【号外】国家安全法に在日香港人が声明

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By Jun mishina

中国政府が香港への統治強化、介入を可能にする「香港国家安全維持法」が6月30日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で可決した。同法下では香港の治安維持にあたる国家安全維持委員会顧問職が中国中央政府から派遣され監視にあたる。またメディア、インターネットへの監視、裁判の傍聴・裁判員参加の禁止が盛り込まれるなど言論の自由、司法制度も制限された。このため事実上、「一国二制度」の終焉として内外から批判が殺到。可決を受けて在日香港人グループ「香港の夜明け」のメンバーが7月1日、衆議院第一会館で緊急会見を行った。また国会議員からは中谷元衆議院議員、山尾志桜里衆議院議員、山田宏衆議院議員が出席し、中国政府の対応を非難した。香港人たちの深刻な思いをお伝えする。

メンバーからは「白色テロ」、「人権侵害」、「自治の崩壊」、「日本への影響」の4つの角度から、『香港国家安全維持法』の説明があった。白色テロとは権力者側から敵対勢力に対する攻撃、弾圧のことである。声明文を転記する。

【白色テロ】中国は6月30日に、全人代常務委員会にて全会致で香港国家安全法を可決しました。そしてその数時間後、香港の政治団体デモシストのメンバーの周庭氏、ジョシュアウォン氏、羅冠聡ラカンソウ氏が次々とデモシスト離脱の宣言を発表し、その後、デモシストも解散の旨を公表しました。今まで香港民推化のために戦ってきた政治団体も、あくまでも普遍的価値を求める政治団体も、条文が明かされていない国家安全法の危険性を鑑みて、解散の道を選びました。世間は国家安全法の圧力によりデモシストが解散せざるを得ない状況に陥ったと感じたかもしれませんが、決してそうではありません。これは、彼ら自身だけでなく、デモシストにいる仲間の身の安全をも守ろうとする行為だと私たちは思っています。国家安全法が公表されないまま可決された以上、国家安全法の危険性を考慮し、デモシストのメンバーの安全を大前提に考え、やむを得ない選択をしたといえるのでしょう。そして、7月1日の午前2時に、「国家安全法が公布されました。国家安全法第(20、21、30条) によれば、暴力的か非暴力的か関係なく、この法律に基づき犯罪とみなされる行為を直接的、もしくは間接的に企画 ・動員・実施・協力・扇動する、あるいは金銭的援助を与えるすべての人が、取締対象になります。広範囲かつ曖昧すぎるこの条文により、中国政府はその気があれば誰でも該当者にすることができるでしょう。テモシストのように正面から政府を批判することはもちろん、ここで言論の自由を行使し、発言している私たちも、最悪無期懲役になる、ということです。国家安全法が実施された今、香港人は、香港の執行部門に逮捕されるのではなく、中国の執行機構に逮捕され、そして中国本土に引き渡されかねません。香港警察に逮捕される時よりも悲惨な目に遭う恐れがあります。それに加えて、第33条によって、他人の犯罪行為を通報するならば、その犯罪に関わった当人への処罰は軽減、もしくは免除されます。仲間に裏切られるかもしれないというような恐怖心を人々に植え付けることは、恐らく中国共産党が一番香港に蔓延させたい白色テロだといえるでしょう。実際、我々は今ここで記者会見を行うことも、国家安全法に違反しています。国家安全法第29条では、香港や中国に制裁を科すように働きかけることを含め、外国に協力や支援を求めることも犯罪とみなされます。つまり私たち自身が犯罪者と認定されます。私たちはそれを覚悟した上で今回の記者会見を決行し、変わらず香港と共に戦います。

