この閉塞感はいつまで続くのでしょう…。新型コロナウイルスの影響で暗い話題ばかりです。増加していく感染者、疑心暗鬼に陥る人々、買い占め、殺伐とした世相はまさに国難です。こんな状況ですが、ツイッター上でクスっと笑える漫画作品を見つけたので紹介しましょう。ノンフィクション漫画を得意にする富田安紀子さんの『天下の朝〇と共〇』です。多くの人にリツイートされ注目されています。今回はこの漫画を通じて政治集会とは何か? また新聞業界が抱える問題を調べてみました。(*今回はですます調なのは「調べてみました」系ブログを真似してお遊びムードを演出してみました)
こんなストーリーです。2月25日に文京シビックホールで開催された「令和の大演説会」(主催:展転社)でのこと。同会では稲田朋美元防衛相、松川るい参議院議員の講演会がありました。そこに朝日新聞、共同通信の記者が取材目的でやってきました。しかしいずれも会費2千円が払いたくないと受付でゴネた挙句、そのまま帰ってしまいました。そして次にやってきたのは毎日新聞記者。部数減が深刻で経営状態も芳しくないのは有名な話。ところが意外にも毎日記者はあっさり2千円を払ったのでむしろ周囲が喝采してしまう。毎日新聞の記者にしてみればなぜ自分が称賛されているのか分からず会場に入っていく――そんな話です。
著者も似たような場面に出くわしたことがあります。そういうわけで妙に感心してしまいました。朝日新聞と共同通信はエリート意識も高い上、高額給料の会社です。それなのに彼らは2千円を“ ケチった”のです。4ページなのでさっと読めます。とりあえずご一読頂き以下に進んで頂きたい!
参加費、会場、政治集会はどんなもの?
講演会は保守系出版社の展転社が主催し、講師はいずれも自民党の稲田朋美元防衛相、松川るい参議院議員。保守の支持層に人気がある政治家です。しかし通常、「政治集会」というと左派団体、労働組合、人権団体などが開催するものが圧倒的に多いです。いずれも専従職員がいる団体なので平日に活動できるスタッフがいることからこのような差が生じます。
例えば労働運動の機関誌・情報サイト「レイバーネット日本 」のイベントカレンダーを見ても現状はコロナウイルスの影響で中止が相次いでいますが、普段はこの倍のイベント・各種集会、デモ行動が開催されています。
左派が開催する集会には大手メディアの記者も目立ち、NHK、TBSと書かれた腕章をつけた記者、カメラクルーもきます。特に女性の権利、昨今のmetooといった話題のテーマには大勢のメディアが来ていました。
ではどんな場所で開催されるでしょう。都内の場合はこうです。漫画は後楽園駅前の「文京シビックホール」(東京都文京区)が舞台。同ホールもよく利用されますが、むしろ市民活動の殿堂というべき施設は近くの「文京区民センター」です。よく間違える人がいるもの「市民運動あるある」といったところ。
また衆議院・参議院議員会館も有力な集会施設です。しかしこの場合、施設は議員しか予約できません。国会議員との交流・パイプがあれば利用できます。他の施設と異なるのは手荷物チェックを受ける場合があり入館が面倒なこともあります。
あるいは「 なかの ZERO(もみじ山文化センター)」(中野区)、「渋谷区勤労福祉会館 」この辺りは有力どころでしょうか。屋内施設ではありませんが、日比谷野外音楽堂(日比谷野音)も重要な施設です。最大収容人数は3114人で席が埋まると壮観です。日比谷野音は通常、一般的な市民団体ではなく部落解放同盟、朝鮮総連、民団、各種セクトなどのように活動家を動員できる団体が利用しています。印象的なのは民団の集会の場合、演説中の私語も目立ち、終了後は弁当の食べ残し、お菓子の袋などゴミだらけ。逆に朝鮮総連傘下団体の集会の場合、会場は整然とし聴衆は子供から高齢者まで緊張感があり清掃もバッチリ。
では参加費はいくらでしょうか。保守系団体の場合、漫画にもある通り2千円という価格が多い印象です。逆に市民団体、左派団体、労組などの集会は無料の場合も目立ちます。最近では但し書きに「ワーキングプア、低所得者は半額」などと書かれることも。自らワーキングプアと申告するのも苦しいものがあります。
これまで著者が参加したものだと部落解放同盟が主催する解放研究集会で2日間で4千円。他団体と比較すると強気の価格ですが、役所や企業は必ずチケットを購入してくれますから、仮にこれが1万円であっても成立するでしょう。
