金子快之市議
第1回の冒頭で説明したとおり、そもそも筆者がアイヌを探しに北海道に訪れたきっかけは、金子快之札幌市議(当時)のツイッターでの発言がクローズアップされ、マスコミなどの集中砲火を浴びたことである。問題の発言は次のとおりである。
「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね。せいぜいアイヌ系日本人が良いところですが、利権を行使しまくっているこの不合理。納税者に説明できません」
2014年9月1日、筆者は騒動まっただ中の金子市議の元を訪れた。札幌市内にある事務所を尋ねると、当の金子市議は電話応対の真っ最中だった。今日、自民党の会派を辞めたところだという。
筆者が金子市議にまず聞いてみたのは、アイヌ民族がいるかどうかということよりも、後半の「利権を行使しまくっているこの不合理」が何かである。「アイヌ民族なんて、いまはもういない」という部分だけがクローズアップされているが、本来地方議員にとっては、税金に関わる問題こそが重要なはずだ。
「僕はアイヌについては、ユーカラ(叙事詩)や木彫の民芸といったことしか知りませんでした。しかし、3年前に議員になった時にアイヌ協会から手紙が来たんですよ」
それは、アイヌ文化センター(サッポロピリカコタン)で行われるアイヌの式典の招待状だったという。実際に行ってみると、式典の後に民主党や社民党や公明党の議員が挨拶をしているのを見て、「こいつは臭いぞ」と感じたという。
調べてみると、札幌市のアイヌ向けの住宅貸付金の多くが返済されていない問題など、胡散臭い問題が多数出てきたという。
さらに、アイヌ文化センターは非常に立派な建物なのだが、中にある博物館はほとんどの日は入場者ゼロ、その一方で中にアイヌ協会の事務所があって、アイヌ協会が施設を管理している。しかも随意契約によりアイヌ協会に業務委託をするという形になっているので、アイヌ協会の利権になっているという問題がある。
この問題については2003年から始まった「指定管理者制度」を理解する必要がある。地方自治体が公の施設の管理を業者に委託するときは、条例を定め、議会の議決をし、管理事業者には事業報告書を提出させるといった手続きをすることが法律で定められているのだが、札幌市はアイヌ文化センターにはそれを行っていないのだ。
そして、アイヌ協会のあり方についておかしいと思っている人は金子市議だけではなく、アイヌ自身がアイヌ協会の悪口を言うことは非常に多かったという。
自民党の会派を追い出されることになった件についても、他の自民党の市議の大半も本音では「金子を追い出すのはおかしい」と言ってくれているが、今回は多数決を取らずに幹部の意向でこうなってしまった。これは、あくまで金子市議の推測ということだが、官房長官時代にアイヌ問題に取り組んだ、地元北海道の町村信孝衆議院議員(故人、2015年6月1日に死去)の意向が働いたという。
では、発言を受けて金子市議のもとにどれだけ抗議が来たかというと、例えば「東京アイヌ協会」から抗議文書が来たり、スウェーデンから航空便で送られてきたりしたようなものもあったという。
しかし、はっきり言って圧倒的に応援メールが多く、これらも全国からで、「98%が発言支持」ということだ。
そして、話題になっている「アイヌ民族なんて、いまはもういない」という点について、信念を曲げる気はないと明言した。
ついでに「在特会(在日特権を許さない市民の会)」についてどう思うか? と聞いたところ
「特に感想はないですね」
ということだった。
(次回に続く)