再エネは報道のエネルギー源? 日本風力開発(株)から約3千万円を受け取った疑いで東京地検特捜部は4日に自民党・秋本真利衆院議員の関係先を家宅捜索した。秋本氏周辺は再エネ人脈が多数で、献金リストには熱海土石流起点の造成地現所有者・麦島善光氏の顧問弁護士・河合弘之氏もいた。
特捜部のターゲットと 化した再エネ
家宅捜索を受けた秋本氏は4日、外務大臣政務官を辞任、そして翌日に自民党を離党。また同日は東京地検特捜部は日本風力開発へ家宅捜索に入った。
再エネ関連といえば今年3月に国際政治学者・三浦瑠麗氏の夫、三浦清志氏が太陽光発電の出資金をめぐり業務上横領で特捜部に逮捕されたのは記憶に新しい。
政治汚職、経済事件、大型脱税など大事件を扱う特捜部が今年だけで2件も再エネ案件で動いたことになる。それだけ太陽光、風力発電といった分野に怪しい人脈と金が蠢いているということだ。
今年2月には同じく再エネ事業を手掛けるレノバ社関係者から政治献金を受けていた。献金の裏には経産省と国交省が進めていた洋上風力発電事業の入札ルールが再エネ議連の働きかけでレノバ社有利になったという。
秋本氏の政治資金収支報告書からしても“再エネ人脈 ”ははっきり見てとれる。2018~2020年に(株)エストリオ(代表者=本田大作)から献金を受けているが、本多氏はレノバの創業メンバー。他にも注目すべき支援者たちがいる。
直近の2021年分をみるとGPSSグループ・倉田隆広、目崎雅昭両共同代表、株式会社グリーンパワーインベストメント社長・坂木満氏、コスモエコパワー専務取締役・眞鍋修一氏といった業界関係者がズラリ、だ。その中に河合弘之弁護士の名前もあった。
河合氏は「脱原発弁護団全国連絡会」(脱原弁連)の共同代表、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟幹事長を務める。そして当サイトが追跡取材する熱海土石流の発災起点、伊豆山造成地の現所有者・麦島善光氏の顧問弁護士である。
「脱原発」の一点で 市民団体も 秋本氏を評価
再エネ人脈の支援を受けるのも当然だろう。秋本氏が過去、国会で行った質疑はFIT(固定価格買取制度)事業者、再エネ事業者の代弁者のようだ。「代弁」といえば2020年の内閣官房成長戦略会議(第6回)で委員の三浦瑠麗氏が再エネ事業者の要望を資料として提出したのも印象的だ。
その点、委員どころか秋本氏は「衆議員議員」という立場にある。質問という形式の業者利益の代弁も可能だ。
それが如実に現れたのが2019年2月27日、衆議院予算委員会でのこと。2018年に成立した洋上風力発電利用促進法についての質問に立った。
(秋本氏)洋上風力の新法が成立をしました。(中略)。特に国内を見渡したときに、北海道、そして青森、秋田というのは風況が非常によくて、ここについては、系統を引っ張るときでも、国の方でほかの地域とは差をつけてお金半分出すよというような事業をやっているぐらい非常に有望地なわけであります。
そうした中で、北海道、青森、秋田、三県ですけれども、この中で、青森県について心配な事象を私自身が把握をしたので、ちょっと確認をしたいというふうに思います。
追加で通告をして、防衛省さんには後から委員部に登録をして急遽来ていただいたわけですけれども、それで防衛省さんにも確認をした資料がありまして、私の手元にもありますが、青森県の中で、防衛省が、ここの海域についてはいろいろ国防上問題があるので防衛省とちゃんとここは相談してよね、洋上風力をやるんだったら防衛省にもちゃんとここは特に確認してよねというようなことで、防衛省作成資料といって、地域に色をつけてある資料が私の手元にあります。そして、右の下には防衛省作成資料というクレジットが入っていますが、この資料は防衛省が作成したものですか。
これに対して資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長(当時)の松山泰浩参考人はこう答弁した。
御指摘の資料につきましては、環境省が実施をしております青森県における洋上風力発電に係るゾーニング事業に関する関係機関等との合意形成の一環といたしまして、防衛省・自衛隊から青森県に対し、部内で調整中であることを前提として提供した情報をもとに、青森県において作成した資料であるというように承知をしております。なお、ゾーニング対象エリアにおける防衛関連施設による影響の範囲等につきましては、引き続き部内で検討を行っているところでございまして、その内容につきまして、現時点で確定的にお答えすることは差し控えをさせていただきます。
国防に限らず環境面でも洋上風力発電のゾーニングは懸念事項である。しかしこの説明を聞いた秋本氏の態度は洋上風力をゴリ押ししたかのようだ。
