狙いは厳罰化と 人気取り? 自民党 LGBT法案ゴリ推しの 裏に “日本版 ピンクウォッシュ”

カテゴリー: LGBT, 政治 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

昨日、参院内閣委員会で可決されたLGBT法案(LGBT理解増進法案)は本日16日、成立する見通しだ。自公と日本維新の会、国民民主党の4党が合意した修正案に対して党内外から不満が漏れる。維新・国民案を飲んでまでLGBT法成立を急ぐ裏側に自民党の“日本版ピンクウォッシュ ”が透けて見えた。

トイレに始まり トイレに終わった LGBT法案

公共施設、服装、証明書などで進むジェンダーレス化。中でも「トイレ」の扱いは悩ましい。東京・新宿の複合高層ビル「東急歌舞伎町タワー」のジェンダーレストイレは物議を醸しその後、改修。この通り、女性を自称する男性による女性スペース侵入で最も懸念されるのがトイレだ。

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人権問題とトイレの因縁は過去記事でも指摘したこと。そして13日、衆議院本会議の採決の際、同法案の反対派である高鳥修一議員が反対の意味を込めトイレに籠った。ICレコーダーを手にした記者たちが高鳥議員を追ってトイレに集結する。実にシュールな光景だった。

「同法が施行されたら自称女性が女子トイレに入ってくる」

こうした言説と共に反対論が渦巻き、そして反対派の議員がトイレで採決を拒否した。まさにトイレに始まりトイレに終わったLGBT法案(LGBT理解増進法案)なのだ。

岸田首相と面会したLGBT法連合会も反対声明。

右派・左派双方から反対論が噴出するが、ともかくLGBT法が制定されることになった。一時は5月の広島G7サミット前の制定を目指したほど岸田首相の鼻息が荒かった。呼称をめぐっても自民案の「性同一性」から維新・国民案の「ジェンダーアイデンティティ」に修正。それも党内での議論なしという慌てぶりだ。次期総選挙を想定して「自民党はLGBTに無理解」というレッテル貼りを恐れたのだろうか。

自民党の地方議員を見てもLGBT推しが確認できる。反対派有力議員、和田政宗参院議員の地元、宮城県仙台市議会でのこと。現地ウォッチャーはこう話す。

「自民党・渡辺博市議は和田議員と二連ポスターを作るような人だから保守派と思っていました。ところが6月6日の市議会本会議でパートナーシップ制度や『THE TOKYO TOILET』を評価する質問をしたのです」

THE TOKYO TOILETとは日本財団が渋谷区にトイレを作るプロジェクト。しかしTHE TOKYO TOILETで設置された同区幡ヶ谷の公衆トイレは「女性用がない」として炎上騒動に発展したのは記憶に新しい。全国放送の情報番組でも取り上げられたが、渡辺市議は把握していなかったのだろうか。周回遅れで『THE TOKYO TOILET』を理想モデルとして持ち出す感覚はある意味、自民党議員らしい。

問題は自民党内のLGBT推し議員の狙いや意図が不明瞭で不気味なこと。

立憲民主党、共産党などにみられる労組や活動家タイプの議員、またマスコミ、NGO上がりの意識高い系議員でもない。自民党議員のLGBTゴリ推しは野党よりも不思議だ。このモヤモヤをどう表現すればいいのか思案したが、強いて言えば自民党の“日本版ピンクウォッシュ ”が近いかもしれない。

補足をしておくと「ピンクウォッシュ」とはLGBTフレンドリーを打ち出してイスラエル政府がパレスチナへの武力行使を隠し、イスラム諸国よりも人権先進国であることを国外に示す宣伝戦略のことだ。東京レインボープライドでも左翼活動家がイスラエルのブース前で抗議活動を行うことがある。

