【参政党研究】 党員の「ジャンボタニシ 農法」大炎上で 見えた 危うい 農本主義信仰

カテゴリー: 政治, 社会, 陰謀論 | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

ボードメンバーの離脱、神谷宗幣代表元秘書の自殺―― トラブル、内紛が続く参政党だが支持者の狂騒は相変わらず。突拍子もない言動はしばしSNSの失笑のタネになるが今、非難轟々なのが稲作でジャンボタニシ農法を喧伝したことだ。田を荒らす危険な外来種を推奨する行為は農法ではなく“環境テロ ”という他ない。

アートテン農法から 今度は ジャンボタニシ農法

寒々しいパフォーマンスに、独自すぎる奇説の開陳、このところ国政・地方を眺めても政界は“電波人間ショー ”と化したようだ。

「日本維新の会にオカルト要素を足すと参政党になる」「れいわ新選組に右にすると参政党になる」

とりわけ参政党の面々は際立つ。コロナ禍ではワクチン接種に関する疑似科学に基づいた独自理論が印象的。また結党以来、農業分野に関する主張は疑似科学というよりもオカルトの領域だ。

筆者もレポートした「アートテン農法」は最たるもの。宇宙から受け取った情報を農産物の栽培に活用するというものだった。

従来から農業分野は一部市民活動家らによる独自情報が横行していたが、参政党の出現でより可視化されている。党員の活動が逐一、SNSに投稿されるからだ。今回のジャンボタニシ騒動もまさにこの構図と合致したものだった。

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は国際自然保護連合(IUCN)が定めた世界の侵略的外来種ワースト100の一つ。水田に被害を与えるのは広く知られたことだ。農水省が作成した「ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の被害防止について」によると、もとは南米原産。1981年に食用目的で台湾から輸入し、各地で養殖していたものが業者の廃業などで放置。その結果、水田や水路で野生化した。

危険性については農水省を始め、各自治体、専門家からも警告が発せられてきた。鳥取県北栄町のYouTube動画をみるとジャンボタニシの被害は一目瞭然だ。

関係機関、専門家でなくともジャンボタニシの農業被害はよく知られた話。ところが「有機農法」「自然農法」の信奉者たちの間でジャンボタニシ農法(除草)を評価する声があった。それが今回の騒動につながる。

きっかけは「#脱サラ農業」「#ジャンボタニシ除草」などのハッシュタグがついた男性が水田にジャンボタニシをまく写真がⅩ上に投稿されたこと。その後、参政党支持者ということが判明。さらに党内でジャンボタニシ農法が賛同、推進されていたことが続々と報告されていく。

念のためジャンボタニシ農法について説明しておこう。ジャンボタニシが水中を好む習性を利用したもので稲が新芽の間は水を0~2cmに保ち、ジャンボタニシの活動を鈍らせる。稲が成長したところで水量を増やすとエサを求めたジャンボタニシが雑草の新芽だけを食べるという方法だ。しかしこの場合、徹底した水位調整が必要となる。

騒動の渦中、ジャンボタニシ農法の危険性を発信した「『誰も農業を知らない』の著者、有坪民雄氏は「この農法は水位を適正に調整することが大前提です。試験田や僅かな耕地ならまだしも耕地面積が広い場合は不可能でしょう。ましてはジャンボタニシが未発生地の田に放飼するなんて絶対にやるべきではありません」と指摘する。

大規模水田にはまず向かないしそもそも侵略的外来種である以上、駆除すべき生物だ。

ジャンボタニシで水田除草、「天敵」逆手に無農薬稲作 難しい管理、食害広がる恐れも(中日新聞)

ジャンボタニシ、IoTで操れ!四万十市の水田で実験(高知新聞)

中には一定の評価を加えるメディアもあるが、食害の可能性は大であり人間の手で個体数が制御できるはずがない。

毒をまいているようなもの?

こうした危険性を尻目に組織単位で取り組んだのは参政党奈良県支部だ。昨年7月9日の同支部Facebookには田植え実習を実施。「ジャンボタニシ君の協力を得て、今後草抜きでいけるかな」とジャンボタニシ農法を採用していたようだ。

同支部Facebookの投稿に対して危険性を訴える投稿があった。これに対して

ジャンボタニシは外来種ですが、実は自然栽培では活用方法がございます。稲は硬く 珪酸成分が多いので、タニシからすると食べるものが無ければ食べる最後の食料のよう です。除草剤を使う慣行栽培では、芽吹く他の草が無いため稲への食害が目立ちますが 、自然栽培では数え切れない草の芽がありますので、そちらでお腹いっぱいになって稲 はあまり食べられません。外来種であるのでむやみに喜べず、他へ広がる事へもしっか りした策を講じていますが、ジャンボタニシがいる所ではうまく活用する農法を行って います(^^)

と回答。「他へ広がる事へもしっかりした策」と説明するが、人間の手で制御できる生物ならばここまで駆除に苦慮することはなかっただろう。

支部単位でジャンボタニシ農法。

党員によるジャンボタニシ農法が炎上する中で火に油を注いだのが、参政党福岡3区国政改革委員、参議院議員選挙元候補の重松ゆうこ氏の投稿。言うまでもなくコミュニティノートがついた。そして重松氏を中心とした参政党関係者のSNSが荒んでいく。あくまでジャンボタニシ農法が適正だというのである。