特に気になったのは33条の犯罪行為の通報、つまり密告社会化だ。これはかつての文化大革命や天安門事件を想起させる。市民同士を監視させるのが狙いだ。

【人権】国家安全法の適用範囲は政治団体に留まりません。メディア、教育業界も影響されます,実際には、国家安全法が施行される前でも、香港政府が人権と自由を侵害する事例は多々ありました。例えば香港のマスメディア、民主化を支持する大手新聞紙アップルデイリーの最近の記事によれば、元々記載されているはずの担当記者の名前が記載されなくなっています。政府に個人情報が漏れてしまうことを恐れる側面もありますが、それ以上に、香港の親中派によって反政府陣営の個人情報が暴露されることは最も憂慮しています。一旦暴露されたら、逮捕だけではなく、家族まで親中派に嫌がらせを強いられてしまいます。国家安全法の第9条は明確に学校、メディア、インターネットに対する監視と管理を行う事を宣言し、香港基本法に元々保障されていた報道の自由など、いわゆる普遍的な人権が奪われることになります。今まで裏でやっていた事を表舞台で実行し、香港を完全にコントロールする野心を露骨に表しています。次に、メディアにはもう一つの制限が課せられています。第41条により、裁判をかけられた人の審理に、傍聴及び裁判員の参加を禁止できます。裁判は、人の目の届かないところで進められることになるのです。メディアはこれから重要な役目を果たせなくなり、容疑者が裁判所で公平的な審判を受けられているかどうか今後我々に知るすべがなくなります。他には数育業界にも大きな影響を与えています。とある香港人教師、Fさん(仮名)は個人情報が暴露されたことにより、あまりにも理不尽すぎる批判を受け、親中派に嫌がらせを強いられました。ただデモ参加者の一人が自分の教え子だと発言しただけで親中派の標的にされ, 命に関わる嫌がらせに受けかねない事態にまでなりました。日本に留学している時でも、香港民主派を支援する発言を発表しただけでも、国境を越えて親中派の標的にされるという恐怖は計り知れません。ただでさえおぞましい状況にもかかわらず、国家安全法が成立した今では、それを遥かに超える恐怖が襲いかかってきます。教師は自分の考えを伝えなくなり、学生も親政府派の言うことしか聞けない事態に成り果てるでしょう。中国本土ではすでに国家安全法の濫用が多発しています。中国の食衛生問題を指摘しただけで、国家安全への危害と見なされ、起訴されたことが明らかになっています。我々が恐れているのはまさに中国政府の法律濫用です。現在では国家安全法第43条に基づき、政府は個人もしくは組織の財産を凍結あるいは差し押さえができます。民主国家においても財産凍結の法律はあります。しかし、決定的な違いとしては民主国家ではその法律を濫用することが許されず、たとえ濫用されたとしても、制度を用いて濫用を止める事ができます。計り知れないほどの恐怖を抱えながらも、香港人の抵抗意思は消えません。ただ国家安全法の施行により、香港人には戦う意志があっても、戦う手段が奪われていきます。今後恐らく香港には大型デモがなくなります。今まで様々の方法で抗議をしていましたが、これから平和的なデモからエスカし一卜するのも仕方のないことでしょう。デモは香港現地で沈黙化し、そして、外国でのデモがエスカし-卜していくでしょう。

「学校の自治」はある意味、民主主義の試金石と言えるだろう。ところがすでに学校に対する管理強化が始まっている。香港の名門、舞台芸術アカデミーは3日、生徒に対して国歌法と国家安全保障法の順守と、2つの法令に反した場合、処分(停学・退学)すると通達した。

【自治】『香港国家安全維持法』のリリースにおいて、まず最初に注目すべきところがあります。香港では中国語と英語が公用語となっており、法律などの公文書がリリースされる際は必ず両方の言語で出され、相違があった場合は英語に準じます。しかし、今回の法律の本文は中国語でしか書かれておらず、英語訳されたのはタイトルだけでした。これは今までありえなかったことで、曖昧な言葉が多く使われているため今回の法令は具体的に解釈されにくくなっております、つまり、この法令は香港の立法機関を全く通っていないことが分かります。実際のところ、香港の法務大臣に当たる人にもリリース直前まで、内容について知らされていないと公言しました。これは司法権の独立がすでに崩壊した証明といえるのではないでしょうか。上記でご紹介した条例以外に、法律の本文にこのような言葉がかなりの頻度で現れました。「国家安全維持委員会」「駐香港国家安全維持公署」(12、15条) 香港政府により国家安全維持委員会は設立されます。中央政府は顧問を派遣しそれを直接監督する。これは香港の高度の自治を侵害する内容と言えます。

