「こうなることは目に見えていた」「時間の問題だった」。徒労感に満ちた声が漏れ伝わってくる。「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」(愛知100万人リコールの会)が昨年6月に結成され、リコールに必要な約86万筆を集めるため署名運動が始まった。結局、目標数に全く及ばず、昨年から署名に問題があるとの指摘も。さらに事務局幹部らが広告代理店に依頼し、複数のアルバイトによる署名書き写しという不正疑惑まで報じられた。弊社も愛知トリエンナーレ、リコールの会について報じた経緯から様々な情報が寄せられている。情報をたどるとリコールの会内部の闇が浮かび上がり、しかも署名の雑さときたら目も当てられない―――。
宝くじに当たったんだ!の意味

それにしても今、東海地方がホットだ。現在、当サイトが追跡している津市相生町自治会長問題、いまだに釈然としないあいちトリエンナーレ、保守分裂の岐阜県知事選、そしてリコール…。明るい話題ではないのが残念だが。
あいちトリエンナーレ、監督を務めた津田大介氏、そして大村知事に対して疑問を呈してきたが、同時にリコールの会のあり方にも問題提起した。ただそれはリコール活動の「運動姿勢」や「実効性」といったスタンスの問題に過ぎない。だが、まさか「不正疑惑」を検証することになろうとは思いもよらなかった。
大村知事、マスコミ、あるいは左派の面々が「不正疑惑」に小躍りしている姿が目に浮かぶが、それも元をただせば反大村派の“戦略ミス ”と言わざるを得ない。ご承知の通り、首長へのリコールは非常にハードルが高い。だからリコールよりも、大村知事に勝てる候補の擁立を狙うべきだった。運動のリーダー、高須克弥氏、協力した市民たちの熱意は伝わるが、現実を見ればリコール成立とは考えにくい。
リコールを突きつけられた大村知事にすれば「成立はなくとも要警戒」といった心境だったことだろう。他方、内部は「一枚岩ではない」という情報も入っていたはずだ。
特に昨年の8月頃からリコールの会の問題が取沙汰されてきた。「なにしろ最も熱心だったN嬢まで離脱を余儀なくされた」(リコールの会関係者)とかつての協力者たちは不満げである。N嬢とはリコール署名や街頭演説で貢献したボランティア。その後、続々と協力者たちが会から離れていく。SNS上などでも暴露する人が出てきた。
こうした動きを察知してか大村知事は昨年夏ごろに私設秘書であり、自身の政治団体の会計担当でもあるH氏に調査を命じたという。そしてそのリコールの会調査の指揮をとったのが「大村知事の支援者で株式会社ゲインの藤井英明社長です」と周辺は漏らす。
この会社、愛知県の情報誌「月刊KELLy(ケリー)」を発行する出版社で著者の世代には馴染みがある雑誌である。

