【特集・香港デモ】現地ニュース速報

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By Jun mishina

混迷する香港情勢。学生を主体とするデモ隊と警察の対立が続くが、このところデモ隊参加者への物理的な攻撃、傷害事件が発生している。今月1日に警官の発砲によって高校生が重体になったニュースは日本でも大きく報じられた。かつての天安門事件ほどではないにせよ、香港の若者たちは危険な状況に置かれている。そんな香港の日常をお伝えしていく。

尖沙咀ちむさーじょいで20日、大規模デモが計画され「絶対に10/20に尖沙咀で会おう!」「デモ決行だ!」と若者たちが呼びかけあっていた。こんな風に気勢をあげる中、デモ隊参加者や民主活動家に対する暴行事件が相次いだという。

香港民主化運動の名うての活動家、岑子杰じみーしゃむが旺角(香港の繁華街)の会議に行く途中で4~5人の暴漢に襲撃される事件が発生した。事件の反響は大きく檄文に掲載されたほど。事件を逆手に取ろうというのか。大規模デモ成功に向けて、若者たちを鼓舞している。

岑子杰の痛ましい姿。檄文に掲載されデモ隊を鼓舞している。

一方、大陸側の反応は異なる。

2019年10月20日付で、大陸側の「北京日報」「環球網」「深圳衛視」の3メディアは襲撃事件は「勇武派の自作自演」といった論調のニュースを掲載している。曰く「事件発生後の民主化団体からの余りにも早い報道」「現場での被害者の体勢がぎこちない」「事件後の回復が余りにも早い」といった理由が挙げられ、岑子杰襲撃事件を「耳目を集め、デモを成功に導くための

悲劇の主人公
を狙った自作自演に過ぎない」と結論付けている。

大陸からやってきたと思われる犯人。手には刃物が。

トラブルは他でも起きていた。香港の独立メディア『立場新聞』は19日、大埔だいほー区 でビラをまいていた19歳の若者が刃物で襲撃され腸が見えるほどの傷を負ったと報じた。(この模様はアイキャッチ画像を参照)。逮捕された犯人は22歳の男性で大陸側の身分証を所持していたという。また犯人は「香港は中国だ」「こいつらは香港を乱している」などと訴えており、香港デモ隊に対して強い敵意を持っていたようだ。事件直後の犯人の写真も公開されたが、刃渡りの長い刃物を持っており、映像だけでも強い殺意が伝わってくる。改めて香港人と大陸との激しい摩擦が浮き彫りになった。

習近平国家主席の顔写真を踏ませる活動が…。強い憎悪を感じる。

また学生が香港郊外の上水で警官を刺したという事件も起きた。もちろんこれ自体は決して褒められる行為ではないが、問題はその後日談。調書には被害にあった警察官の氏名と職務階級にXと代筆されており、警官の素性が謎のまま。このため大陸側の警官が紛れ込んでいたのではないかとの推測が飛び交っている。

警察の暗殺? それとも陰謀論?

日本国内でも事件が起きると、往々にして真偽不明の情報が飛び交うものだ。このところインターネット上で香港警察がデモ隊活動家を自殺に見せかけ暗殺しているという情報が飛び交っている。面白いことにSNSを見ると、日本でも政治好きなネットユーザーが警察暗殺説を支持しているようだ。

前回に続いて香港事情に詳しいX氏に自殺説を解説してもらった。

「香港デモ隊と同じ黒衣黒ズボン黒靴の女性と見られる溺死体が、沿海で本日夕方発見されたとの映像があります。ここ数ヶ月の抗議活動で多くの若者の自殺がレポートされていますが『腐敗警察が自殺に見せかけて、デモ参加者の若者を暗殺している』との噂を香港市民が信じている様子です」

黒い衣類の遺体を引き上げる様子。

ここにきて警察も強行な対応が目立つが、さすがに「暗殺説」はどうなのか。X氏の解説はこうだ。

「今年6月~7月の2か月間、香港大学の調査機関による調査では、抑うつ傾向にある香港市民が9.1%も存在するということです。先の見えない民主化デモで、無力感や絶望感を募らせた若者が、ウェルテル効果(大々的な自殺報道に影響された後追い自殺)で自殺した可能性もあるとは思います。 ただ、香港の多くの一般市民は、彼ら前途ある青少年が警察に暗殺されたと固く信じています」

一説には香港経済の不況で若者たちにも不満が蔓延しており、それがデモ長期化につながったとの指摘もある。もちろん学生らへの弾圧に対しては国際社会も厳しく目を向けるべきだが一方、経済的背景も考慮しなければ香港問題の核心部分は見えないかもしれない。

林行政長官に対しても強い反発

国が変われど同じ人間。政治家を皮肉るネタ投稿やジョークが生まれるのも世界共通の現象だ。殺伐とした香港だが、それでも庶民たちには生活もあり娯楽もある。そんな香港人の間でウケているネタ画像を紹介しよう。

右が林行政長官。左が陳財務長官。日本の市民団体がやるよりもエスプリが効いてる!

林鄭(行政長官)と陳茂波(財務長官)がヘリコプターに乗って香港を視察していた。

陳茂波:もし私がここで2000香港ドル落とせば、それを拾った一人がハッピーになれる。

林鄭:もし私がここで30枚の100香港ドルを落とせば、30人がハッピーになれる。

パイロット:ここでお前ら落とせば700万人が幸せになるよ!

とオチがついたところで 林鄭行政官に関する話題をもう一つ。香港大学卒業生議会が林鄭行政長官に対して「校監」から辞任するようにとの要求があった。興味深い話なのでこれも紹介しておこう。

学位を受ける林行政官。

香港大学は香港最古の名門大学だ。どうやらそのOB会の話のようなのだが、ここはX氏の説明を聞いてみよう。

「校監というのは香港の大学にある制度のようで、行政長官は各大学の経営会議(日本で理事会に相当)に参加し、強大な権力を持つようです」

政治機構のトップが大学の運営に参画するという珍しい制度だ。そこで林長官がノーを突き付けられた意味は何か? 民主化闘争デモは香港大学の学生も大きく貢献している。そこでOB会としても林氏ではなくて学生側に味方しようと、そういうメッセージと見られる。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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