関西生コン「ヤドチョウ」たちの裁判③ 人を守らない労組の闇

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By Jun mishina

前稿でも説明したが関西生コン裁判は①湖東協組事件(大津地裁)、②大津協組事件(大津地裁)、③宇部三菱大阪港SS・中央大阪生コン事件(大阪地裁)に大別できる。今回、傍聴したのは大阪地裁、5月22日、宇部三菱大阪港サービスステーション(以下、 宇部三菱SS)出荷妨害事件の第3回公判だ。2017年12月、同社から業務委託されていた運搬車を妨害したとして関西生コン支部の副執行委員長の七牟禮時夫、執行委員の大原明らが威力業務妨害などを問われている。開廷表を見ると「大原明こと孫明」と表記されていたのも印象的だった。

関西生コンの傍聴に駆け付けた支援者たち。

この日、大阪地裁には早朝から“ いかにも”な面々が集まってきた。というのも同日、安保法制違憲訴訟もあり絵に描いたような運動家たちが傍聴券を求め列をなす。もっとも動員という点では関生裁判の方が圧倒的に多い。傍聴希望者は大阪地裁敷地内の芝生に集められる。目算だけでも300人ぐらい。傍聴は69人分で半ば諦めていたが、見事傍聴券を入手できた。ここにきてクジ運が良くなってきた気がする。

傍聴希望者は大津地裁の場合、スーツを着込んだ経営者風の男性が目立ったが、この時は現場の組合員、その他労働組合の活動家が多いようにも見えた。それは 宇部三菱SS事件の場合、末端の組合員が多いため現場の仲間が多く応援に駆けつけたのかもしれない。

宇部三菱SSの本社正門。

さて湖東協組、大津協組には連帯委員長の武建一被告、副委員長の湯川裕司被告がいるから業界の慣例、あるいは組織の内情、活動方針などが語られた。連帯とは何かを取材する上で貴重な情報が聴ける。しかし大阪の場合は現場の「実行部隊」だから、組織全体を問うような話は聞けなかった。

むしろ今回、確認したいのは連帯側の主張の妥当性である。連帯側は妨害行為はなかったと主張している。前回の公判で出荷妨害している様子のビデオ映像が約2時間ほど流されたというが、しかし妨害している様子は確認できなかった、と反論した。この点については関連集会でも反論がなされた他、傍聴券の抽選前でも活動家らが「証拠になってないじゃないか」「長々と無関係のビデオを見せられた」などと話していた。

もちろん連帯側に対して問題意識を抱いているが、かといって現在の司法が正当だとも思わない。抗議活動当時の様子がどのようなものであったのかその見極めがカギになりそうだ。

連帯を意識してか警告文が。

この日は宇部三菱SSで妨害を受けた上田組という運送業者の取締役が証人だ。大津地裁の公判では証人に「遮蔽措置」が採用されるケースが目立ったが、上田組役員はそのまま証言台に立った。妨害は2017年12月12日から14日の間に行われ、例によって複数の連帯の活動家が法令違反、交通ルール、環境配慮などについて指摘をする。これは前回も説明した「コンプライアンス活動」というものである。

すでに連帯が来訪することは上田組やその他請負業者も認識しており、社内では「挑発に乗らない」などと申し合わせていた。 宇部三菱SSにやってきた連帯の組合員たちは「タイヤが整備不良」「車検証の位置が違う」などの指摘をした。確かにタイヤの摩耗はあったというが車検証の位置については警察の指導を受けるというほどでもなかった。

それから興味深いのが公判では「大阪広域生コンクリート協同組合」(広域)の名前が出たことだ。同組合は連帯と対立関係にあり、右翼活動家とも協力して連帯に対して抗議活動などを行っている。上田組は同組合副理事長でダイワN通商株式会社の大山正芳社長に支援を求めていたという。連帯の弁護人は上田組側の供述調書にあった「大山は元ヤクザ」という証言を指摘。すると検察側からは「本件とは無関係」として記録からの削除を求めていた。

現状、ネットを見ると連帯=暴力的、逆に広域=正当、というイメージがあるようだが、もしこの弁護人の指摘が正しいというならば「広域」についてもアンタッチャブルな側面も否定できない。

弁護側から再び出荷妨害とされるビデオ映像の確認があった。前回と違い本公判では数時間も流すというほどでもないが、今回は連帯側の主張の方が分があるように見えた。まず証人は会社役員で指示する立場にはあったが、ただ出荷妨害という現場にいたわけではなかった。だから出荷当時の状況、出荷品目の記憶も曖昧で弁護側からは再三、指摘を受ける。

しかもビデオを見る限り、トラックの前に立つのは上田組の関係者で連帯の活動家は確認できなかった。むしろ映像で確認できたのは上田組側の関係者が「出荷妨害をやめろ」などと書かれたプラカードを持って出荷車を取り囲む光景だ。いわば「カウンター」というものだろうか。

弁護側は上田組関係者がプラカードを用意していることなどから、連帯の来訪に備え証拠映像を残そうと“仕組んでいた ”のではないか? こんな風に考えているように思えた。
これだけの映像をもって連帯の妨害というのは確かに無理がある。ただ他の裁判でも元活動家がこうした連帯の行為が「嫌がらせ」という認識をしており、上田組としてはそれに「備えた」としても無理からぬことではないか。ただ現在、連帯は一連の取り締まりを「共謀罪のリハーサル」と位置付けているが、なるほど確かに宇部三菱SSの一件に限って言えば「見せしめ逮捕」という側面も感じざるを得ない。

それにしても同じ生コンを扱う労働者なのになぜこうも反目し合うのか。YOUTUBEには連帯と広域の労働者がいがみ合う映像が残っている。しかし彼らに聞きたい。本当にお互いを憎んでいるものか、と。大津地裁の湖東協組事件では元連帯の活動家が証言に立ったが、彼は連帯の活動家から離れた理由として「急病」を挙げた。大阪での活動の際、吐血をしたというのだ。原因は「ストレス」を挙げていた。おそらく「コンプライアンス活動」や現場への抗議活動、ストライキなどは間違いなく心労があったに違いない。

これは一般の労働組合にも言えることだが、政治的イデオロギー、党派の違いだけで労働者同士が憎しみ合うという皮肉な構図がある。関西生コンと検索すると「反日」「北朝鮮」「辻元清美」などといったキーワードが出てくる。しかし少なくとも現場の生コンの労働者を見るにそんな大それた思想を持っているとは到底思えない。せいぜいヤンチャなオジサン、アンちゃんといった程度だ。

党派性については立憲民主党、社民党との関係が取沙汰されているが、これも一概には言えない。例えば恐喝未遂で逮捕された湖東生コン協組副理事で、北川建材工業(滋賀県愛荘町)の北川義博社長自宅前には自民党議員のポスターが貼ってある。

むしろ関西生コンに感じるのは戦後からある労働組合活動の歪みのようなものを感じている。

関西生コンの支援者には労働関係の大学教授、左派・リベラルのメディア関係者、評論家が並ぶ。生コンに限らず労働争議などを支援、賛同する面々だ。彼らは労働者に寄り添うといい、権利を守れという。しかし同時に彼らは「広域」の組合員に対しては否定的であり批判的だ。この構造、かつての国鉄の労組に酷似している気がしてならない。それぞれの団体・陣営に学者、メディアが肩入れして結果的に労働者の対立を扇動している。こうした前近代的な労組の暗部を関西生コンが担う。そんな気がしてならないのだ。

関西生コンの聖地、大阪市東淀川区の協同会館アソシエ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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