著名人を集め栄、名駅など目抜きのエリアで街頭演説をすれば人だかりができる。もっとも聴衆たちは「物珍しさ」で集まったに過ぎない。大村知事許すまじ、こういう種類の市民がどれだけいたことか。
内部では「ボランティアの連携が取れていない」「ポスティングが進んでいない」こうした不満が募る。一部有志らで県内の自治体首長へ理解を求めるべくあいさつ回りをしたが、そうした現場に本来は最も奔走すべき元愛知県議、田中孝博事務局長の姿はなかったという。
保守フェスタ化した「愛知リコールの会」への疑問でも指摘した通り、田中事務局長は日本維新の会愛知5区の支部長でリコール運動を次期衆院選に利用している、との疑念も起きていた。
「宝くじに当たったんだ」
高須院長がリコール活動に参加し、同氏からも資金援助が得られると聞いた田中事務局長は周辺にこう吹聴したという。この話を証言したのは一人、二人ではない。こんな評も聞いた。
「彼は俳優、ローカルタレントみたいなことをしていてね。弁も立って“ オヤジ殺し”みたいなところがある」(田中氏周辺)
なるほど言われてみると俳優・大谷亮介風で渋みがありダンディな風貌。上記に掲載した記事で同氏を直撃した時は確かにスマートな語り口だった。オヤジ殺しとはそんな人柄によるものか。田中事務局長が高須マネーを当て込んだというのが周辺の一致した見方だった。
ドラゴンルートという怪情報をキャッチ
現在、指摘されているアルバイト動員による署名代筆。一時は「70万筆」といった景気のいい報告もあった。加えて高須院長のパーソナリティもあり“盛況感 ”があったが、それも表面上に過ぎない。
「署名の集まりの悪さは分かり切ったことでしたよ。本来は受任者(署名収集受任者)がもっと協力すべきですが、なにしろ横のつながりがありません。SNSを活用したらいいのに、受任者でもネットに不慣れな人が多かった」(ボランティアの一人)
この点については受任者で、事務局に改善案を提言してきた水野昇氏も同意する。
「とにかく連携が悪いので、ボランティアがSlack(メッセージアプリ)のグループを作ったのですが、受任者の大半がアクセスできませんでした」
左派のように労組等の事務所など根拠地を持たない保守派がもし拠り所にするとすればそれは「ネット」しかない。ところが基本的なネット対策もできていなかったことになる。なお森友学園・加計学園などの裁判を起こしている左派グループも高齢者が目立つが、メーリングリスト、集会、会計報告など実に組織的な動きだ。
さらに「ボランティアから事務局の作業がずさんで指揮系統もはっきりしないという声が寄せられていました」(水野氏)という実態。
愛知県内で日本維新の会の候補である田中事務局長にすれば次(衆議院選)もあり、もしリコール不成立にしても高須院長に対して顔向けられる数字を確保せねばならない。そういった焦りが現在、取沙汰される不正疑惑につながったのだろう。それが報道にある通りの佐賀ルート。ところがこれが報じられた後、弊社にこんな情報が寄せられた。
「佐賀ルートのみでは署名数が十分ではないということで、田中事務局長は支援者で株式会社ドラゴン(愛知県大府市)の土川護社長にお願いして同社員を動員して署名を書かせていたというのです」
情報提供者の間では「佐賀ルート」に加え「ドラゴンルート」として認識されているという。それも先週末には一部メディアで同社が報じられるという話まで浮上した。
土川社長は田中事務局長の愛知県議時代の後援会長との話もあった。ネット上でもばらまかれた怪文書にもその名がある。怪文書というよりもネットのコラージュに過ぎないが、ともかく田中事務局長のスポンサーとして登場した。面白いのがこの怪文書は高須院長もツイッターに投稿。フォロワーからは「自分で拡散してどうする」といったツッコミも。また
「田中事務局長に常滑市の山田豪市議が協力しており、同市議が役員を務める地元野球チーム・ルーキーズのメンバーもドラゴンに勤務しており署名に参加したとも」
こんな話も同時にもたらされた。関係者におかれてはこうした文脈の流れの中で名が浮上するのは迷惑だろうが、一応こうした噂や怪文書の真偽を確認するのも大切なことなのでご容赦頂きたい。

