自民党総裁選の真っただ中。報道はすでに菅官房長官に決定したかのようなムードだ。以前の世論調査では石破茂元幹事長の支持が高かったが安倍首相辞任表明後、潮目が変わり菅優勢になった。その流れを作ったのが二階俊博幹事長と囁かれ“キングメーカー ”との評価も。だが一方で過去、地元和歌山県内の選挙結果から二階氏の影響力低下を指摘する声も少なくない。新政権でも存在感を放つのか、落日か、地元でのエピソードを交え検証してみると…。(アイキャッチ画像は森礼子和歌山県議HPより)
紀州の帝王、南海のミニ角栄…
8日に公示を迎えた自民党総裁選は現在、菅官房長官リードで石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長が追う。というよりもすでに菅内閣が決定したかのような世相。野党の支持層またアベ政治を許さない系統の活動家たちもすでに“菅憎し ”一色。この流れは安倍首相が従来、岸田政調会長に禅譲という方針から一転、菅官房長官支持に転じたことがある。加えて二階俊博幹事長が早期から菅支持を打ち出した影響は間違いなく大きい。安倍政権を支え菅有利に導いたことからキングメーカーと評するメディアもある。
だが一方で菅官房長官が総裁選立候補を表明した2日、細田、麻生、竹下の3派会長が菅支持をアピールする共同会見を開いた。しかしここに志師会の領袖、二階幹事長が呼ばれなかったことから露骨な「二階外し」との声も。この一件をもって二階氏の影響力低下を囁くむきもある。
それから二階氏が親中派であることから長らく批判も根強く「願望」込みで二階氏の影響力低下を指摘する保守系メディアや論者も少なくない。前回、グリーンピア南紀問題を報じた通り、二階氏周辺は怪しげな動きも少なくない。それにしても御年81歳にして政界で影響力を保つのはある意味、敬意すら覚える。
和歌山県知事、和歌山市長など二階氏の協力無くして当選はありえず、その存在感は圧倒的。だから「紀州の帝王」「南海のミニ角栄」こんな称号が相応しい。この通りどこか昭和の大政治家の気風を留める二階氏だが、影響力の高低どちらも芯を捉えていないかもしれない。まずは「低」を生み出す原因を地元の政界事情に見た。
二階氏の足を引っ張る不肖の〇〇たち
二階氏の地元、和歌山県御坊市。市内きっての有力電設企業の玄関口には二階氏の選挙ポスターが。一応、同和マニアのためにミニ情報も入れておくと二階事務所の近隣に改良住宅「ひまわり団地」がある。
「かつて警察沙汰や救急車が多いので通称“ピーポー団地 ”と揶揄されたこともありました」(地元住民)。
次いで二階氏の権威を示すエピソードにも触れておきたい。二階氏の選挙区和歌山三区のみなべ町、ここは「南高梅」の産地。梅の最高級ブランドだ。一見は人間ドギュメンタリ―風の通販番組などで紹介されている。
町内に観光施設はいくつかあるが、旧ロイヤルホテル(現ホテル&リゾーツ 和歌山 南部)は同町のランドマーク的存在と言ってもいい。2016年8月3日、第3次安倍第2次改造内閣時代の話。この時、党人事も刷新され二階氏は自民党史上最高齢の幹事長に就任した。そして子飼いの鶴保庸介参議院議員が内閣府特命担当大臣(沖縄北方担当等)。また世耕弘成参議院議員が経済産業大臣に入閣。県内から3議員が要職に就いたわけだ。
本来は和歌山県民にとっては喜ばしいこと。ただ二階氏に詳しい事情通氏はこんな裏話を明かす。
「ホテルに二階さんと鶴保さんの就任を祝う横断幕が掲げられたんだけど、世耕さんの分がなかったんですよ(笑)。派閥が違うから配慮したんじゃないかと言われていました」
ホテル側に事情を訊ねてみると「以前の営業担当がやったかもしれませんが、古い話で分かる者がもう退社しております」とのこと。
世耕氏は細田派で安倍首相の側近。しかも世耕氏と言えばここ数年、衆議院への鞍替えも取沙汰されている。それも二階氏の三区という説もあり同じ党内とは言え微妙な関係だ。だからこんな配慮はまんざらでもない。それから建設会社からの利益供与、公選法違反等、たびたび問題行為が報じられてきた鶴保氏が入閣とは二階氏の力無くしてありえない。ともかく党内外で二階氏の存在感が際立つ。昭和の「派閥ドン」の原風景を留めるような人物だ。
さて同年と言えば二階総務会長時代、御坊市長選挙で長男の俊樹氏が出馬。現職市長と争う保守分裂選となり俊樹氏が落選した。馴染みの政治記者によれば「俊樹氏はとにかく評判が悪すぎ。次男、直哉氏は暴力団との関係を指摘されました。現状、三男の伸康氏を後継にせざるをえないでしょう。全日空に勤務して上の兄弟と違い話ができるとの評です」なのだとか。
話ができるというのは政治向きの大人の会話ができるという意味だが、実際の能力や人柄は未知数。ただ長兄らに比べればまだ・・ということだろう。キングメーカー、自民党のドンという実力者の二階幹事長だがなにしろ後継者、子飼い議員らに恵まれていないのだ。それも王国・御坊市で失態があった。
