車で走っているときなど、山の上に家があるような風景はよく見かける。ただ、大抵の場合は遠くから見ると険しい場所にあるように見えるが、近づいてみると案外緩やかな斜面だったり、山というよりは台地だったということがある。
しかし、横須賀の場合はガチだ。本当に山の上や急斜面に家がある。
昔筆者が関東に引っ越しを検討していたとき、安さに釣られて横須賀の借家を見に行ったことがある。急斜面の上にあり、さらに門から玄関まで3階分の高さの階段を登らないといけないような物件だった。結局、住むのは断念したが、そのような経験があったことから、横須賀では凄まじい場所に家があるということは知っていた。
崖の上や急斜面に家があることは三浦半島全体で珍しくはないが、その中でも際立っていると言われているのが、JR横須賀駅の南側の一帯だ。ここは部落というわけではないのだが、なぜか「5ちゃんねる」の人権板で度々話題になっており、その特異な風景はペルーの山奥の尾根の上にあるインカ帝国の遺跡になぞらえて、「マチュピチュ」と形容される。
ということで、マチュピチュをこの目で見るために、現地にやってきた。探訪はこの逸見駅から開始する。人権板によれば、東逸見町3丁目にその1つがあるらしい。マチュピチュと言うからには尾根の上に集落があり、さらに畑があり、しかも廃墟になっていればそれらしいだろう。
東逸見町3丁目と言えば逸見駅から南方向に500メートルほど歩いたところである。現地に行くと、急傾斜地崩壊危険区域の看板がある。
グーグルアースで見ると、3丁目の中央部の山の上に畑のようなものが見える。ここのことだろうか?
現地を目指して急斜面を登っていくと、これぞ横須賀という風景が見える。普通住宅地と言えば、家の前に車が停まっているか、ところどころに駐車場があるものだが、そもそもここに自動車で入っていくことは不可能だ。それどころか、原付きや自転車もちょっと無理だろう。
問題の場所にやってきたが、ただ畑があるだけだった。畑がやや窪地になっているため、周囲の見通しがあまりよくなく、これはどう考えてもハズレだ。農作業をしている住民に聞いたところ、この辺りに廃集落のようなところはなく、ここも昔から畑だったという。
いくつか柵で塞がれた階段があり、こういう所を無視して進めばマチュピチュにたどり着けるのかも知れないが、それは危険だし、不審者扱いされたら嫌なので断念せざるを得なかった。
東逸見町3丁目にはこのような場所もあるが、これは違う気がする。
仕方ないので、人権板で話題になっていたもう1つのポイントがあるという汐入町5丁目を目指すことにした。
汐入町5丁目はグーグルマップで見るだけでもその凄さがわかる。細い階段が迷路のように入り組んでいる。
逸見駅から汐入町5丁目に行くには、駅の北側のこの道から行くのが近道だ。
この階段の先に東逸見町から汐入町に抜ける峠がある。
峠の途中から駅を見下ろす。
峠の上にも家があり、都市の生活道路とは思えない風景。しかし、普通の写真ではなかなか迫力が伝わらない。そこで、360°パノラマカメラでの撮影を決行した。ドローンの使用も考えたが、住宅地のため大型のドローンは航空法に引っかかってしまい、海が近く風が強いので小型のドローンを飛ばすのは無謀だ。
逸見駅から汐入町に抜ける峠にある分岐から、「汐入町シェアハウス海と風」の近くを通って谷底へと降りる模様を撮影したのがこの映像である。
もちろん、この辺りも急傾斜地である。
噂通り谷には廃墟があり、空中に浮くかのように建てられたお寺がある。
谷を進むと踏切があり…
さきほどの空中に浮くお寺は長光寺だ。
さらに進むと商店街があり、汐入駅に抜ける。一応歩いて行ける距離ではあるが、上り下りが激しいので体力を使う。しかし、これはまだ汐入町5丁目のごく一部に過ぎない。
さきほどの踏切方向に引き返し、踏切前の角を左に曲がると、谷の奥に進む道がある。
古い家と新しい家が入り混じってるこの谷間…人権板に「牛殺し谷戸」という地名が何度が登場していたのを思い出した。もうしかするとここがそうだろうか?
通りがかりの老人に声をかけられたので、「牛殺し谷戸という場所を探してるんですが」と聞いてみると「ここのことだよ」と言われた。80年ここに住んでいるというこの老人によれば、牛殺し谷戸という地名の由来はよく分からないという。過去に屠場があったという話があるものの、どこのことだか分からないし、おそらく江戸時代くらいまで遡る地名だろうとのことだ。
ついでに、どこか景色がよい場所はないか聞いてみると、おすすめの場所を教えてくれた。老人によれば「ベースが見える」という。横須賀でベースと言えば、米海軍基地のことだ。
「大昔はフェンスで囲ってあって入れなかったけど、今はベースの中が全部見渡せるよ」
地元住民おすすめの場所と言うのであれば、行かない手はないだろう。老人によれば、踏切を渡って「センチュリーハイツ」の方向に行けばよいとのことだが、ここはあえて峠越えの道を選んだ。牛殺し谷戸から北方向へ抜ける道をパノラマ撮影したのが次の映像である。
ちなみに、地図にない道も多い。例えば汐入町5丁目には2つの送電塔があるが、実はこの鉄塔がある尾根沿いに舗装された細い道がある。おそらく、この道を使って尾根伝いに汐入町5丁目から東逸見町2丁目に抜けられるはずだ。さらに、地元住民の抜け道と思われる、尾根から谷あるいは山腹沿いに住宅地に降りる道が無数にある。
そう言えば、
浦賀一丁目の「急傾斜地崩壊危険区域」の看板も
撮影しておいた方が良いんじゃないかと思いますよ。
新幹線で横浜辺りを通ると、丘の上に住宅地が建っていたりと、
神奈川って神戸と似て凹凸な地形が多いイメージですね。
それはそうと測量関係の仕事をしているのでこういったところはよく入ります。
大阪の河内長野のほうにも結構ありますが、被差別部落などではなく、
昔からの住人が住んでるだけですが
神奈川の東部は多摩丘陵があるので、起伏が激しいです。
測量関係のお仕事なのですね。もし、他にも珍しい場所があればぜひ教えてくださいませ。
横須賀在住の土着民です。
京急線YRPのび駅のホームからも見える高台の住宅もマチュピチュ感を醸し出しています。最初にこの空中一戸建てを見たときは、見ているだけのはずなのに転げ落ちそうな感覚を覚えました。一見の価値ありです。
ストリートビューで確認しました。
ヒルタ獣医科の向かいにある不思議な家のことでしょうか?