そこで同社・土川社長を訪ねる。株式会社ドラゴンと冠するぐらいだから土川社長も大変な中日ファン。同社には故・星野仙一氏(中日、阪神、楽天監督)の大きな写真が飾られていた。土川社長は「全く心外で、大変な迷惑をこうむっています」と反論。ご家族も同席の上、後援会長の過去、取沙汰されているような田中事務局長との関係も否定した。
「マスコミ取材? とんでもない。来てないです。あなたからの取材依頼があって、関係ないと思ったけどちゃんと否定しなきゃいけないと思いましてね。あの怪文書も弁護士から“ こんなものが出ていますよ”と教えてもらったんです。しかもあの写真はリコール運動の時じゃなくて会社HPの写真ですよ。うちが署名手伝い? 全く事実無根ですよ。コロナの影響で会社が大変な時にそんな余裕がありません。ルーキーズの関係者も社員にいますけど、もちろんそんな作業をさせていないです」
確かに怪文書の土川社長の部分を見ると、いかにも街頭演説に立っているかのような見せ方である。リコール活動との関係については
「ないですよ。確かに田中さんから協力してくれないかという話はありましたが、私は“ そんなもの成立するはずがないから”と断りました。せいぜいそれぐらい。それよりも怪文書を作った犯人を見つけてほしいぐらいです」
と当惑していた。それから土川社長と田中事務局長は同じ高校の先輩後輩。また高須院長、川村市長らとの飲み会で田中事務局長と同席していた。この点については
「先輩といっても私は田中さんよりも随分、上ですよ。偶然、学校が同じだけ。それから飲み会は中日のエースだった小松(辰雄)さんのお店ですね。おたくも知っているでしょう。小松さんがやっている料理屋で河村さんと飲もうとなった時に田中さんも来たんですよ。少し前に(今月中旬ぐらい)田中さんから連絡があったけど“ 怪文書まで出されて申し訳ないです”という程度のものでした」
土川社長の言う小松氏は中日ドランゴンズのエースで通称“スピードガンの申し子 ”と賞賛された人気選手。40歳以上の野球好きでこの名を知らぬ者はまずいないだろう。そういえば数年前、小松氏は事故を起こしていたが、記事に飲食店経営とあったのを思い出した。
土川社長は別れ際、こう言い残した。
「これは本来、河村さんと大村さんの問題だからリコールなんてやるような話じゃありません。二人で話し合ってほしい、というのが地元の気持ちです」
確かに県民からすれば予想外の騒動だろう。それも発端はあいちトリエンナーレだから「理解不能」という県民も多いのではないか。「外交と歴史認識は票にならない」とはある自民党関係者。今回のリコールが如実に物語ってはいないか。
愛知県政を渡り歩く田中事務局長の経歴
申し訳ないが田中事務局長の評判は非常に悪い。一つにはリコールを自身の選挙活動に利用しているという指摘。また政治活動歴も見逃せない。

「田中さんが反大村知事? とんでもない。あの人はもともと大村さんの『日本一愛知の会』に所属していました。顔が広いから大村さんのパーティー券でも右から左に売ってくるからね。どうやってリコールの会事務局長になったのか不思議でなりません」
と苦笑する地元自治体議員。
「彼はちょっと山師のようなところがあって産業廃棄物業に手を出したんだけど、会社が火災に遭いましてね。当時は放火とも言われたけど、TVニュースでもあったんじゃないかな。ところがあの通りのキャラクターだからそうは見えないけど、内情は火の車と言いますよ」(同前)
そのせいか政治活動以外の事業も手掛けていたそうで「事務局にいたUさんの仲介で消毒剤のようなものを販売していました」(リコールの会関係者)という生活状況だった。
当初は大村陣営、そして「私が減税日本に紹介して河村市長とパイプを築いたのです」(前出・水野氏)と減税日本に活路を見出した。ところが県議復活はかなわず、日本維新の会愛知五区支部長のポストを得た。そしてリコールの会の事務局長に就く。



以前の記事で、維新とリコールの会の街宣車ナンバーが同一ということを指摘した。同じレンタル会社の選挙カーという反論もあるが、「維新を介してレンタルした」(前出リコールの会関係者)という証言もある。
ともかく維新色が強いリコールの会だが、もちろんそれは田中事務局長が五区支部長という関係上、当然のことではある。ただリコールに情熱を注いだボランティアは疑問を感じたことだろう。
呆れるほど杜撰な署名に驚き!
もしもである。これが左派が河村市長リコールの署名を起こした場合、さらに狡猾で、膨大な署名数を集めたかもしれない。通常、労組の場合、署名活動をすると「五人ルール」と呼ばれるものがある。これは一人が最低限5人の署名を集めるというもので、選挙でも活用されるものだ。特に日教組、自治労、この辺りの団体にとっては“お家芸 ”といってもいい。それでなくても左派の場合、どこからともなく“世捨て人 ”然とした活動家がやってきて血眼で署名集めや街宣を始める。
それは「反体制」「反権力」という怨念に満ちている。苦虫にデナトニウムを振りかけた如き苦みと徒労を噛みしめてきた連中だ。申し訳ないが田中事務局長を始めリコールの会運動員が想像だにしない場数を踏んでいる。
ここまでリコールの会が迷走したもの、そもそも田中事務局長、またその周辺も運動ノウハウがないからだ。というよりも署名、デモ、各種抗議活動、この手の取り組みにおいて左派団体、労組の洗練さは保守派の及ぶところではない。ましてや急ごしらえのリコールの会では言わずもがな。広告代理店経由で代筆バイト募集というあり得ない選択肢に向かったのも「経験不足」が大きいかもしれない。
そんな怪しげな署名---。
実際に代筆されたという署名を入手したが、現物を見て正直、唖然とした。むしろこれが通用すると考えたとすれば笑う他ない。不謹慎だがもう少し上手く細工できないものかと思ってしまった。
いくつか例をあげよう。例えば県内某市の住民分。氏名、住所等は控えるがとにかく男女が混在していることは説明しておく。署名年月日を見てもらいたい。全く異なる4人の署名者だが、数字が酷似している。「5」などはあまりに特徴的。「緑町」に至ってはペン習字のお手本のようだ。