「安心してください 理念法です!」の胡散臭さ

野党、左派のLGBT推進、意欲はある意味で明快だ。「憲法九条で戦争を回避できる」といった九条真理教徒諸氏のお説もロシアによるウクライナ侵攻で決定的に説得力を失った。原発問題もかつての熱はない。お望みの「自然エネルギー」だが太陽光発電、風力発電がどれだけ環境破壊を生んだことか。

世界的にLGBT熱が高まったのも追い風。活動が枯渇した左派にとって恵みの雨である。あるいは「外国人の入国管理問題」も同様。LGBTと入管問題は左翼、左派弁護士、マスコミの新しい活動パイだ。

しかし自民党議員がこうした面々から支持されるわけでもない。もちろんLGBTと叫んだところで保守層からも評価されない。どこにモチベーションがあるのか。自民党の周辺を追ってみよう。

神戸新聞(6月8日)で紹介された繁内代表理事。

自民党「性的指向・性自認に関する特命委員会」のサポート団体が「一般社団法人LGBT理解増進会」(繁内幸治代表理事)だ。過去記事でも同会の活動を取り上げた。

保守派からのLGBT施策が 持つ意味と課題(前編)

保守派からのLGBT施策が 持つ意味と課題(後編)

そして同会をバックアップするのが自民系の同和団体「自由同和会」である。この団体名、熱海市土石流問題でもたびたび報じたのはご記憶にあるだろう。

6月8日の『神戸新聞』に繁内氏のインタビュー記事が掲載されたのは驚いた。

通常、マスコミが取り上げるLGBT団体・当事者はLGBT法連合会の役員、遠藤まめた氏、松岡宗嗣氏といった面々。だから自民党のアドバイザーを務めた繁内氏が一般メディアに取り上げられるのはまさしく異例なのだ。なぜならマスコミが想定する被差別団体や当事者とはあくまで「左派の活動家」である。

LGBT法案審議入り、法案づくりの陰に兵庫の当事者 自民党の会合に飛び込み、理解訴え

特筆すべき情報はない記事だが、興味深いのは

繁内さんとは異なる考えの当事者も多い。国会はどんな結論を出すのか。

で締めていること。「異なる考えの当事者」とは無論、先の遠藤氏らのこと。

「繁内を紙面に出すな」という左派のLGBT活動家の抗議を想定し、配慮したと思わせる一文だ。それに「一般社団法人LGBT理解増進会代表理事」の肩書が記事中に一字もないのも不自然である。あくまで「兵庫の当事者」という扱いに留めたが、ともかくLGBT問題でマスコミが好意的に繁内氏を扱うのは珍しい。

理解増進法案は繁内氏が中心になって作成に関わったので、ある意味では「自由同和会協力」といっても差し支えない。

関係者によると「自由同和会・平河秀樹事務局長は“ 公金チューチューという言葉が流行っているが何が悪いんだ。行政からの補助金はもらって正しく使えばいい”と理解増進会にハッパをかけてきました」という。平河氏も「公金チューチュー」というネットスラングを意識していたのは面白い。

一方、自由同和会も保守系に違いないが、一般的な保守系団体はLGBT法案へ警戒感を強める。

自民党の支持団体といえば日本会議を想像する人も多いはずだ。もちろん日本会議はLGBT法案に慎重な対応を求めてきた。

ある議員は党内情勢をこう明かす。

「ベテランの中には“法案が通ったら(議員会館のトイレも)不安なので女性秘書が辞めると言ってるんだよ ”と頭を抱える人もいました。いわゆる保守派の中には日本会議の方の陳情を受けて“ 国内外で求められているから穏健な法案(理念法)が必要で、ラディカルなものではなく理念法だから弊害や影響はありません”という説明をします。聞いた側は苦笑する人もいたようです(笑)」

理念法だから影響力、危険性もないということだが、影響力がないならば制定する必要がない。説明された側が苦笑するのも当然である。

実に象徴的な証言だった。推進派が法案について説明する際に、「罰則なしの理念法だから安心」だとか「活動家を制限する法律」といった表現がテンプレート化した格好だ。支持者の中にも同様の説明を受けた人は少なくないだろう。まるでお笑い芸人、とにかく明るい安村さんの持ちネタ「安心してください、はいてますよ」ではないが、「安心してください、理念法ですよ」といったところ。 

