【追跡・金沢レインボープライド】松中権氏が送った自殺対策要望書で見えた“ 同和的スキーム”

カテゴリー: LGBT | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

今年3月、一般社団法人金沢レインボープライド事務局長(当時)が同団体の運営施設「金沢にじのま」で覚醒剤を使用し逮捕されたのは衝撃的だった。行政に食い込む人権団体が不祥事とはまるで同和団体のようだ。しかも金沢レインボープライドが金沢市に送った要望書をみると活動スタイルは同和そのものである。

「紐づけるな論」も同和を地で行く

岐阜市内で講演する松中氏。

社会事業の団体役員が覚醒剤で逮捕されたという事実。金沢レインボープライドに限らず行政から補助金を受ける人権団体、社会団体は数知れない。こうした団体は常に一般市民に対して“上から ”啓発ポジションをとるものだ。ならば一層、自身の行動を律するべきだが、同和団体を始めとする不祥事の多さをどう説明するのか。

印象的なシーンがある。金沢レインボープライド共同代表、松中権氏は事件を受けて「性的マイノリティーのコミュニティーと紐づけられることはあってはならない」と記者団に語ったこと。事件後に注目された発言だ。

「紐づけするな」は人権団体などの不祥事を追及する際、必ず活動家や支援者、シンパから攻撃される定型句だ。しかしそうはいかない。

普段、人権問題が発生すると活動家たちは日本社会全体の責任としてきた。しかし自身の不祥事を全体に紐づけするなとは矛盾する。人権団体らは不祥事が起きた際、誠実に対応することなく「紐づけ論」を用いて批判に対して「差別」と応じてきた。松中氏の発言もまさに運動体における不祥事対応と酷似する。歴史は繰り返すのだ。

事件を受けて金沢レインボープライドに関する資料を情報開示請求などで収集してみた。順次、レポートしていくがさっそく目についたのは同団体が金沢市役所に提出した「金沢市自殺対策計画2024骨子(案)への意見」である。骨子案は今年1月17日までパブリックコメントが募集され、3月に「金沢市自殺対策計画 2024(2024年度~2029年度)」として発表されたものだ。

自殺防止対策を課題にするLGBT団体、人権団体は少なくない。金沢レインボープライドの「金沢にじのま」も性的マイノリティーの孤立を防ぐという目的があり、自殺防止対策を意識したものだ。金沢市の具体的な方策について金沢レインボープライドは今年1月17日に意見書を提出した。

意見書にはいくつか注目すべきワードが登場する。

金沢市自殺対策計画2024骨子(案)より。
松中氏名で提出された意見書。

研修と居場所は人権団体の一丁目一番地

「相談業務を担当する職員の資質向上」「・地域・職域でのゲートキーパー研修の推進」の対象である民生委員・児童委員、市職員、これら全員への「性の多様性」についての新しく正しい情報に基づく研修の推進を明記してください。

ゲートキーパーとは声かけ係といった立場で金沢市の場合、数時間の研修の受講者にゲートキーパー手帳を交付している。

「・関係機関・関係団体との連携の強化」として、「性的マイノリティなど、自殺リスクの高い人々の孤立を防止するための居場所づくりへの支援・居場所の情報提供」も加え、年代別や男女別区分だけでは対象からこぼれ落ちるハイリスク・グループへの施策も明記してください。

性的マイノリティと自殺の因果関係については明確なデータがある訳ではない。意見書で根拠として挙げているのが認定NPO法人 ReBit「LGBRQ医療福祉調査2023」である。ReBitは金沢レインボープライドと同じく「プライドハウス東京」の構成団体。性的マイノリティの居場所作りを目的にしている。つまりReBitのデータ引用は手前味噌というものだ。

ローソンの人気商品「からあげクン」の売上から寄付金を受けたことで話題になったReBit。

金沢レインボープライドの意見書に明記された研修と居場所はまさに活動の一丁目一番地。特に部落解放同盟など同和団体や在日コリアン団体の活動史において「居場所」=隣保館、学校など公共施設の一室を「勝ち取る」ことが使命だった。また「研修」は活動家にとっての収入源であり、また講演を重ねることでマスコミにも「有識者」として起用される。行政や企業から勝ち取ることは団体と活動家にとって繁栄と示威にもつながるのだ。

自殺対策よりも団体、研修ありきになっていないか

政府の第4次「自殺総合対策大綱」を引用して、研修や教材作成を訴えている。しかし研修や教材で防止できるほど自殺は簡単な問題だろうか。

「孤立を防ぐための居場所づくり等を推進」と言いつつ、当の金沢レインボープライド事務局長が“居場所で覚醒剤 ”では示しがつかない。また市内外のNPOを活動の受け皿と考えているようだが、一民間団体でしかないNPOの活動家が果たして「自殺」という特定個人の危機に介入できるのか謎だ。これもNPOありきでしかないのでは?

