菊池山哉は『長吏と特殊部落』に次の通り記している。
○典野の西方で、上古乗潴駅へ、東山道の通じて居ったと思はれる、古道筋に存する。
○鎮守は八王子権現であり、珍らしい鎮守である。
○農家三十戸許り。
○「風土記稿」に、八王子村字馬橋に、長吏三軒住めり、とある。幕末三軒のものが、十倍とはならない。何処からか寄ったものであらう。今前野宿と言ふ。和名抄植田郷に関するであらうか、同郷の南に位する。

鎮守が八王子権現というので、まずは八王子神社にやってきた。



見ての通り立派な神社で、30戸あまりのための神社には見えない。浄土宗と関係があるらしい。

明らかに氏子の戸数は30よりも多い。
小林、山崎という名字が多いが、特徴なのは「鰻江」という名字。これは滋賀県から移住してきたと伝承されているが、どれも大地主であるという。

地元の人がちらほらと参拝しており、中には歴史好きという人もいたが、古村を知っている人はいなかった。おそらく同和地区指定もされていないし、完全に忘れ去られているのだろうか。


いずれにしても、歴史ある神社である。大木の根元が参道にはみ出しているが、これは参道が造られたた時に既にその木があった証拠だろう。

古い石柱にも小林、三角、渋谷、石川といった名字が見える。
これは、八王子神社の氏子の一部が古村だったのではないかと推定した。

この地図の右上の鳥居が八王子神社。そして、小林が集中しているあたりに鳥居の記号がある。



その鳥居の記号の場所に白山神社がある。


こちらも立派で歴史のありそうな神社だ。八王子神社よりは小さいとは言え、30戸規模よりももっと多そうだ。



この石碑には小林、三角が多い。


周辺は静かな住宅地。


そして、見つけたのが「小林家共同墓地」。



確かに墓石はことごとく小林だ。しかも、看板の雰囲気や字体が白山神社のものと共通する。宗派は浄土宗であろう。
小林と言えば、三橋の古村にも多かった名字なので関連性が推定される。ここから三橋はそれほど遠くはない。


なぜ菊池山哉が白山神社のことを書かなかったのか謎だが、この小林家は白山神社の氏子だろう。しかし、三角など他の家も白山神社の氏子だ。白山神社は古村専用のものではなく、どちらかと言えば小林家共同墓地の方がキーになるのではないか。

ひっそりと馬頭観音が祀られている。結局、古村のことを知る人には出会わなかった。おそらく、ここでは古くから古村とそれ以外が神社を共有していて、融和していたのではないか。
鰻江は鯰江の間違いではないでしょうか?
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