更に:(16条) 警視庁は香港人以外の人を執行官として招き入れることが可能。(44条) 裁判官は香港行政長官が指名する。また、この法律を犯したことがある者は指名されない。しかし、これはまだ最悪ではありません。(48、49条)中央政府により駐香港国家安全維持公署が設立され、国家安全維持委員会の監督をし、この法律の取締を執行する。要すらに、香港政府管轄の委員会よりも、中央政府が直轄している公署のほうが上にいるということです。(55、56、57条) 駐香港国家安全維持公署は必要と判断される場合香港にて中国の管轄権を行使する。その場合、中国が指定する裁判所にて裁判が行われる。なお、すべての裁判は中国の法津に従って行われる。(60条)駐香港国家安全維持公署の執行官は香港政府の管轄外である。また、香港の執行機関は捜査されることなく、香港法律が規定した権利や免除を享有する。これらの条文により、香港の一国二制度が明らかに終焉を迎えました,中国政府は直轄する執行機関を香港に置き、香港の内政に直接的に干渉ができるようになります。ましてや執行官が法に縛られないという条例まで制定され、香港に無法地帯が作られました。1984年に結ばれた英中共同声明に明記された「50年不変」の約束が、中国が一方的に踏みにじったことにより、香港も道連れにされ、同じく約束を守らない存在になりました。国家間の契約をこうも容易く破る国を信用して一緒に何かをすることは、何よりも避けるべきことだと、全世界はすぐに分かるのでしょう。

中国の自治州は事実上、共産党の管理下に置かれ無論、「自治」と呼べるような制度ではない。これと同様に香港内での中国政府の機関を上位に置いて統治強化をする。「一国二制度の終焉」を最も具体化する制度だ。

【日本への影響】以上は国家安全法が与える香港への様々な影響ですが、一体日本にはどのような影響を与えるのでしょうか。まず、第54条により駐香港外国組織や国際組織、外国の非政府組織と新聞組織に対しての管理が強められ、活動が制限されます。これは歴とした外国の報道自由への干渉になります。さらに、香港国家安全法第三章第三十八条に基づき、香港特別行政区居民ではない人が香港以外の所で本法律に規定されている犯罪行為を行った場合に、本法律は適用されます。つまり、日本、あるいは中国以外の国籍を持っている人でも、例え香港デモを支援する言論を発表しただけでも香港版国家安全法が適用され、香港警察あるいは中国警察に外国人を逮捕する権利が与えられます。これは歴とした世界各国の国民への脅威となり、各国政府及び議員は直ちに対応策を考えなければなりません。次に、国家安全法の制定により、日本への雄大な影響と言えばやはり移民が短時間内で日本に入るということになります。現在では、台湾とドイツでしか正式に亡命者への支援が行なわれていません。香港は去年のデモ以来、中国政府及び香港政府への不信感が強まり、海外移民を図る人少なくありません。最近では、ブリティッシュナショナルオーバーシーズ(BNO)のパスポート所持の香港人にも居住権を与えられるような政策がイギリスで論議されています。国家安全法の幅広い犯罪判定基準は香港人の民主主義を追求する心を壊すだけでなく、他の国にもその法律自体に影響を及ぼすと感じ、国家安全法の成立前でもこれらの救援活動を自ら行ってきました。国家安全法が成立した今、他の国に移住することが余儀なくされるでしょう。亡命する時も、地理的条件や国の政策などももちろん考慮の範囲内ですが、香港人はそれよりも自分が好きな国、特に民主主義がよく機能している日本を選ぶでしょう。そこで、日本は今後一気に迫ってくる移住申請を処理しなければなりません。留学、就職等、香港人はそれらの資格を持ちたくなります。それらの移住申請を効率よく処理するためにも、早めに対応策を考えて頂きたいです。