以上が騒動のおおまかな流れである。参政党のオカルト的言説や陰謀論はこれまでも指摘したが、「DS」「和多志」「アートテン農法」などについては外部から見ればある意味、エンターテインメントとして“いじりがい”があるというもの。だがジャンボタニシを田にまくことは作物被害はもちろん周辺への環境被害をもたらしかねない。なにしろ異常に思い込みが強く影響されやすいというのが参政党関係者の最大の特徴だ。より強く警鐘を鳴らす必要がある。

いかにも参政党らしい典型的な陰謀説。

農水省、JA福岡も 続々と注意喚起!

関係機関も事態を重く見たようだ。農水省は6日、Ⅹに「#ジャンボタニシ 放飼は止めてください!」と投稿。担当した同省植物防疫課は「参政党さんに限った話ではなく以前からよく出てくる話でその都度、注意喚起を行っています」とした上で「今回はⅩで話題になっているので改めて危険性について投稿しました」と説明する。やはり今回の参政党一派の投稿は把握していたようだ。

また先の重松氏は「JA福岡がジャンボタニシ農法を確立した」と主張している。これもJA福岡にしてみればもらい事故のようなものだ。

JA福岡営農販売課に事情を聞いてみるとすでに複数の意見が寄せられたという。「平成8年(1996年)にジャンボタニシの習性を利用した除草を内部で研究したもので広く推奨したものではありません」(同課)

そしてその直後にJA福岡HPに「SNS(X“旧Twitter”)上で、当組合が「ジャンボタニシ農法を推奨している」という内容の投稿がございますが、そのような事実はございません」と発表。反響の大きさがうかがえる。

矛盾する 重松氏の 主張に本人は ブロック

それでもSNS上では党員らが重松氏を擁護、追認する意見が相次いだ。そこで所属する参政党福岡県連事務局に「全国でジャンボタニシ農法を広めたい」という重松氏の主張について見解を問うた。

「参政党の3つの重点政策のひとつに「食と健康、環境保全」があります。 この点は入党以前から重松ゆうこ氏の活動の中心で、入党のきっかけであると思います。 さて、ご質問の件ですが、ジャンボタニシ農法自体が党の政策ではなく、無農薬農法として長年取り組んでおられる事業だと認識おります。 なお、個人の活動は基本的に自由となっておりますので、ジャンボタニシ農法に対してコメントする立ち場でないことをご理解ください」(同事務局)

事務局もかなり苦慮した印象を受けた。ここで事務局が重松氏について「長年、ジャンボタニシ農法を取り組んでいる」と認識していることは見逃せない。

重松氏は自身の公式サイトでジャンボタニシ農法を採用した無農薬米を販売している。Ⅹ上では「我が家は40年以上ジャンボタニシ活用して無農薬米を作っている」と語っていた。

これはおかしい。ジャンボタニシが台湾から輸入されたのは43年前の1981年。当時はまだ食用としての輸入でまだ侵略的外来生物とは認識されておらず無論、除草用を想定したものではない。またJA福岡もジャンボタニシ農法に取り組んだのは1996年だ。重松氏が40年以上前からジャンボタニシを活用したというのは相当無理がある。

またFacebookをみると確かに稲や水田の写真が投稿されている。だが講演会風景やイベント会場の記念写真は多数、掲載されているが自身が耕作する痕跡はない。むしろ稲作姿は格好のPR材料になりそうなものだが? 重松氏を知る人物はこう一蹴する。

「実は我が家の米といっても協力する農家が生産しているもの。せいぜい退職した夫が水田の見回りをする程度でしょう」

当の重松氏には「重松雄子の食育べっぴん塾」の問い合わせフォーム、またはⅩ上で質問してみたが結局、「ブロック」という顛末だ。一方、参政党本部事務局は今回のジャンボタニシ騒動についてこう回答した。

SNS上で発信されている「ジャンボタニシ」の件について 

SNS上で、一部の支部や党員が「ジャンボタニシ」に関する投稿を行ったことについて、「ジャンボタニシ農法」と称する農法を、党や党員が推奨しているかのような内容の投稿が見受けられ、この内容を前提として、マスコミ等から党や支部に取材依頼が寄せられています。この件に関して、党としては、これらの投稿の内容を承知しておらず、当然ながら、そのような農法を推奨しているわけではありません。農林水産省が指摘している通り、外来種である「ジャンボタニシ」は、地域固有の生態系に与える影響や水田への被害が問題とされており、その撲滅が必要だということに異論はありません。
誤解を招く可能性のある発信を行った支部や党員には、発信内容を訂正し、今後はそのような発信を控えるよう指導しました。なお、支部及び党員からの聞き取りでは、「ジャンボタニシ」を意図的に繁殖させるような行為は一切行われていないことが確認されました。当該支部では、過去、農業実習の一部として、「ジャンボタニシ」が避けられない形で繁殖している地域の田んぼで、その被害を最小限に抑えるための工夫についての実習を行ったことがあるとのことでした。この過程で、繁殖や外への流出を防ぐための注意喚起と共に、党員による除草作業を実施したとのことでした。また、長年農業を営む党員の中に、JA福岡市が「ジャンボタニシ」を防除する一環として、「ジャンボタニシ」を稲ではなく雑草に向かわせる「ジャンボタニシを活用した除草」の取り組みを評価し、情報発信をしていた者がいました。しかし、発信の中に、誤解を招く発信があったことがわかりました。当該発信については、速やかに削除を行うとのことでしたので、併せてお知らせいたします。

