学術・研究:部落探訪(154) 福井県高浜町西三松

カテゴリー: 部落探訪 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

関西のみならず全国的なニュースとなった関電役員の金品授受問題。そのキーパーソンである故・森山栄治の地元であり、解放同盟が組織された部落として西三松にしみつまつの名前も知られるようになった。

戦前は50戸の部落で、農業と商業が主産業だったとされる。

まず目に入ったのは「高浜町立三松センター」という隣保館。部落の入り口にあるので、ここを訪れた人は最初にこれを目にすることになる。

「思いやりあふれる町に差別なし」という同和スローガンが。これで同和施設ということは分かる人にはすぐに分かる。

しかし、関電の事件のこともあったし、筆者のことも知られているので、隣保館の職員は警戒モード。同行した三品によれば、数日前は解放同盟の組坂繁之委員長の顔写真が入ったポスターが貼られていたのだが、なくなっていたという。

なぜ同和施設と強調するようなスローガンを掲げるのか職員に聞いてみたが、あれは人権標語を募集したものを掲げたもので、町民は部落とかそういうことは思ってないですよという返事。

住民に聞いてみると、確かに三松センターは事実上は隣保館というよりも公民館のような使い方をされているとのこと。例えば選挙があれば、周辺地域も含めた投票所になっているそうだ。

ここは来迎寺。宗派は大谷派である。『大谷派地方関係寺院及檀徒に関する調査』にこの寺の記載がある。

こちらは西三松区ふれあい会館で、本当の公民館である。無論、同和や人権を思わせる掲示物はない。

部落内は旅館が多く、普通の観光地ならオフシーズンのはずが、どの旅館の人たちも忙しそうにしている。やはり、この辺りの旅館は高浜原発の労働者向けのものということで、あちこちに停められている車も原発労働者関係のものだ。

西三松はちょうど高浜原発の玄関口にあたる。ここから原発へ行く途中にも集落はあるのだが、開けた場所で駅や高速道路のインターチェンジから近いのはここが最後だ。

京阪神方面から来た原発労働者や関電の職員は、隣保館のあのスローガンを見て、ここがどのような場所か察するということになる。

ただ、隣保館を除けば、ここが部落だとか同和地区だとかということを意識させるものはない。旅館も家も立派なものが多く、何より「原発利権」のインパクトが強すぎて、とても差別があるようには見えない。

海岸には海水浴場があり、駐車場、シャワー、トイレもあり、夏には普通に海水浴に来てもいいところだ。

この「えびすさん」は海岸にあった「恵比寿山」を整備のために撤去した時に記念として作られたものだ。

海岸をパノラマ撮影した。

森山元助役のことを住民に聞いてみると、特に旅館関係者は口をつぐむ。まず、森山氏のことを悪く言うことはできないし、あるいは「よく知っているわけではないから無責任なことは言われへん」ということなのだ。住民全体に箝口令が出ているかのようだ。

旅館と無関係な住民からは比較的詳しい話を聞くことが出来た。旅館を営んている住民が大いに原発の恩恵を受けていることは事実で、そうでない住民とは意識の違いがあるようだ。

原発が出来る前の村の様子は、目立った産業と言えば海水浴客による観光くらいしかなかったのだが、部落であるとか特別に貧しい村といった意識はなかったという。農地が少ないため、兼業農家が多く、普通に建設作業に出たり、工場で働いている人が多かったそうだ。過去の航空写真を見ると、この村は明らかに「地方都市スラム」ではなく、比較的土地に余裕のある、農村部落であるように見える。

ここが森山氏の家。大変な豪邸である。しかし、当の森山氏は長らく京都に住んでおり、地元の自治会の会合にも出てこなかったし、あまり地元の人という意識はなかったという。今回の報道で森山氏が何をやっていたのか初めて知ったくらいだという。

解放同盟については、確かに部落の住民には入っている人が多いが、全員ではなく自治会の活動とは別だという。部落差別については、自分は感じたことはないが、「知らないことが差別だ」というようなことを言われたとある住民は語る。

そう考えると、必要ないところにゴリ押しで解放運動や同和行政をやったように感じる。

海水浴場の近くには港もある。ちなみに、部落には漁業権があるが、現在は漁師をやっている人はいないそうだ。

西三松の全景。防波堤で釣りもできる。普通に遊びに来てもいいのではないだろうか。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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学術・研究:部落探訪(154) 福井県高浜町西三松」への8件のフィードバック

  1. 音野

    この事件があったせいで関電の各営業所では飲み会や接待はしばらく自粛するそうです。
    ちなみに関電は大阪同企連に入ってますが、L&Aなどグループ会社は入ってなさそうですね。
    ただ下請けやグループ会社に「今度人権啓発の講習があるから社員を受講させて」といった依頼をすることはあるんですかね。

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      NTTだと下請けでも人権研修があったと聞いたことがありましたが、関電はよく分かりません。

      返信
  2. .

    モニタリング実施し、法務局に削除要請の報告も 〜福井県交渉
    福井
    「解放新聞」(2019.11.11-2930)

     【北陸支局】 福井県連は10月18日午後、福井県交渉を小浜市の若狭図書学習センターでおこない、池田、高橋、安田の各中執、山下敬太郎・福井県連委員長をはじめ、40人が参加した。①「推進法」具体化と市町「条例」②市町の人権教育・啓発③学校の人権教育④教職員の部落問題意識アンケート調査⑤公正採用選考⑥市町の本人通知制度⑦人権意識調査結果の分析と活用、などで話し合った。

     県は、窪田裕行・健康福祉部長、内田一彦・教育庁教育振興監、坂下直樹・地域福祉課長らが出席した。

     ①では、県の「人権条例」は差別の現状に対応できているか、などと指摘し、県は「県内にかかわる事象が起きており注視している」と回答。6月からネットのモニタリングを実施し、10月16日付けで福井地方法務局に差別情報削除を要請した、と報告した。(以下略)

    http://www.bll.gr.jp/info/news2019/news20191111-4.html

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      法務局は森山のエセ同和行為こそ差別事象として対応すべきなのに、どこまでも恥知らずですね。

      返信
  3. 同和地区にはならない非人部落ですが、東三松も回られたらよかったですね。
    非人部落でここほど範囲の判り易い所はなかなか無いですし。
    ♪ろくでなし~ ウィッ、な苗字のところです。

    返信
      1. 『新版 部落史を歩く 非人系部落の研究』

        その解放同盟支部(註:西三松)のある隣に、川1本へだてたところに15戸ほど
        の小さな「非人」部落があって… その部落の名前ー 全戸がひとつの苗字
        なのだがー …
        「非人」部落では他に生業がないから、20年くらい前までは編笠を作って
        いた。部落の後ろはすぐ若狭湾なのだが、漁業権もないのだ。…これに
        対して解放同盟支部のある「エタ」部落の方では草履を作っていた。…

        返信

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