いじめで自殺した生徒が部落出身であるとして、部落解放同盟新潟県連合会が新潟県立荒川高校を糾弾していた件で、12月27日、新潟県情報公開審査会は糾弾会関連文書の部分公開が相当と答申した。
筆者の情報公開請求による部分公開に対し、解放同盟側が審査請求をし、それを受けて文書の公開が停止され、県教委から情報公開審査会に諮問していた。
以下が今回出された答申の全文である。
筆者は2023年2月3日の解放同盟による荒川高校に対する確認会の関連文書等を情報公開請求していた。請求を行ったのは2023年2月7日のことであるが、部分公開の決定が出されたのは7月21日。そして本来であれば8月7日に文書が筆者に郵送されるはずであったが、解放同盟から県教委に文書を公開しないように審査請求がされたため、執行停止になっている。
筆者は「参加人」としてこの審査請求に参加し、当然ながら、部分公開を実施すべきと意見した。また、県教委も審査請求に対しては部分公開の決定が正当である旨を主張した。
これはその審査請求についての答申である。その結論は、解放同盟の要求を否定し、文書の部分公開を支持するものとなっている。
しかし、この答申はそれだけではなく、県教委に対して2つの苦言を呈している。「付言」として以下のことが書かれている。
(1)非公開部分の不整合について
本件行政文書として特定された文書には、類似の情報について当該各文書によって公開又は非公開の判断が異なる不整合な箇所が散見された。
今後の公開請求への対応においては、公開・非公開の判断が適切に行われていないのではないか、といった不信感を招くことのないよう、慎重な対応を望むものである。
1つ目のこれは、複数の文書が部分公開の対象となっており、その一部が黒塗りになっているのだが、その判断が文書によって一貫していないことへの批判である。この記述から、情報公開審査会の委員が実際に文書の内容を確認し、どこが黒塗りにされたのか確認したことが分かる。これは、地方自治体の情報公開についての審査では「インカメラ審理」と言って、審査を行う委員が実際に文書の現物を見ることが許されているためである。
(2)事務処理の遅延等について
令和6年1月19日付けの本件諮問に対して、実施機関は弁明書の修正を行っており、弁明書が再提出されたのは、令和6年4月25日である。事務手続きに長期間を要した理由については、対象文書の内容が繊細かつ複雑な情報であり、慎重を期した作業であったことが原因であると実施機関からの説明があった。また、審査請求人から提出された反論書の写しの参加人への送付が、参加人の口頭意見陳述の直前になっていた。
いったん提出された弁明書の再提出が約3か月後であったことや、反論書の写しの参加人への送付が遅延したことは、法第1条の「簡易迅速かつ公正な手続き」による処理とはいえず、不適切なものである。
実施機関においては、弁明書や反論書の提出・送付等に当たっては、迅速かつ的確に対応するよう望むものである。
これは実施機関、つまり県教委の事務処理が遅延したことを批判したものである。筆者は参加人の立場で県教委が遅延行為をしていると意見してきたが、それが認められた形である。
今後、県教委が答申を受けて実際に文書を公開するかどうかが注目される。情報公開審査会の答申には強制力がなく、県教委が答申に反して文書を公開しないということも有り得る(実際に、筆者は国の情報公開・個人情報保護審査会や滋賀県情報公開審査会の答申を無視された経験がある)。しかし、今回の場合は審査の過程で県教委が部分公開の正当性を主張していたので、非公開とされる可能性は低いと見ている。
くわえて、筆者は新潟地裁に対して部分公開の執行を求める訴訟を提起しており、1月16日にその判決が出される予定となっている。もし、その前に県教委が文書を公開した場合、新潟地裁が判決の言い渡しを中止して、筆者の請求を却下する可能性もある(対象の文書が公開されたなら、裁判所が関与する必要はないという意味である)。
いずれにしても、近いうちに文書の部分公開が実施される可能性が高いと見られる。