それは、もちろん国防は大事です。これは何においても大事。だけれども、その支障のない範囲の中であれば、一律全部ここはだめよということではなくて、支障がないのであれば、その範囲の中でも、そこについては経産省や国交省との協議にも防衛省は柔軟に応じていただいて、そして、この法律に基づく洋上風力というものが青森県でもしっかりと私は展開されるべきであろうというふうに思うわけであります。 そういった中で、経産省、エネ庁、そして国交省、そして内閣府、今のところはまだ入っていますけれども、しっかりと強くリーダーシップを発揮して、国でちゃんと調整はするから、とりあえずその調整の結果はどうなるかわからないけれども、少なくとも県のレベルはそんなことを気にしないでしっかり出してこいというふうに私は思うんですけれども、このことについてどう思いますか。
なにしろ青森は北朝鮮からのミサイル発射で最も緊張する地域だ。それを調整してでも洋上風力を促進せよという。「洋上風力というものが青森県でもしっかりと私は展開されるべき」という発言からもしても妙に青森に執着している。「代弁」というより「利益誘導」に近い発言だ。
ここで冒頭の人脈が絡む。秋本氏への資金提供で贈賄容疑がかかる日本風力開発HPの「開発実績」によると2022年以降、青森県での風力発電が増加している。そのうち今年4月に運行が開始された「横浜町風力発電所」(上北郡横浜町、最大55,900kW)の事業者は「コスモエコパワー(株)」だ。先述した通り同社の専務取締役は眞鍋修一氏。
秋本氏の政治資金収支報告書に戻ると、2017年から2021年までの間、眞鍋氏から年12万円の政治献金を受けていた。同氏は一般社団法人日本風力発電協会理事を務めた人物。そして同協会の代表理事というのが件の日本風力開発副会長・加藤仁氏だ。
洋上風力を推進する業界団体幹部の所属企業に贈賄容疑の疑いがかかる。そしてその資金提供を受けた秋本氏が青森での洋上風力を推進し、なおかつ秋本氏に政治献金した人物の企業が青森で風力発電事業を行うという構図。
癒着、利権という言葉以外に適切な表現が見つからない。
そして再エネという分野は非常に密な人間関係で進められていることがよく分かるだろう。
秋本氏を支えた脱原発
以下のようなエネルギー分野の団体出身者の人脈、そして秋本氏は脱原発活動家とも交流があった。
特に2014年、秋本氏が福井県敦賀市で原発廃止を訴えることを理由に地元タクシーに配車拒否を受けたことも報じられた。この一件で脱原発団体からも高く評価。原発以外の政策では到底、秋本氏と相容れない団体まで秋本氏を講演会などに呼んだ。
NO NUKES PLAZA たんぽぽ舎(東京都千代田区三崎町)のイベント、発行物にも秋本氏の名が出てくる。普段は反自民を鮮明にする団体だ。逆にいえばそれだけ脱原発界隈が秋本氏を信頼していたということになる。
また2014年に「子どもたちを放射能から守る活動ネットワーク」が秋本氏と河野太郎氏(現デジタル大臣)の講演会が企画された。会自体は河野氏の都合で中止になった。
加えて再生エネルギーを推進する「パワーシフトキャンペーン」という取り組みをご存じだろうか。全国の脱原発団体が参加して自然エネルギー普及を呼びかける活動だ。
2016年、衆議院第一会館で開催されたシンポジウム「電力小売り自由化から半年、改めて自然エネルギーを選ぶために」で共催が秋本氏。賛同団体も本来は立憲民主党、共産党といった野党に近い。再エネ推進・脱原発という主張で自民党議員ながら秋本氏は特殊な立ち位置にあったことがお分かり頂けるだろう。
こうした活動家たちにも猛省を促したいものだ。原発利権と声高に叫ぶが再エネに関わる政財界の癒着をどう考えるのか。しかも秋本氏の場合、明らかに業界団体への利益誘導のような質問を繰り返してきた。もちろん原子力発電所にも膨大な利権があるのは承知しているが、発電量という点では太陽光や風力は到底及ばない。むしろ再エネの場合、発電よりも「投資対象」の要素が強まった。
環境への影響という点でも太陽光パネルの設置で多くの山林が乱開発され、風力発電も騒音被害がある。再エネ推進派はこうした問題点に向き合おうとしない。
それでも「脱原発」を唱えれば再エネの利権構造も浄化される、という考え方ならばもはや返す言葉もない。
特捜が動いた以上、秋本氏と関係企業の身辺に新しい動きがあるはずだ。その時にどんな闇が暴かれるのか。太陽光、風力発電をクリーンエネルギーとして喧伝してきた人々、脱原発という一点で秋本氏を支持した脱原発活動家たちは何を思うか。
もう呆れて物も言えませんね。
引っ張れば芋の蔓はどこまで続く果てしなく?
土石流闇雲だ。金金利権。
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