イロハ社・新原光晴氏が「スタジオジブリ作品の上映権を持つ」「2千人は入る」などと持ちかけ岐阜県山県市で開催した映画祭は失敗。そして同種のトラブルは熊本県御船町で起きていた。同町は平成28年熊本地震の被災地である。開催前から地元関係者らは新原氏に警戒心を持ったが「復興事業」の目的もあって開催に踏み切ったそうだ。(写真は映画祭企画書より抜粋)
新原氏が御船町民に「上映権を持つ」と持ちかけた

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イロハスタンダードはスタジオジブリ作品のキャラクターグッズなどの販売を行ってきた。だが「新原氏が上映権を持つ」というのは明らかな嘘だ。「イロハスタンダードまたは新原光晴氏とスタジオジブリとの間には、商取引、交流はありません」とスタジオジブリ広報部は正式に新原氏との関係を否定した。
こういう流れである。
スタジオジブリが上映権を許諾していたのは「(株)兵庫県映画センター」。しかしその契約も2023年で終了していた。同センターが新原氏の協力者である『洲本オリオン』(兵庫県洲本市)にまた貸しするという関係に過ぎない。報道でも大きく報じられたが、洲本オリオンは『名もなき池』を上映した映画館でもある。同館の協力によってジブリ上映会が各地で開催されてきた。
関係者の協力によってジブリ映画祭の企画書を入手したところ計画図が掲載されており、その中には以前、レポートした山県市の名がある。いずれも都市圏というよりも地方の小さな町が目立つ。そもそもこのジブリ映画祭は『君たちはどう生きるか』(2023年7月公開)のプロモーションが主目的。それならばより人口が多い地域で開催すべきではないか。
「首都圏や都市部で開催すると目立ってしまいます。映画祭自体が目的ではなく集金狙いである以上、地方の方が都合がいいのです」(資料提供者)

新原氏が作成した計画書。
計画図のうち熊本県御船町でも2023年4月1、2日に復興映画祭として開催されていた。先述した通り、同町は「平成28年熊本地震」の被災地である。地元では地域住民を元気つけるための復興事業が検討されてきた。そんな地域の気持ちを踏みにじるように新原氏が傍若無人に振る舞ったという。
「もうあの人(新原氏)とは関わりたくないです。その名を聞くのも嫌です」と実行委員会関係者X氏は語る。それは山県市と同様に「ジブリ映画の上映権を持っている」という手口だった。
契約もしていないのに「上映しないとはどういうことだ」(新原氏)

