラだ。
昨年12月、岬氏による秘書らへのパワハラが週刊文春にスクープされた。また10月の衆院選渦中、今度は岬氏が秘書に対立候補のポスターを剥がすよう命じたことについて再び同誌に掲載された。与党要人でもない議員がこれだけ週刊誌を賑わすのも珍しい。
結局、岬氏は落選することになるが、問題はまだ終わっていない。
というのは岬氏のパワハラは小村貴司北名古屋市議が日本維新の会本部に設置されているハラスメント委員会に告発していたからだ。当時、特別党員しか同委員会に告発できないことから同市議が代表して党に訴え出たところ、なぜか愛知維新の会側は「身を切る改革」(寄付)の未達を理由に除名処分とした。
ところが愛知維新の会「身を切る改革委員会」(犬塚たかし春日井市議)が問題なしとの見解を示していたにもかかわらず突如、同会側は「身を切る改革」を持ち出した。この処分の裏にはパワハラ隠しの可能性が高い。
いずれにしてもパワハラ問題はまだ未解決であり、本来は岬氏に対しても何らかの処分があって然るべきだ。本件をめぐっては筆者も過去記事で党本部や藤田文武前幹事長にハラスメント委員会の開催の有無などを問うたが返答はなかった。
このため同市議は11月6日に公開質問状を維新本部に送付。
小村市議によると現在までまだ党本部から返答はないという。今月1日、日本維新の会は臨時党大会で代表選を開催し、新たに吉村洋文大阪府知事を新代表に選出した。先の衆院選では議席数を減らしたことを踏まえ党再生を訴えた吉村新代表だが、岬氏のパワハラ問題については「過去のこと」で終わらせるのか今後も注目だ。
維新側は「部分社会の法理」で反論
一方、小村氏が除名処分により精神的苦痛を負ったとして愛知維新の会を訴えた第2回口頭弁論が29日、名古屋地裁で開かれた。
この日は書面だけの確認で終わったが、愛知維新側が持ち出したのは「部分社会の法理」だった。
日本の司法では政党や大学などの団体規律に関する問題について司法判断が及ばないという考え方である。
部分社会の法理について過去の判例として最も有名なのが「共産党袴田事件」(1988年)だ。
日本共産党で元副委員長を務めた故・袴田里見氏が1977年、党の統制委員会で除名処分を受けた。袴田氏は党所有の家屋に在住していたため、党側は明け渡しを求め提訴。袴田氏は最高裁に上告していたが棄却された。
愛知維新側も当時の判例を根拠にしており、党の規律について司法判断を及ばないと主張。
しかし小村市議が名古屋地裁に申し立てた際、愛知維新の会に対して関係資料の証拠保全が行われた。部分社会の法理に則ればそもそも証拠保全は不要のはずだ。
加えて党規律といってもハラスメント委員会が開催され、機能していればこのような事態が起きなかったはずである。逆に部分社会の法理を持ち出すということは他に反論できないことの裏返しではないか。
次回の口頭弁論は2月7日。