自民党の大敗に終わった10月の衆院選。閣僚すら討ち死にする中、政治資金問題で離党した和歌山2区の世耕弘成氏が二階俊博元幹事長三男、伸康氏に圧勝した。本部、県連が総力を挙げて臨んだだけに二階親子のショックは計り知れない。一方、世耕氏の自民会派入りに県連が「復党ではない」と待ったをかけてきたのだ。
公明票、維新票までガッチリ固めた世耕氏
一時期の調査ではダブルスコア差だった世耕氏と伸康氏。結果は世耕氏が3万票差をつけての圧勝だ。事前調査からすると3万票まで伸康氏が詰め寄ったという方が正確だろうか。
二階元幹事長の威光も落ちたものだ。選挙戦では二階元幹事長の姿はなかったが、最終日の26日、御坊市の演説会場に訪れ伸康氏への支持を訴えた。
「会場は報道陣のカメラをシャットアウト。記者たちは有権者に紛れ込みICレコーダーを持ち込んで取材していました。二階王国なのに盛り上がりに欠けた上、マスコミを締め出したのはむしろマイナスだったでしょうね」(地元記者)
対して世耕氏にはこれまで二階寄りだった有力者も支持に回った。世耕氏の勝因については過去記事でも理事長を務める近畿大学関係者名簿を公明党へ提供。以下の記事が詳しい。
また水面下で世耕氏は同県1区から出馬した日本維新の会、林佑美氏(比例で復活当選)を応援。維新支持者からの支持を取りつけたのも重要だ。
参院議員からの鞍替えに成功した世耕氏は非公認だった西村康稔、萩生田光一両氏ら計6人と衆院会派「自民党・無所属の会」に入る見通し。もちろん復党の可能性もありえる。
ところが「待った」をかけたのが和歌山県連なのだ。
「世耕氏は復党ではない」と通達
10月31日、和歌山県連は県議の中村裕一幹事長名で「世耕⽒の会派⼊りについて」と所属議員らに通知。注目はこの一文だ。
党本部に確認したところ、世耕氏が加入したのは衆議院での会派「自民党・無所属の会」であり、復党ではありませんでした。復党については、党紀委員会などのハードルがあり、当面は困難な模様です。
「復党」ではなくあくまで「会派入り」と強調する辺り怨念が伝わる。
それから同文書で見逃せないポイントは二階父の側近、中村裕一幹事長名で発せられたことだ。本来は石田真敏会長名が入るはずだが――。
これには二階派が世耕氏を復党させたくない意図が感じられる。なにしろ選挙期間中も世耕氏をけん制し続けた和歌山県連側。
「10月20日、石破首相を迎えた海南市内の街頭演説で鶴保庸介参院議員が“馴染みがある方と戦わなきゃいけないくなった。この分断の選挙、誰が作ったと思います。伸康候補が公認になってから、出馬表明をなさった ”と恨み節をぶちまけました。ただでさえ聴衆は少ないのに、有権者の前でこんな話は逆に後手と映ったでしょう」(前出記者)
馴染みがある方とはもちろん世耕氏のこと。すでに世耕氏の存在感に負けていた。その上で発した「復党ではない」との通知はささやかな抵抗に過ぎない。なにしろ「勝てば官軍」なのが選挙の世界。県連がいつまで反世耕を貫けるのか。