この声明は同党公式HPにも掲載された。党本部もかなり事態を重く見た様子だ。

農業思想家・宇根豊氏の 受け売りと 農本主義

これで一応、参政党内でジャンボタニシ農法は収束するだろう。

だが誤った農業知識の流布は今後も続くはずだ。というのも参政党に限らず極端な自然農法を訴える人々は自身の実体験というよりもおおかた特定論者への盲信がある。つまり元ネタが存在するということだ。

先の有坪氏はこう推測する。

「重松さんのジャンボタニシ農法に関する知識はJA福岡、減農薬は宇根豊氏の受け売りでしょうね」

宇根豊氏は農と自然の研究所代表。73年から福岡県の農業改良普及員で2000年に福岡県庁を辞すとNPO法人「農と自然の研究所」を設立。80年代から減農薬運動を説いた人物で、「農本主義」の発掘と再評価に取り組んできた。

福岡県の農業有識者であることから重松氏も影響を受けたのは大いに考えられる。

ここで見逃せないのは宇根氏は農本主義(農業や農村生活を国の基礎にする思想)の提唱者であることだ。

実は農本主義、自然食、有機農法といった現象は疑似科学、オカルト言説、陰謀論と親和性がある。オカルト言説に詳しい研究者はこう解説する。

「全共闘以後、自然食、有機農法、東洋医学など食・農・身体についてオルタナティブな実践に向かうのはよくあるケースです。元日本革命的共産主義者同盟元委員長の太田竜(1930~2009年)が自然食を提唱し、陰謀論者、環境論者に転じたのは代表例でしょう」

重松氏、そしてその擁護者たちの主張にも陰謀論的言説が強く滲み出る。こうした一派と太田竜を同列に語ることはできない。だが参政党が訴える極端な自然農法、無農薬栽培といった言説には疑似科学や陰謀説が入り込む余地が大いにあるようだ。

なにしろ陰謀説、オカルト言説を好む参政党員たち。自然農法の最たるジャンボタニシ農法に向かったのは必然と言えよう。

不安なのは参政党員以外でも誤った自然農法の支持層が存在すること。つまりジャンボタニシ農法、そして極端な自然農法の信奉者は社会に存在し続け再び、騒動を起こすだろう。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【参政党研究】 党員の「ジャンボタニシ 農法」大炎上で 見えた 危うい 農本主義信仰」への5件のフィードバック

  1. 匿名

    こんなの普通の農地でやったら村八分だな。
    特に新規就農で村に入ってこんなことで周りに相手にされないのはかなり辛いし、もしジャンボタニシが他の田んぼでも見つかった日には袋叩きですね。多分見つかるだろうし。
    某テレビ番組を見て楽園を夢見る人はこういうの好きだよね。
    #6a522d81e0dc267d7685ffe689658589

    返信
    1. Jun mishina 投稿作成者

      確かに某番組(おそらく土曜の夕方やつですか?)をみると新規就農や移住生活は楽園のように見えますね。
      参政党に限って言えばやはり神谷氏の責任が大きいと思います。演説でもどう考えても事実誤認の農業政策を打ち出しています。

      返信
      1. 匿名

        番組はその通りです。
        あの番組もいいことばかり言って田舎へ移住してカフェを開くだの新規就農だの煽ってますが、番組紹介後にうまく行かなくて都会に戻っている人も多いらしいですね。
        村に入ってきた新参者というだけで嫌う人も必ずいるのでそこで変わったことやるとなるとよほど気をつけないと。
        #6a522d81e0dc267d7685ffe689658589

        返信
  2. 191932 m-brownie22

    日本農業新聞サイトに、この巻き貝を始末するための手法(その中には新規考案されているものもある)が複数紹介されているので良ければごらんください。
    参政党またはその手下・同類に対抗する手段となりうるはずなので。

    返信
  3. 匿名

    ジャンボタニシを活用している米農家があるのは事実。
    水位を調整することで稲ではなく雑草を食べるように仕向けて除草に役立てているそうだ。
    しかし、それはジャンボタニシを駆除しきれないが故の妥協策である。
    ジャンボタニシの駆除活動と水位の調整でなんとか共存しているに過ぎない。
    ジャンボタニシを根絶できるならそれが一番であるし、ジャンボタニシが生息していない水田にわざわざ持ち込むのはNGである。
    #278fc8072e7ea50eb3a86d186f3b8843

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