昨年の土石流発災からもうすぐ一年。原因の検証は途上―――どころか行政側の本気度、誠意を疑いたくなる事態が起きていた。本来は原因究明の資料になるはずの「逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会報告書」。この作成過程の中で熱海市から県に対して市の安全対策に関する記述を削除するよう要望があった。またA社こと旧新幹線ビルディングについて「悪質な」という文言を加えるよう県に依頼しており行政ぐるみの“印象操作 ”が行われた可能性が出てきた。まさに役人根性としか…。
見えない力が 動き出した
なんとしても責任逃れしたい、市の本音がありありと伺える。
土石流の発生起点付近の造成地、現所有者・麦島善光氏の元代理人の証言からも感じとった。
「市側の代理人(顧問弁護士)が聞き取り調査で訪問してきましたが、まるで私が犯人のような物言いでした」
と元代理人氏は憤る。同氏は健康状態が芳しくなく百条委員会の参考人も車椅子だった。それでも聞き取りに応じたのは原因究明に貢献したいという思いだが、市側の態度は「不誠実」としか思えない。
「不誠実」というよりもむしろ「陰湿」という表現が相応しいだろうか。それが先の報告書の一件である。天野氏側の関係者はこう憤る。
「いくらなんでも役所が民間企業に対して“悪質呼ばわり ”はないだろう!」
確かに怒る理由はよく分かる。5月13日、静岡県庁で開催された「第4回逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会」。弁護士、専門家らが委員を務め、行政側からは難波喬司副知事、熱海市・金井慎一郎副市長が出席した。
その配布資料によれば
土地改変行為を繰り返したA社について「悪質な」との語句を付け加えた。これは、熱海市から今回(土石流災害の発生)の責任はA社にあることを強調してもらいたいとの要望があったため。
念のためだがA社とは旧新幹線ビルディング、天野二三男氏。当サイトも同氏の過去については様々な指摘をしてきた。それは適正な開発行為ではなかったのは過去記事通り。しかし土石流の原因究明を行う上で、天野氏を「悪質な」と強調する意味は何か? それは紛れもなく同氏に責任転嫁する目的だろう。
指導不足を削除して! さすがに県は突っぱねたが
旧新幹線ビルディングを「悪質な」と評したのはまだ心情的に理解できなくもない。確かに長年の指導に応じないで土採取等規制条例の再申請を繰り返し盛り土を続けてきた。また土地の所有権が移転後も天野氏関係企業が土砂搬入を行っており、市職員も把握していた可能性が強まった。悪質と言われるだけの要素は確かにある。とは言え公平性を欠く要望であるのも否定できない。ならばなぜ適正でより強い指導を行わなかったのか?
しかも同配布資料にはこんな記述もある。
県土採取等規制条例の検証中の「開発行為等中断後の現場の放置」の38ページの記述について、「少なくとも中断状態において、(中略)、必要な安全対策を講じるよう指導していれば、土石流被害を軽減できた可能性があったと思われる。」の部分を削除するよう熱海市から要望があったが、委員の意見であるので削除しないこととした。
盛り土の危険性をめぐっては施工業者らが県東部健康福祉センターや熱海市役所に安全対策をするよう再三、申し入れをしてきた。この件については百条委員会の証言でも明らかになっている。ところが当時、行政側の説明は
「現所有者が行う」
というものだった。
行政側の指導不足にはこういう背景がある。施工業者らは天野氏と対立し、天野氏を追い落とす策を講じた。そこで浮上したのが伊豆山開発だ。違法な盛り土を告発して天野氏を行政指導、あるいは摘発してもらおうという狙いである。しかし行政側としては「同和系列」と議会でも答弁され一筋縄にいかない人物がやっと伊豆山から手を引いた以上、もう関わりたくなかった。
仮に施工業者らの意見を受け入れれば再び、天野氏と接触せざるを得ない。
「開発行為等中断後の現場の放置」という削除要望は全くの見当違いで、要するに“ そのまま”である。
いずれにしても行政側の要望としては不適切で、なおかつ市の責任逃れとしか思えない。
関係者によれば
「一連の要望をまとめたのは金井慎一郎副市長」
という。そこで同副市長に質問状を送ってみた。熱海市役所秘書広報課によれば「議会対応などで回答はもう少し時間がかかります」という説明だ。
一体、どのような意図があったのかまずは回答を待つとしよう。
質問状おくられたんですね!
はい。来月3日を照準に大きな特集記事がやれたらと思います
質問状への回答はないのですか。
同和案件から遠くなっても、熱海市の行政の闇を追っていただきたいです。
テレビも見ました
これは部落案件と言うより
行政案件(公務員問題)でしょうね。
土石流の原因を調査している静岡・熱海市議会の百条委員会は8月26日に、追加で熱海市長ら8人の参考人招致を行う