SNS上で密かに話題になっている大野寛文・伊勢市議をご存知だろうか。ドン・キホーテ勤務から「元国連理事」という不可解な肩書きを名乗り伊勢神宮の奉仕団体「青伸会」を掌握。そして今年10月の伊勢市議選で当選した謎の人物だ。怪しげな活動は地元でも問題視され伊勢神宮からは事実上の〝出禁処分〟。また今月24日には内閣府から青伸会に対して勧告書が突き付けられた。
元国連理事ってなんだ?

伊勢神宮の奉仕団体である公益社団法人「日本青伸会」(以下青伸会)をご存知だろうか。1941年の大日本青少年団を起源に、戦後の1947年に伊勢神宮の奉仕団体として発足した。
会員は一般参拝者が認められない御垣内参拝が可能だ。さらに大晦日に外宮18時・内宮20時に松明を灯して参拝客を迎える「庭燈奉仕」への参加や、伊勢市内の所有地「ひもろぎの里」で神職を招いて行う「山の神祭り」を開催してきた。この通り、伊勢神宮とは特別な関係にあった団体だ。
ところが歴史ある団体に異常事態が起きた。これまで伊勢神宮の奉仕活動では全く無名で2023年に入会したばかりの「元国連理事」こと大野寛文氏が昨年、理事に就任。そして今年2月に理事長に就き、団体を乗っ取った格好だ。
大野氏の公式サイトに掲載されたプロフィールには「1982年生まれ 埼玉県上尾市出身 埼工深谷高校 最終学歴 真野美容専門学校、元美容師でドン・キホーテ、メタップスに勤務」とある。
なんとドン・キホーテの人脈から推薦を受け「国連諮問機関の門を叩く」というのだ。ドンキから国連スタッフという眉唾話もさることながら、堂々と「元理事」という名刺を用いる神経にも驚く。
大野氏は「青伸会理事長」の立場の他、独自に会費年13万円の「神祇學アカデミー」を主催している。また本来、庭燈奉仕の参加費用は1万5千円だ。ところが大野氏は青伸会の一部会員から自身の口座に33万円、55万円を振り込ませるなど悪質な行為が目立った。目に余る行為は伊勢神宮にも届き、今年の「庭燈奉仕」は中止が決定。これは事実上、大野氏の出禁処分なのだ。
一方、「国連諮問機関元理事」「国連経済社会理事会の元理事」を自称したことによりあたかも国際政治の専門家のように振る舞う。YouTube番組や講演会などで国際政治問題を語り、保守系インフルエンサーらと交流が深い。だが繰り返すが国連で働いたことを裏付ける情報は皆無である。ところが「信者」と書いて「儲」と読むとはよく言ったものだ。怪しい経歴を妄信する大野信者は少なくない。
10月の伊勢市議選では元国連理事という怪しげな肩書を堂々と掲げて当選してしまった。この元国連理事の根拠、また高額な神宮ツアーについて公式サイト、SNSを通じて取材を求めたが応答はない。SNSはブロックされたからそれが答えなのだろう。

委任状を代筆して提出→協力者が暴露
では大野氏はどうやって青伸会を掌握できたのか。もとは2023年に会員を通じて同会役員や伊勢神宮関係者に接触した。その際、元国連理事と書かれた名刺を渡し「国連の関係上、定期的にドバイに滞在する」などと説明していたという。なぜ「元理事」なのに海外滞在が必要なのか、また国連スタッフがドバイに滞在するという理由が分からない。
「ある関係者が倭姫命(やまとひめのみこと)のDVDを大野氏に進呈しようと、連絡先を聞いたところ大野氏は〝東京の国連広報センターに送ってください〟というのです。そこで同センターに送ったところ受取人不明で戻ってきました。どう考えても不自然なことなのに、大野氏は淡々と〝おかしいなあ〟で済ませていました」(青伸会関係者)
そして昨年6月15日、伊勢神宮内宮「参集殿2階講堂」で行われた総会で異常事態が起きた。
「30人ほどの総会でなぜか大野氏が連れてきた弁護士が司会を始めました。予算書も決算書もない異常な総会でしたよ」(青伸会関係者)
しかもおかしなことに大野一派は「総会の決議は大野氏に一任」という委任状を100通も用意していた。委任状によって強引に大野氏は理事に就任。ところがこの委任状は元協力者らと筆跡を変えながら書いたものだった。
後にこの元協力者はFacebook上で大野氏と委任状を偽装したことを暴露した。一部を引用する。
私の知り合い、大野寛文君と言う人物がが伊勢市議会選挙に立候補しました。彼とは2年半くらいの付き合いです。彼の人集め金集めの天才性に改めて驚いています。彼は公益社団法人「日本青伸会」の理事長です。(中略)。翌日12日の午前中に、私、家内、息子で手分けし字体を変えて「委任者 大野寛文」と彼の名前を書いたのです。14~15時、大野君に私の会社に来てもらい委任ハガキを渡しました。15日日曜までに時間が無くみんな焦っていました。(原文ママ)
そして今年2月には理事長に就任。かつての協力者も裏切ってのこと。2023年、大野氏を青伸会関係者に引き合わせた会員は現在、同会Webサイト上にて名指しで中傷を受けている。
内閣府がついに是正勧告に踏み切った

ところが地元、伊勢市でも「怪しい」との声は高まっている。今月18日、伊勢市議会議長、副議長以下議員15人が、御垣内参拝を行った。
本来は出禁状態だが議員活動だからやむを得ない。大野氏も議員団に交じって参拝。その帰りには大野氏に疑問を持つ地元住民が直接抗議を行った。他の市議らにも大方の事情が周知されていたので、制止することもなく離れていったという。

次いで24日、内閣府は青伸会が「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法)の違反状態であるとして勧告書を発出。
「大野氏は内閣府が動き出したことに焦ったのでしょう。勧告書が送付される数日前、大野氏は伊勢神宮に電話をかけてきました。勧告書が公になる前に、神宮側へ弁明しておきたかったのだと思います。ところが神宮側は着信を拒否し、取り合いませんでした」(地元事情通)
現在の大野氏は八方塞がりといった様子だ。残りの仲間と言えばネット上の信奉者ぐらいか。さて大晦日、新年を控えて本稿を掲載したのは意味がある。大野氏はさも伊勢神宮と特別な関係であるかのように匂わせて会員、支持者を集めてきた。
しかしもはや伊勢神宮からは出禁状態であり、何ら関係がない。間もなく初詣シーズンを迎えるが大野氏が奉仕団体の理事長だとアピールしたとしても一切、神宮とは無関係であることをご承知おき頂きたい。