意見というよりもむしろ要望に近い内容だった。結局、完成した「金沢市自殺対策計画 2024(2024年度~2029年度)」を精読しても同意見所はほとんど反映されていなかったのは行政の最後の意地か、他の場面で埋め合わせがありうるのか。

ただでさえも要求が多いLGBTに自殺対策とは行政の難題が続く。自身も教員の立場でLGBT教育や相談事業に関わった人物はこう話す。

「LGBTの電話相談というのは従来から実施されてきましたが、実は多くが“ リピーター”なんですよ。自殺の相談とか重たい話題ではなくとりとめのない話が続きます。どこまで効果があるのか、それ以前に本当に悩む人が必要としているのか疑問です」

また昨今の増加しているLINE相談も同氏は疑問を投げかける。

「ほとんど意味がないでしょうね。“ 若年層はLINEの方が本音を言いやすい”という説明がつきますが、ただでさえ情報流出が問題になっているからリスクがあります。確かに電話よりもSNS経由の相談の方がハードルは下がると思いますが、既読がついた以上、文字で早急に対応する必要があります。LINE相談員がそんなスキルを持つとは思えません」

相談事業も行政のアリバイ仕事に堕していないか。いかにも「人権問題に取り組んでいる」ように見せるのがアリバイ仕事だ。

同和事業においても「人権相談」は一種の鬼門。相談事業の委託費を受けながら「相談室の所在地が公になっていない」「相談件数、実績が皆無」といった不毛な相談事業は何度も見てきた。LGBTでも実効性が疑われる「相談事業」を重視される風潮。まさに同和事業の後追いである。

「研修と居場所」に加えて「相談事業」も同和スキームの延長と言えるのだ。

プライドハウス東京発行のパンフレット

東京新宿区のプライドハウス東京。

研修、居場所、相談事業は松中氏の独自主張ではなくLGBT活動家共通の要求なのだ。

それは松中氏も運営に関わるプライドハウス東京が発行した『性的マイノリティ(LGBTQ+)の自殺対策を自治体で進めていくために~「自殺総合対策大綱」に基づいて~』で読み取れる。

「LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティ」への自殺防止対策事業(厚生労働省
「令和3年度(令和2年度からの繰越分)新型コロナウイルス感染症セーフティネット
強化交付金(民間団体実施分)」)として制作しています。

とある。これ自体が公金で作成されたもの。

「支援者としてできること」の支援機関の項目には「支援者の理解を促進し、支援体制を整えるにはLGBTQ+に関する研修を実施し、すべての支援者が適切に相談対応できるようにする」と研修を重視する。また「行政の自殺対策担当としてできること」では「自殺対策に取り組む職員・相談員はもちろん、複合的ニーズを想定し、障害者支援・生活困窮者支援等広く支援に取り組む担当者たちへ、研修や資材を通じて、理解を促進する」と職員への研修を促す。

「関連団体や学校等との連携」では「地域のLGBTQ+団体などと意見交換・連携をしながら、相談支援や居場所づくり等の施策を進める」「地域の学校で生徒・教職員への授業・研修を通じ、特に希死念慮が高まる時期に情報・支援を届ける」とあるように居場所、研修、相談事業が盛り込まれている。

そしてプライドハウス東京をはじめ金沢レインボープライドなど各地の施設が事業の受け皿だと紹介。LGBT版の隣保館といったところか。

研修は活動家の収入とプロモーションに貢献。

そうした施設で団体役員が薬物使用とはLGBT当事者への裏切りではないのか。再発防止のためにも「紐づけするな」という従来の活動家のような居直り表現は控えてほしいものだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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