ポイ捨て、インスタ‥東京・新大久保 「アリランドッグ」で見えた 韓国マーケティングの妙

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By Jun mishina

徴用工訴訟で揺らぐ日韓関係だが、東京・新大久保のコリアンタウンには韓国グルメや食材、韓国コスメ、韓流スターグッズを求め、多くの観光客で賑わっている。特に今、最も注目を集めているのが韓国でもブームの韓国風ホットドッグ「アリランドッグ」だ。大久保通り沿いの歩道は買い求める客で行列ができている。ところが観光客によるアリランドッグの食べ残しや包装紙などゴミの投棄がトラブルになっているという。そこで実際に現地を取材してみると、ゴミ問題以上に韓国のマーケティングの「妙」を感じざるをえなかった。

 もっともシンプルなアリランドッグ(380円)。

2000年代に入って起きた「韓流ブーム」以降、流行り廃りはあるものの、定期的にブームは起きている。現在、最も話題なのが「アリランドッグ」というわけだ。日本でも縁日で「アメリカンドッグ」は販売されてきたが、その韓国版というもので、昨年から話題になっている。ではなぜ人気なのか? それはいわゆる「インスタ映え」を狙ってのことだ。アリランドッグの中でも特にチーズの入ったタイプがビジュアル的に面白いので撮影したいのだと。なにしろ日本人は「ブーム」「流行」というキーワードに弱い上に「インスタ映え」とあっては客が殺到するのも当然のことだろう。

ところがブームあるところにトラブルあり。12月3日の情報番組「モーニングショー」ではアリランドッグの食べ残しやゴミをポイ捨てする様子が取り上げられた。

「今、韓国では」「韓国で人気の」

韓流ブームというものが起きてからメディアはこうしたフレーズで韓国の文化やグルメを取り上げてきた。そもそもメディアが韓国ブームを焚き付け、その弊害も報じるわけだから随分と面倒見がいいものである。では実際に「アリランドッグ」はブームというほどのものか? 現地大久保に行ってみた。

 店前は人で溢れている。通行も大変だ。

通常、大久保のコリアンタウンとはJR新大久保駅から明治通りまでの「大久保通り」にある新大久保商店街のことをいう。ここに飲食店、化粧品店、韓流スターショップ、小物屋などが並んでいる。そしてブームを当て込んで各飲食店でもアリランドッグを販売するようになった。とにかく行列が点在している。もちろんアリランドッグを買い求める客だ。

 反対側の店舗でも行列ができている。

客層は若者から中高年、ファミリー層など幅広い。特徴的なのがお互いにアリランドッグを食べる姿を撮影し合っていること、また撮影をし終えて写真が上手く撮れたか確認している風景が見られることだ。だから当然、歩道は混雑する。頬張るとチーズが伸びる光景が散見された。

 チーズが伸びる。ただこれだけの話なんだが。

アリランドッグは串にさされ、またソースが多いため紙皿で渡される。このためゴミが発生するわけだが、投棄が問題になってからは店側がゴミを集めたり、注意を促している。また客の一部にはインスタに投稿するのが目的だから購入後はほとんど食べないで捨てる、という現象も側聞していたがそういった光景は目撃できず。ただやはりゴミの投棄はいくつか確認できた。

以前よりは改善されたそうだが、それでもポイ捨ては確認できた。

そのせいか各ポイントでゴミの投棄を禁じる立て看板などが設置されていた。大久保通り沿いにある全龍寺前にも注意喚起の看板がある。同寺にいつからこのような注意を行うようになったのか尋ねてみたが「取材は一切お断りしています。これ以上、騒ぎになりたくないので」という回答だ。こうした寺側の反応を考えると、逆に問題の深刻さも物語っていた。

このような看板が随所にある。
文言から怒りが伝わってくる。

「ブームだからというより飲食物の容器などのポイ捨ては多いですよ。食べ歩きしますから」

こう話す飲食店関係者もいた。アリランドッグ以前からゴミ問題は大久保コリアンタウンの難題なのだ。サッカー、野球などスポーツの国際大会で日本人観客による競技場の清掃活動が海外メディアから賞賛されることがある。サポーターは世界一というものだ。もちろんアリランドッグの残骸を捨てるのが全て日本人の仕業とは言えない。だが「日本人はマナーがいい」という評判と異なる実相がこの大久保で垣間見えた。

店側もゴミ対策をしている。

なぜアリランドッグは人気なのか!?