X氏は当時の状況を振り返る。
「2023年1月頃だったと思います。きっかけは新原氏の提案ではありません。地元でカフェの店員をしていたS女が〝ジブリ映画祭の開催地を募集していますがやってみたらどうですか〟と持ちかけてきました。新原氏とS女の関係? それは分かりません。ただTwitter(現X)で知り合ったという話は聞きました」
同町は来年、熊本地震10周年を迎えるにあたり「復興の鐘」を制作し、今年4月に除幕式を行った。震災が地元に傷を残したのは言うまでもない。2023年当時も復興イベントを模索しており、Ⅹ氏ら地元関係者はともかく提案だけは聞いてみることにした。
「新原氏からはジブリから3カ所だけは特別に上演が許されたという説明を受けました。ただし当初から違和感ばかりでしたよ。というのはまだ上映が決まっておらず契約書すら交わしていないのに、計画だけは進行していきます。またS女も自分が負担する訳ではありませんが〝福祉施設の人たちにチケットをプレゼントしたい〟とか〝私が主催者になります〟などと言い出しました。他の人とも〝この計画は大丈夫か。怪しいのではないか〟と話していると、そんな話をXのスペースでベラベラと話してしまうんですよ。彼女にはもう何も話してはいけないと思いました」(同前)
S女はまるで新原氏の手先のようだが、徐々に実行委員会の中心人物のように振る舞い出した。
そして地元関係者が映画祭の企画について不安を訴えたことをS女が新原氏に告げたという。
「改めて断ろうとしたところ突然、新原氏が〝もう準備しているのに上映しないとはどういうことなんだ〟と怒鳴り込んできたのです。本当に怖かったし、断るとどうなるか分かりません。そこでとにかくお金だけ払って開催すればいいだろうということになりました」
繰り返すがこの映画祭は「開催」自体が目的ではなく「集金」が狙いである。開催が見送りになると当然、収入が見込めなくなる。強引に迫ったのもそのためだろう。
開催は2023年4月1日、2日の両日。山県市と同様に『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』の4作品の上映だ。
【大人の場合】
1本目購入価格…2,000円
2本目購入価格…1,000円(1,000円引き/合計3,000円)
3本目購入価格…800円(1,200円引き/合計3,800円)
4本目購入価格…200円(1,800円引き/合計4,000円)
【子供の場合】
1本目購入価格…1,000円
2本目購入価格…500円(500円引き/合計1,500円)
3本目購入価格…400円(400円引き/合計1,900円)
4本目購入価格…100円(900円引き/合計2,000円)
山県市での映画祭と同様にチケットは完売には程遠いものだった。
「新原氏は上映権を持っていると言いましたが、当日は映画会社の方が上映用フィルムを運んできました。700人収容のホールでしたが、両日で400枚ぐらいは売れたと記憶しています。それも地域のこども食堂の方が10万円分のチケットを購入して子供たちに配布してくれたり地域の協力があってのことです。新原氏は〝僕は100枚を売ったけど、あなたがたは何枚売ったんだ〟と言われました。しかし後に請求書が送付されてきた時に100枚分の売上の明細はありません。一体、どうなったのか分かりませんが、とにかく〝関わりたくない〟の一心だけでしたよ」(同)
話は続く。
「〝トークショーとスタッフの食事や宿の世話をしろ〟と言われました。トークショーの相手? 太田唯さんというジブリ作品に詳しいタレントということでしたが、こちらが依頼した訳ではありません。それに加えて〝追加で僕の交通費として14万円を支払え〟と請求書に上積みされていました。新原氏は宿でも態度が悪くて女将さんに悪態をついたそうです。そこのご主人が実行委員会のメンバーということもあり上手くとりなしてくれましたが、関わった皆さんにご迷惑をかけてしまいました」(同)
太田唯氏は映画『名もなき池』にも出演したほか、山県市の映画祭でもトークショーに出演。新原氏がたびたび起用してきたタレントだ。関係人物が新原氏から離れていく中で、交流が続く数少ない人物である。
しかし山県市、御船町、いずれも地域住民たちは不快な思いをして終わった。どうにか開催にこぎつけたという以外、成果は皆無と言ってもいいだろう。
「復興映画祭と銘打った以上、中止は町民を傷付けることになります。とにかくなんとか開催して終わろうという思いだけでしたよ」とX氏は嘆息していた。山県市でも「ジブリ上映権を持つ」などと詐欺まがいの提案を行ったのは悪質だ。さらに御船町の場合、地域復興という願いがある。そこにつけ込んだというのは卑劣すぎないか。
さらに御船町の映画祭でジブリ作品を誰が用意したかも問題である。X氏に確認したところ「よく覚えていません。洲本オリオンの野口仁氏? その会社かは分かりませんが、野口さんという人だった記憶があります」とした。
山県市映画祭と同様にやはり「洲本オリオン」の野口氏が関与していたようだ。先述した通り、洲本オリオンは『名もなき池』を上映した数少ない映画館である。野口氏に確認してみた。
‐御船町でも映画祭に関係しましたか?
前回の記事は読みましたが、答えられません。
‐事実関係に間違いがあれば訂正し、謝罪します。問題部分や事実関係だけは教えてください。
回答は控えます。
洲本オリオンは淡路島唯一の映画館としてマスコミにも取り上げられることもあり、また敬意を抱く映画関係者も少なくない。しかし同館が新原氏に協力したことで山県市、御船町の市民を傷つける結果となってしまった。
映画産業も厳しい時代であるが、野口氏も淡路島を思う心意気があるからこそ映画館を経営しているのだろう。
そうした郷土への思いは山県市民、御船町民、そして映画『名もなき池』に莫大な公金が使われた関市民も同じことだ。もし少しでも責任を感じているのならば新原氏との関係について説明してもらいたい。