次はそれぞれ住所が異なる女性のみの署名。「霞」という字が非常に特徴的でなおかつ女性という割に書体がとても男性的だ。数字もよく似ている。

あるいは昭和33年と平成7年生まれの同じ住所の男女、48年、53年生まれの各女性のパターン。署名日の数字の筆跡が判を押したように同一にしか見えないし、「町」も酷似している。昭和33年生まれの男性と昭和53年生まれの女性の筆跡が似ているのも不思議だ。

なおこの用紙は一枚あたり10名の署名ができる。ところが一枚ずつが同じ筆跡でなおかつなぜかいずれも7人分で終わっている。偶然で納得するほどこちらも人間が素直にできていない。
つまり一斉に作業したという痕跡が署名からありありと伺えるのだ。杜撰というレベルを通り越している。果たして渦中の田中事務局長はこうした指摘に対してどう答えるのか?
せめて利き手じゃないほうで書けよ。
足で書けよ。口で書けよ。
もっとうまく「整形」しろよ。
不謹慎だがそんなツッコミを入れたくなる。
右も左も極端な言動をする輩は根っこが同じ、っていうのがよくわかりますね
問題の田中氏は、あの鈴木宗男氏から河村たかし氏を経た紹介ルートで高須氏に取り入ったようですね。以下参考URL。
田中氏のTwitter(消される可能性があるのでArchive)
https://archive.vn/H2BfO
高須氏のTwitter(上に同じ)
https://archive.vn/2TYaN
https://archive.vn/IbdKy
本日、田中氏がついに愛知県警に逮捕されました。
NHK報道によると、田中氏は起訴まで黙秘を貫く方針のようです。
高須氏のTwitterは現時点で未更新ですが、どういう形で今回の件の
責任を取られるのか、非常に興味深いところです。
高須氏のTwitterを読む限り、田中氏の過去の経歴(大村知事側で
以前活動していたこと)もろくに調べずにリコール運動の事務局長に
就任させていたようなので、高須氏は運動体の運営・形成に関する
基本的な常識が根本的に欠落していたと見るのが妥当でしょう。
高須氏に法的責任がなかったと立証された場合でも、道義的な責任は
免れないでしょうね。
高須氏のTwitterが先ほど更新されました。
しかし、自身の言葉をTwitterに書き込むのではなく、共同通信の取材に
対して回答した自身のコメントを、共同通信の公式Twitterからリツイートする
という何とも不可思議なやり方です。
高須氏は、弁護士に何か言われてるんでしょうかね?
該当の高須氏のツイートには現時点でリツイートが60以上付いていますが、
ほとんどが高須氏の今回の対応に否定的なもので、リコール運動の支持者
からも完全に見放されてしまったようです。
また、高須氏らがリコール運動のためにクラウドファンディングで集めた
資金に注目するリツイートもあり、「返礼品が未発送」というリツイート
(真偽は不明)もあります。
クラファンの資金がウヤムヤになっていることが事実だとすると、業務上
横領などが発覚する可能性もあり、事務局長の田中氏逮捕だけでは
済まないでしょう。
結局、運動のイロハも知らない素人保守派が大村知事のバックにいる
プロ活動家を相手に痴態を晒した、というのが今回のリコール騒動の
結論でしょうか。