部落探訪(13)滋賀県長浜市桜町(後編)

三品純 By 三品純

旧虎姫町字五の周辺を散策した後、長浜市虎姫支所に行って関連資料でももらおうと思った。以前、この地を取材したとき、長浜市虎姫支所は旧虎姫町役場の庁舎が使用されていた。とてもレトロで味わいがある建物だ。現在の支所は、図書館や福祉施設「生きがいセンター」、文化ホールが統合された公共施設の中に移転している。職員に尋ねてみると長浜市役所本庁舎の住宅課でしか分からないということだった。「虎姫住宅」の名を出してもサバサバした様子だ。なぜこんな思いを抱いたかと言えば前回の虎姫取材があまりに強烈だったからだ。

5年前、取材は虎姫支所で応じてもらった。この時の虎姫支所の職員たちの応対はとても焦燥感に満ちていたもの。なにしろ市議会、メディアからも追及を受けている最中。ピリピリしているのも無理はないだろう。

「延滞に対しては鋭意、回収に努めています」「不正使用には厳正に対応しています」

確かこれ以外の言葉を聞かなかった記憶がある。一刻も早く虎姫住宅の話題が終わらないか、そんな苦々しい心境がありありと伺えた。その帰りがけ庁舎内で巡回している職員がなぜか声をかけてきた。滋賀県警から出向してきた現役の警察官という。この職員は示現舎を知っており、記事も見ていると言っていた。同和がらみ取材で来庁したことももちろん承知していたようだ。聞けば県警から県や市区町村の役所に出向して警備をすることは珍しいことではないらしい。

「ここの職員さんたちは本当によくやっておられるよ」

「ここの人たちは頑張っているよ」

なぜかこう繰り返してくる。何やら「もう余計なことを聞いてやるな」「そっとしとけ」こう念押しされているような気がした。後から聞いた話だが、以前、虎姫町役場では暴力団やえせ同和団体による要求行為が多発していたという。どうもその監視のために警官が派遣されていたらしい。職員たちの動揺もこうした過去のせいかもしれない。また住民の対応も”なんともはや”といった感じ。この時、また貸しをしていた当事者の元助役にも取材を試みたものだ。「ごめんください」と尋ねるとステテコ一丁で出てきたのは、助役本人。高齢者で判断能力も十分ではない様子だった。ステテコの股間の黄ばみが何よりそれを物語っていた。

「解放同盟とはもう関係がない」「また貸しは誤解だ」「よく覚えていない」と答えてくれるものの、とても事実関係を確認できる状態ではなかった。もはやここにいるのは同盟員でもなければ、元町幹部でもないのか。高齢者にあれこれ問うてもこちらも具合が悪い。そこで他地域に転居しているというご子息からもぜひ話を伺いたい旨を伝えて助役宅を後にした。その後、助役のご家族から連絡があったが、「すでに転居しているし、全く分からない」と当惑していた。おそらく同じ立場だったら私もそう答えるしかないだろう。そう思うと気の毒にも思えた。

ところがどっこい相手も狡猾だ。部落解放同盟滋賀県連にもこのまた貸し問題について取材しようと連絡をした時だ。メディア対応の担当で、よくやり取りをしていた幹部が開口一番こう言った。

「虎姫(助役のところ)に行ってくれたそうやな!」

解放同盟とは無関係、もう忘れた、と言いつつどうも助役は県連に連絡していたようだ。素知らぬ顔をしながら意識はしっかり働いていたのか。一杯食わされた気分だったが、むしろ”勉強させてもらった”と感心さえしたものだ。(似たような経験は何度かあるのでまた機会があれば紹介したい)

では、現在、虎姫改良住宅をめぐる諸問題はどうなったのだろう。長浜市役所住宅課は旧虎姫町改良住宅の現在についてこう説明する。

「また貸し問題などの不正使用はもう報告されていません。しかし家賃など延滞金の回収業務は続いています」

やはり今でも問題は続いているようだ。同課で最新のデータとしてもらった「平成26年度債権管理条例(債権管理計画・徴収計画を含む)の運用実績と評価」」によると家賃収入に当たる「市営住宅使用料」2530万円が未回収。またリフォームや改築費用の「住宅改修資金等貸付金」の未回収分が2億2314万9千円で“億越え”だ。住宅使用料の収納率が9・5%、そして貸付金の収納率が3・8%と低調。これが「鋭意、回収に努めている」という結果だろうか。民間の不動産会社、金融業なら一大事に違いない。

延滞に対しては「常駐で回収に当たる専門職員を一名採用し、対応に当たっている」(住宅課)というが、これほど莫大な債権を一名で回収できるものか? 人気漫画『闇金ウシジマくん』や『ナニワ金融道』のスゴ腕回収人ですら、真っ青だろう。「専門職員一人ということではなく、他の職員も連携して回収に当たる」(住宅課)と説明するが、それが出来ていればこのような事態に陥っていない。

とは言え旧虎姫町、長浜市だけに責任を負わせるのも酷かもしれない。そもそも住宅地区改良事業は、国策である。また住宅地区改良法では、今回の家賃や貸付金の延滞問題、改良住宅が老朽化した後の処理が明記されていない。とても”やりっぱなし感”がある法令にも見える。同法を管轄する国交省によれば「事業主体は市町村であるため延滞金などの回収も当然、主体である自治体にお任せしている。また老朽化した場合は、社会資本整備総合交付金を申請して認定されれば古くなった改良住宅を再整備することはできる。決して自治体に丸投げというわけではない。同和事業は国策で始めたといっても事業主体はあくまで自治体。延滞などの問題があっても国が介入するのは”地方分権”という観点でもありえない」という説明だ。

同和事業は面白いもので、市町村が必要ないという方針であっても国や県は「国策」を盾に事業をごり押しした地域もある。ある時は国や県は「中央」の顔をし、ある時は「地方分権」を盾に地方自治体に負担を強いる。どうもこの場合は”地方にお任せ”のようだ。もっとも国交省にとっても”はれ物案件”なのだろう。できれば関わりたくないというのが本音だろうか。

今後も虎姫住宅の処理をめぐっては長浜市の苦労は続くだろう。しかしなにしろそこは「同和」絡みだ。いかに滞納が続こうが「強制執行」などの措置も考えにくい。青き虎姫のグレーな裏事情は、今後もありふれた日常として続いていくことだろう。

部落探訪(13)滋賀県長浜市桜町(後編)」への3件のフィードバック

  1. 猫男爵

    いつも思うが、先にやった者が勝ち。
    しかも、同和という名の魔法の呪文の下で。

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  2. 匿名

    >ステテコの股間の黄ばみが何よりそれを物語っていた。

    きったねー男。こんな奴大嫌い。

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  3. タイニー

    我々の出自が同和地区で世間から白い目に見られるのは我々が悪いわけではない。
    たまたまの偶然で自業自得ではない。
    だからなにやったって構わない、という考え方ですね。

    「オマエだけが大変なわけねーだろ」と言いたいですね。

    返信

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