しかし同じく理念法の部落差別解消法について、自由同和会の機関紙『ヒューマンJournal』(2019年6月号)に興味深い記述がある。「差別問題に関する特命委員会委員長」平沢勝栄衆院議員から本音が見えた。

一番大きな声尾は罰則がないじゃないかという声でありましたが、今回は理念法で出発しました。これは第一歩であります。

同和、LGBTで不毛な理念法を作る自民党。

とある。罰則付きの法律作りに含みを持たせたのは見逃せない。こうした場合の自民党議員は狡猾だ。支持団体に対して理念法の次は罰則付き法律と説明し、保守の支持層には「理念法に過ぎない」と説き伏せる。LGBT法もこの二面性を知っておく必要があるだろう。

LGBTで 先進性、寛容さを 演出する

これも以前、指摘した通り人権問題の理念法にある「小さく生んで大きく育てる」という考え方に通じる。しかし勝手なものだ。もとは同性婚めぐるオフレコ発言で首相秘書官が更迭された。その後、岸田首相はLGBT法連合会など左派の当事者団体と面会。同会はLGBT当事者の代表者でもない代弁者でもない。政治家のミスによって活動家を持ち上げ、不適切発言側が法律を制定し国民に強いるのは身勝手だ。しかもその先にあるのは罰則付きの法律だとすれば恐ろしい。

ところが罰則付きとあれば野党、左派支持層、マスコミにも受けがいい。

仮に政治理念がタカ派的であったとしても「罰則付きの差別禁止法」という魔法の一語で左派は一目置いてくれるものだ。「クリーンなタカより、ダーティなハト」という左派特有の言説に乗っ取れば、LGBTは不正や不祥事の“洗浄 ”になりそう。

他にも気になる点がある。

自民党のLGBT推し関係者で非常によく聞かれたフレーズがあった。

「同性愛は日本の伝統文化だ」「古来から男色文化に寛容だった」

中世、江戸時代にあったいわゆる「衆道」のことだ。戦国武将で言えば織田信長、武田信玄、伊達政宗が有名だろう。

しかしこれは疑問だ。こうした武将たちは「人権擁護」の観点から衆道を好んだ訳ではなく、単純に当時の「性的嗜好」「嗜み」にすぎない。ところが

ところが「同性愛は古来から寛容だった」という伝統文化へのすり替えはむしろ「保守層」の琴線に触れる。だから説得材料として言われた側はなんとなく筋が通った話と錯覚してしまう。しかし衆道の歴史と法律の制定や政策とは別問題である。

妙に新しい概念を持ち出しかと思えば、突如として中世の「衆道」を持ち出すセンスもさりげなく自民党らしさを感じたものだ。

推進の割りにどこか浮世離れ。今はLGBTブームで行政、企業も熱を入れるので、議員の活動実績、好感度につながると考えてしまうのか。議会で批判的な質問をすれば即差別という中傷を受けるため気の毒な点もあるが…。

「保守政党」「自民党」というイメージから進歩的、先進性をアピールしたいがゆえに「LGBT」を中和剤にしたい風潮もある。「同和」「在日コリアン」「アイヌ」といった分野と比べてLGBTは与しやすい上にファッション性が強い。この点はその他、人権問題と大きく異なる点だ。

LGBT施策を推すことで従来の自民党議員像とは異なる姿を有権者に向けて演出する。この辺りが今回、強調したい自民党流のピンクウォッシュなのだ。

しかしこのような自民流ピンクウォッシュが「票」につながるのかは不透明だ。むしろ無定見な擁護論や推進は右派左派双方から攻撃されかねない。いずれLGBTブームが去って、支持者も去ったという顛末もありえる!?

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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