さてせっかくだから「アリランドッグ」というものを実食してみたい。しかしあの列に並ぶのは耐えられない。よく歩いてみると「アリランホットドッグ」という店舗は比較的、行列が少なかったので買ってみることにした。関西にも店舗がある有名チェーン店だ。店の前に立つオンマがとても威勢がいい。

「アリランドッグを食べない人は時代遅れ」

「ソースはいっぱいかけてね」

こんな風に呼び込みをしている。もっとも標準のアリランドッグ(380円)を買ってみた。インスタ映え狙いの人たちはチーズ入りのものを好んで買うようだ。面白いのがソースがたくさん用意されている他、チーズ粉やガーリック粉が用意されておりかけ放題というわけだ。

複数のソースが用意されている。ソースを使ってまるでお絵かきのように写真映えを狙う。

とにかくこれを目一杯かける。店側もソースをけちる様子はまるでない。ただ一度かけてまた再来店してかけるのはNGらしいが、とにかく最初はどれだけ使っても構わない。特に女性客たちは写真で上手く見せられるように綺麗にソースをかけ、粉を使って見栄え良く飾っていた。オンマに「ほとんど食べないで捨てる人もいるけど本当か?」とそんなことを聞いてみた。すると「それはまずい店。ひどい店のは中がスカスカだよ」とこんな風にいう。じゃあやっぱりドッグそのもののポイ捨てはあるのか!?

とにかくボリュームはあるから正直、3口ほど食べたら飽きる。もう一杯だ。女性の場合、食べきれないのかもしれない。旨いといえば旨い。しかしリピーターになるというよりかは本当に「観光食」というに相応しい。だいたい糖質制限というのが一種の流行語になりながら、コテコテの糖質たっぷりのアリランドッグに群がるという世相がよく分からない。ともかく飛びつくのも早いが、飽くのもそれ以上に早い日本人のこと。年度末あたりにはアリランドッグブームも終焉していることだろう。

ただ感心するのは韓国という国のマーケティングの巧みさだ。アリランドッグは味覚というよりも明らかに「インスタグラム」などSNS映えを前提にして考案されたのは容易に分かる。複数のソースが用意されているからその分のコストもかかるが、しかしインスタ映えに憑りつかれた人が集まってくることを考えたらソース代など安いものだろう。こうした発想は日本企業でできるのかどうか。「食」にもSNSが絡むという現在の消費スタイルを上手くついたのがアリランドッグなのだ。よくできたものである。

仮にアリランドッグが消えたとしてもまた再び別のブームを作り出せる狡猾さが韓国マーケティング戦略にはある。そしてまた大久保でブームが起きてゴミ問題が起きるーー感心もすれば嘆かわしくもあり、だ。

キャラクターの形ができる綿菓子も人気。これももちろんインスタ狙い。
タピオカ。もとは台湾が本家だったような。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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ポイ捨て、インスタ‥東京・新大久保 「アリランドッグ」で見えた 韓国マーケティングの妙」への1件のフィードバック

  1. 青月

    いつもながら「タイムリー」で「ホット」なレポートをありがとうございます。
    私もニュースで見て少し興味を持っていましたが、現地レポートで深く掘り下げてもらい、雰囲気がよく伝わりました。
    何かと政治とか愛国とかで話題に上がる事の多い街ですが、今回はそれらを切り離しての視点でこれもまた面白かったです。
    見た感じは棒状のドーナツのようですが、特段韓国グルメ独特の味、という訳ではなさそうですね。

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