本サイトが追跡してきた広島市都町改良住宅の駐車場がずさんに管理されていた問題について、住民が住民監査請求を行ったところ、7月11日にその結果が公表された。広島市では住民監査請求のほとんどが棄却され、勧告が行われるのは年に1、2回のレアケースだが、今回は勧告が出ている。
結論として、駐車場の不正使用について広島市当局は10月31日までに駐車場の使用実態の確認を行い、適正な管理を行うために必要な措置を行い、11月14日までに監査委員に通知することを求めている。
住民監査請求を行った住民に動画でインタビューしているので、ぜひご覧いただきたい。
住民監査請求が受理されたのは5月15日付けで、それが問題にしていることは大きく分けて2つあり、改良住宅の指定管理者から出された「管理委託費」の使途が分からなくなっていること、そして公有地が本来は有償であるところ住民に無償で貸与されしかも又貸し等の不正が横行していたことだ。
結果的に監査委員は管理委託費の問題については不正を認めなかったものの、又貸し等については調査の上で不正の存在を認め、適正化を勧告したものだ。


住民によれば、住民監査請求が行われた数日後には市の職員が改良住宅を訪れて、住民に対する聞き取りをしていたということだ。
監査結果によれば、駐車場の管理規約を上回る駐車場代が徴収されていたことが帳簿から裏付けられ、また監査委員事務局による現地調査で使用承認されていない車両の駐車が確認され、又貸し疑惑の信憑性が高い旨が報告されている。
今回の勧告は都町の特定の改良住宅に対するものだが、福島町など広島市内の他の市営住宅でも、住民の管理組合が駐車場の管理をしているケースが多い。広島市はかねてから市と指定管理者が管理する方式へと転換させているのだが、遅々として進んでいなかった。しかし、今回の件をきっかけにその流れが急速に進むことが予想される。
また今回の背景には、筆者が浜田聡参議院議員の「諸派党構想政治版」プロジェクトを利用して、浜田事務所から国交省に以下の質問をしてもらったことがある。
広島市西区の都町第7住宅において、市から駐車場敷地を無償貸与している住民組合が周辺相場よりも低価格(相場は月額1万円以上だが、徴収しているのは1500円から5000円)で住民に駐車場を貸しており、なおかつ住民が親族や周辺住民に駐車区画を又貸ししているとの相談を受けました。
そこで問い合わせですが、「公営住宅敷地内における駐車場の設置及び管理について」(住総発第15号 平成3年4月1日付 住宅局長通達)について
https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/089/80000141/80000141.html
・この文書で言う「事業主体」とは、例えば市営住宅であれば市ということになるのでしょうか。
・都市部など駐車場料金が比較的高額な地域(相場が月あたり1~2万円)のような場所で、事業主体が住民に駐車場を無償で提供することは適切でしょうか。
・上記の状況で、事業主体が自治会に駐車場を無償で貸し出し、自治会が償却費・修繕費相当分だけを利用者から徴収することは適切でしょうか。
・上記の状況で、自治会が償却費・修繕費相当分を超える料金を住民以外の利用者から徴収すると不当利得となりますか。
・住民以外に駐車場が又貸しされている場合、法令に抵触しますか。抵触するなら当該法令等の詳細が知りたい。
・市営住宅の利用状況について法令違反があった場合、その通報先はどこになり、対応義務を負うのは誰でしょうか。
その結果、国交省から次の回答があった。
お示しいただいている平成3年の通達は、公営住宅を対象とした通達であり、質問頂いている住宅は公営住宅ではなく、改良住宅である。改良住宅とは、国からの補助を受けて自治体が整備している住宅であるためそうした観点から、改良住宅の駐車場についての運用も公営住宅の通達事項を参考にしながら運営していくという方針である。
1 改良住宅の事業主体は市であり、市で整備等をしている。
2及び3 まず一般論として、市が入居者に駐車場を無償で使用料を徴収するべきとしているので、完全に無償であれば適切ではない。
次に今回の事案の場合、償却費や地代相当額というのは所有者である市で費用を負担しているという事になるため、その点についての使用料は通常発生するものの、改良住宅を整備するときに整備にかかったお金等は家賃から補填していくという考え方で家賃設計されているため、駐車場代を含めて家賃という項目の中で居住者より徴収しているのではないかと思われる。修繕費及び管理事務費については、市として行っておらず居住者で構成される管理組合等で管理してもらっているため、費用は発生していないと認識している。よって、お尋ねの駐車場を無償提供している、との指摘及び修繕費などの徴収については、必ずしも適切ではないとは言えない。4 居住者以外に貸すこと自体がそもそもNGである。今回の事案について広島市に確認したところ、過去にも通報事案があり調査したことがあるそうだ。今回も同様に不正に使われている場合は市の方で調査指導をする。不正が認められる場合は駐車場使用不可等の対応も有り得る。
5 今回の事案は改良住宅の為、市の条例等に抵触する可能性がある。
このように、国交省から広島市への確認があったことは何らかの影響を与えた可能性はある。
また特筆すべきは、今回は訴訟から住民監査請求に至るまで、素人の市民が専門家に頼らずに手探りで行い、最後までやりとげたという点で、稀有なケースと言えるだろう。
