各地で怪しい投資話のトラブルが後を絶たない。中でも和牛預託商法をめぐっては90年代から事件化してきたがここ最近、大阪・和歌山などで和牛投資トラブルが発生。損害を受けた中には世界3階級制覇王者の元プロボクサー・亀田興毅氏の名も挙がっている。そして投資話の勧誘に和歌山県・片桐章浩県議も関与したというのだ。(写真中央は片桐県議、右は大久保貴嗣氏)
和歌山市長選出馬が囁かれる県議

「片桐さんこんにちは今までお世話になった人や支援者を騙して逃げて人間として恥ずかしくないですか?」
和歌山市内の実業家X氏がショートメールやLINEで問いかけた。相手は和歌山県・片桐章浩県議(和歌山市選挙区)。かつての片桐氏は積極的にX氏にアプローチしてきたが、牛肉投資トラブルの発覚以降は連絡を絶っている。さらに現地ではX氏以外でも片桐氏に対して不審感を抱く人は少なくない。
「(中国の)海南島の投資話を勧められた」「支援者会合だと思ったら仮想通貨の話になった」
このような証言が寄せられた。県議という立場で怪しげな投資話に関わっているというのだ。
片桐氏は関西電力出身。関電労組の組織候補である。県議会での会派は民主系「改新クラブ」に所属で幹事長を務める。当サイトで片桐氏の名を挙げるのは初めてではない。夏の参院選で望月良男氏(現参院議員)が二階俊博氏の後継者である伸康氏を下した。片桐氏は自民系の望月氏の選対に加わり広報関係を担当。和歌山市長選への出馬を検討しており、望月陣営についたと囁かれた。
この通り、至ってごく普通の地方議員の片桐氏に今、疑問と怒りの声が寄せられている。片桐氏が関わった牛肉投資詐欺とは?
紀陽銀行の不正融資事件の残党たち

もとは2001年、紀陽銀行の不正融資事件まで遡る。実は事件の当事者だった行員は自民党・門博文元衆院議員と親しい地元市議だった。不正融資にはN氏なる人物も関与。N氏は服役後、京都・大阪の弁護士事務所で「事務局長」として勤務した。
さて2022年、X氏が業務上の相談のため、弁護士事務所を探していたところ、交流があった片桐氏からN氏を紹介されたという。N氏は自身が勤務する弁護士事務所を勧めた。すると話は怪しげな方向に向かう。
X氏は格闘技イベントを開催していることからスポンサー企業を探していたところN氏らから「良い人がいる」と持ちかけられた。それが大阪の焼肉の名店「一斗」の経営者、大久保貴嗣氏。大久保氏の名はSNS上でも一部で話題になっており、元プロボクサー・亀田興毅氏も被害にあったというのだ。
X氏はN氏、片桐氏、そして大久保氏と会合の場を持った。大久保氏は「一億円の牛を買いませんか」と切り出した。片桐氏、N氏らも「これは良い話ですよ」「私もやりますから」と煽ってきたという。X氏も胡散臭いと思いつつ、大久保氏がイベントのスポンサーにもなるということから当初、N氏に1500万円を渡した上で、総額5000万円を投資した。
ところがこの投資話は詐欺同然だったのだ。つまり実業家、経営者らに話を持ちかけ多額の預かり金を受け取る。そこから別の投資家たちに僅かな配当金を渡しながらその場を凌いでいく。自転車操業であり、和牛預託商法の典型的な手口と言えよう。
X氏の場合、大久保氏との会談の場に片桐県議や弁護士事務所職員も同席していたため信用度を増したわけだ。その点においてもより悪質ではないか。
結局、2023年8月頃にX氏は牛肉の投資話が詐欺だったことを知った。大久保氏、N氏はもちろんだが公職の立場にある片桐氏に対しても怒り心頭だ。もちろん説明を求めた。ところが片桐氏は連絡を絶ってしまう。ショートメール、LINEも応じる気配がない。そこで片桐氏の事務所に出向いて面談を求めた。ところが応対したスタッフは「不在」と繰り返すだけ。
そして昨年5月、片桐氏はX氏の事務所へ謝罪に訪れた。そのやり取りについては後日、詳細を報じる予定だが、ともかくX氏の質問に対して片桐氏は曖昧な返答を繰り返すだけのみだ。
今年7月に再びX氏は片桐氏事務所を訪問したところ逆に警察へ通報。X氏は片桐氏が通報することを想定した上で関係書類を全て警察に提示して説明したという。
当初、筆者の元に情報がもたらされた時は「和歌山県議が恫喝されている」という趣旨であったが、残された音声、LINEなどをみても明らかに片桐氏に非があり、また説明責任がある。
片桐氏を直撃した。
ー先生が牛肉投資に関与していると市民の方から告発がありましたが。
私も被害者なので困っています。
ー被害者? 2024年5月にX氏という方に投資について謝罪に出向かれていますが。
それは長らく連絡していなかったことを謝罪しただけです。(X氏が)直接、事務所に来たことは被害届を出しています。
X氏とのやり取りを聞いてみても明らかに投資について弁解している様子だったが、片桐氏はあくまで「連絡しなかったこと」を詫びたという認識だ。
ーなぜ大久保氏、N氏という人物と繋がったのですが。普通、県議さんが交流する筋の人ではないと思いますが?
弁護士の紹介だったので。それに(大久保氏と)会ったと言っても一度だけです。また連絡します。
以降、片桐氏が応じることはなかった。もちろんこの説明は全く十分ではない。そもそも片桐氏はX氏が事務所を訪問したことを「怖い」と周囲に吹聴してきたが、このことについてもX氏に謝罪している。
そこで「片桐氏が提出した被害届は和歌山東警察署か西警察署だったのか」「大久保氏らと同席したのは一度だけという説明だが、複数枚の記念撮影があるのはなぜか」、また「海南島投資、仮想通貨投資を勧めたことについて他の市民からも疑問の声が寄せられたが説明してほしい」とメール。しかし片桐氏から説明はなかった。
有名焼肉店、著名人も絡む牛肉投資事件。しかも県議、弁護士事務所という社会的に信頼性が高い関係者が関与しているだけにより闇は深い。今後は片桐氏、N氏らとの過去の言動を元にさらに追跡していく。