あるいは環境団体、例えばエコロジストのきくちゆみ氏が開催した「9.11真相究明講演会」は3千円。30~40代の主婦が多いのが印象的でした。あとは講師の著書付きで1500円、会費無料で任意のカンパなど様々。個人的には「500円」という数字が一番印象に残っています。受付には「一般」「メディア」という案内があり、メディアの場合は名刺を入れる箱が用意されています。すると後日、名刺のメールアドレスなどに次回の活動案内、あるいは機関誌が郵送されてきます。
さて記者と団体との関係です。この両者の距離感を探る上で一つの参考になるのが「死刑廃止集会」でした。死刑廃止と言えば「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム’90」が最もメジャーな団体です。死刑が執行されるとなんとその当日に抗議集会が開催されます。 光市母子殺害事件の加害者少年弁護でも知られる安田好弘弁護士がフォーラムの中心人物ですが、ある時の集会で安田弁護士はこんな風に切り出しました。
「死刑執行されると知り合いの朝日新聞の記者から連絡があった。他の新聞社からもあったが、すでに仲間から情報提供があって知っていた」
仲間とは死刑囚がいる東京拘置所を監視する活動家のこと。拘置所の警備員が増えるなどの様子で死刑執行を察知するのです。あるいは拘置所の“中の人 ”から情報提供があるという噂もありますが…。
ともかく業務上で知り得た情報を市民団体に流すというやり方が果たして正しいのか否かは分かりません。確実に言えることはこうした記者たちは「活動家の側にいる」という意識が強いのです。例えば連合(日本労働組合総連合会)の集会でいきなり労働組合の意義について演説を始める時事通信の女性記者もいました。一部の記者かもしれませんが左派団体、労組、人権団体の「側」にいることがメディアの使命と考えている人もいるようです。
さて以上のような政治集会の特性を踏まえて「大手メディア記者が2千円をケチった問題」を分析してみます。
減る取材費…手当の範囲に収めたい!
もちろんお金は大切です。たとえ100円でもお金は無駄にできません。しかしこれを取材費用と考えた場合、それほど高額なのか?という気もします。確かにメディアは無料という集会もあります。フリーランスですら無料という場合もありますから大手記者が入場料免除というのは珍しいことではありません。こうした環境に慣れているから2千円に抵抗を感じたのかもしれませんね。
ただ今回は稲田朋美、松川るいという政治家が取材対象です。朝日も共同も明らかに失言狙い、揚げ足取りで来場したのは火を見るよりも明らか。好意的に報じませんよ、でもお金も払いたくありません、というのはあまりにムシが良すぎるというものです。あるいは朝日と共同の記者が単純にケチだったという可能性もありますが、私は他に理由があると思います。
つまり2千円を払うということは「保守側、右翼側を利してしまう」というとてつもなく狭い了見があったと睨んでいます。「いやいやそこまでは考えすぎ・・」という声があるかもしれませんが、著者も2004年頃から本格的に市民運動ウォッチをしてきました。この手の記者の思考パターンはよく分かるのです。
加えてこんな背景も見逃せない! 同業他社の記者はこう解説します。
「共同はともかくとして朝日の取材費は手当として支給されています。つまり取材費用は手当の範囲で収めたいのですよ。でないと出た分は自腹というわけでしょ。漫画を見ると毎日新聞はちゃんと払っていますね。朝日新聞は一般記者も参加する社内集会で“このままでは我々も毎日新聞のように貧乏になる ”と意見する社員もいるのに(笑)」
天下の朝日と言えどもメディア不振のこのご時世、取材費も潤沢ではなく記者たちの懐事情も見逃せません。天下の朝日新聞や共同通信と言えども彼らも一介のサラリーマンという点に悲哀も感じます。こうした背景が大手メディアの横並び、画一的な報道につながっているのかもしれません。
ところで朝日の事情は分かりました。が、名刺まで返せといった共同の記者の小物感がなんとも・・・いやこれぐらいにしておきましょう。
虚偽を吐き続ける新聞社・通信社は近い将来淘汰されてゆくことを願います。
朝日新聞の場合、ケータリング企業みたいなのと業務提携とか
いろいろ模索しているけど、記者あがりの人たちに
良いアイデアは出せるでしょうかね。