二階王国・御坊市で県議落選の裏事情
俊樹氏の市長選落選で「二階王国の陰り」などと評されたが、「全くの素人が現職に挑むわけでいかに二階氏の威光があったとしても当選は無理でしょう」(同前)との分析が的確だろう。さらにもう一つ二階陣営に大きな衝撃をもたらしたのが昨年の統一地方選、和歌山県議選御坊市選挙区でのこと。
二階氏の元秘書で現職の県議、中村裕一氏が共産党新人候補に敗れるという大波乱があった。二階王国の御坊市、現職子飼い議員が落選したのは衝撃ニュース。これも「市長選のしこり」「二階王国の危機」などと報じるメディアもあった。しかし「あれは二階氏の影響力が落ちたというよりも、中村さんの失策なんですよ」と前出の事情通氏は苦笑する。
「同じく二階氏が可愛がっている森礼子県議と中村さんは不倫関係にあると噂されて、たびたび怪文書が出回ったんですよ。ゴルフコンペでの仲睦まじい様子だとか内容は複数パターンあったようですが…」
森氏は老舗の料理店生まれで、中央大卒だから二階氏の後輩に当たる。父親が二階氏と懇意という背景もあるそうだが、何しろ「二階氏自ら(森を)トップ当選させる、と息巻いたほどの贔屓の議員ですよ」(他党議員)との入れ込みよう。両氏ともに二階一門というわけだ。しかしその二人に妙な噂が立ってはドンの顔に泥を塗るというもの。
そこで、中村氏に聞いてみると
「そういう噂があったり怪文書が出回っているのは承知していますがデマです」
と否定した。また森氏についてはアプローチ自体、拒否された感もあり応じる気配もなかった。
政治家に不倫関係を問うて「そうでございます」と答える人もまずいないだろう。またこちらも写真やメールなど物証がない。ただ勘のいい人ならばすぐに気付くはずだ。選挙戦においてこういった女性問題に関する噂が飛び交うということは何をもたらすか。特に自公の場合には特別の事情がある。
「中村さんは創価学会の婦人部に総スカンを食ったんです」(同事情通氏)
学会婦人部…。なにしろヒトケタ台まで正確に票読みができる驚異の選挙運動。味方なら心強いが敵にすれば怖い。ただ平和、護憲、環境問題、東アジア重視、こういったフレーズにはとても敏感の上、女性問題となれば一大事だ。不倫が事実かどうかではなく「噂が立つ」こと自体が学会婦人部にとって問題行為であろう。
その協力が得られないとあっては手痛い。しかも選挙結果は各府県で自民党の堅調が報じられたが、その中で中村氏の落選は異常事態。さすがにドンの二階氏でもあってもフォローしきれないというものだ。
つまり市長選、県議会選で二階氏子息、子飼いの議員が落選したがそれは二階氏の影響力と直結して考えるのは無理がある。はっきり言えば不肖のなんとやら、という以外言葉がない。二階氏の足を引っ張るのは政敵ではなく「内」にあるような…。
それでも国政、党運営における二階幹事長は大いに存在感を発揮してきた。地元の二階王国での残念な結果はともかくとして党内の重鎮であるには違いない。
もちろん和歌山県政に対してもいまだに二階氏の影響力は絶大と言えよう。それは野党議員にも及ぶというのだ。
「3年前の民進党分裂騒動の時に岸本周平衆議院議員が二階派入りすると噂されたんですよ。あるいは二階さんの協力を取り付けて岸本さんが和歌山県知事に鞍替えという話も出ています。二階さんにとっても子飼いの門博文氏のライバル候補が消えるわけだし、岸本さんにとってもこのまま国民民主というのも政治家として限界があるから県知事というのも悪くないでしょ」(地元記者)
噂は噂としても、その話の中心には二階氏がいる。対して新政権では二階外しも指摘する意見もあるが・・・
「中国・習近平国家主席が最大の友人として扱うのが二階氏。また総務会長時代、関係悪化した韓国・朴槿恵大統領(当時)と面談できた他、インドネシアに行っても歓待されます。アジア外交においてこんな役割ができるのは二階さんだけ。そんな重要な外交カードを要職から外すというのは新政権にとっても得策ではないでしょうね」(前出事情通)。
内では子息、子飼い議員が失策するが、外(外交)では各国で歓待される。内憂外患ならぬ「内憂外歓」というに相応しい。新政権では引き続き、幹事長職を続けるとの報道もあるが、ともかく傘寿過ぎてもこの威風と存在感は認めざるを得ない。様々な毀誉褒貶が飛び交うが、新政権下でどのような処遇になろうとも影響力は保ち続けるであろう。
森令子さんって和歌山の県議にいましたっけ……?
すみません。先日修正したんですが更新できてませんでした。
申し訳ありません
なかなか、するどい。そうとう調べまとめられましたね。記事としていいと思います。地方人より
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