日本は従来香港人の観光聖地です。日本政府観光局により、去年来日した香港人観光客は200万人を超えていました。現在、香港の人口はおおよそ700万強であることから、四分の一以上の香港人が去年日本に来ていました。そして、訪日ラボWebサイトにより、香港人にとって日本は一番の旅行先である結果が出たと同時に、日本人の中でも優先的に戻ってきてほしい地域の二位を香港が占めています。香港人は日本では歓迎されている観光客です。しかし、今後は国家安全法の為、自由に観光することもやめざるを得ないでしょう。去年の区議会選挙のデータから推測すると、半分以上の香港人が民主派支持者であり、政府批判の声を上げました。これからはこれらの香港人も逮捕され、身動きが自由に取れなくなります。日本の観光収入にも大ダメージを与えるでしょう。日本経済への影響は観光業界で留まらず、貿易業界にも影響を及ぼします。香港政府の公式統計によると、2019年には1 ,413社の日系企業が香港で運営しています。また、日本農業貿易は香港市場と密接に繋がっています。日本農林水産省のデータにより、2019年日本の農林水産物の輪出量では、香港は総計で一位を占めており、2000億円以上相当を輸出していました。これも今まで香港基本法に保証されている「貿易の自由」に恵まれていたためです。しかし今後、国家安全法の下でまだ会社の財産が昔のように保証されるとは言えません。例として、日本企業が香港でビジネスを始めた際に、もしその内容に問題があると疑われた場合、今の国家安全法に基づき、その企業が資産凍結される可能性があります。香港前任行政長官の梁振英リョウシンエイさんも、外国記者協会が外国勢力であり、国家安全を脅かす組織であると発言していました。あくまでも中立の立場で香港デモを取り上げようとする外国メディアであっても、ただ中国政府にとって好まない発信をした程度で、親中派の批判の標的になりかねません。以上のことから、香港金融センターとしての信用性がなくなり、中継港として機能し続けてきた香港はやがてその役割を失い、日本は新しく輸出先を確保しなければなりません。確保するまでの問は無論日本の経済にも悪影響が出るでしょう。さらに、日本と中国との従来の貿易が今後同じように機能するかについても疑問が生じます。自ら一国二制度を崩壊させ、契約精神を違反する今回の行為を踏まえて、果たして日本にとって中国は信頼できる貿易仲間であるかは一目瞭然です。また、日本にいる香港人も日本政府の対応に準じて動くことになります。日本に住んでいる優秀な人材の多くが弾圧を受けていると感じ、または日本がその人々を保護する立場を取らないことによって日本に対し疎外感を持った場合に、日本を離れるかもしれません。

広州で伊藤忠商事社員が長期拘束されているのは大きく報じられた。伊藤忠商事と言えば中国財界とも関係が深く、特に9代社長の丹羽宇一郎氏(現日中友好協会会長)は親中派の権化のように語られる人物。そんな企業の社員ですら不可解な疑惑で拘束される。いわんや統治強化を進める香港ではよりリスクが高まるだろう。

香港版国家安全法について-香港の自由及び自治を守るための国際声明

声明を読みたい場合は上をクリックしてアクセス。

日本からは中谷元、山尾志桜里、長島昭久、藤末健三各議員が署名。

署名を見ると特徴的なのはカナダの議員がとても多いこと。

現状では最も強い態度で香港問題に臨んでいる印象だ。カナダは香港との引渡し規制の実施を一時停止すると発表。また同時に、香港への軍事品の輸出禁止も決めている。香港『立場新聞』によるとフランソワフィリップ・シャンパーニュ外務大臣は国安法について深刻な懸念を表明。立法手続きは秘密にされた手続きであり、香港人はいないとの見解を示した。日本の政治家では考えられないような強い態度だ。

この点については出席した山尾志桜里衆議院議員のスピーチによく表れていた。山尾氏は香港国家安全法制に反対する署名に100人以上の国会議員が名を連ねたことに触れて

「100人の署名はアジアで最も多いが、意外だったと驚かれた」

と明かした。つまり他国から見れば日本は外交的に脆弱で「モノが言えない国」と思われていたのだろう。香港問題を機会に日本の外交も変化してもらいたいものだ。

今後、在日香港人グループは7月12日に、中国抗議デモを予定しており日本から中国の弾圧、介入に対し反対していくとした。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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