2021年4月の団長選以来、民団内部で対立が続く。当時、呂健二現団長が無投票で再選された。これに反発し一部役員が「民団中央正常化委員会」を結成したが早々に解散。事態は収束したかに見えたが、反執行部側は今年12月2日に臨時大会を開催し、暫定の団長を選出した。事態は泥沼の様相だ。
民団幹部が怒鳴りあい「内なる分断」
12月某日、民団中央本部5階、同東京地方本部事務所前で民団役員たちの怒声が響く。
「民団を潰す気か!」
「お前が潰す気か!」
「何を! 恥ずかしくないのか? 全国みんなが造反しているんだ」
「じゃあ連れてこいよ」
幹部同士の激しい口論。民団が「ヘイトスピーチ対策」「戦後処理問題」こういった問題で日本社会と向き合う場合は「結束」する。外部の目からは「同胞」という強い絆で結ばれているかに映るものだ。だが民団も一枚岩ではないことの証左であろう。
口論の背景を説明しなければならない。現在、呂健二現団長体制に対して東京、大阪本部など地方本部から反発が強まっている。一つには呂体制下で中央委員会が開催されておらず、今年2月に予定された同委員会も対面形式ではなく書面決議に終わった。これに対し各地方本部が対抗策に出たのだ。
12月2日、反執行部側が開催した「第56回臨時大会」で金利中氏が団長、張仙鶴氏が議長、韓在銀氏が監察委員長に選出された。
臨時大会は「分断行為」として現執行部は金勇光中央副団長らが警告文を通知するため東京地方本部(5階)に訪れた。金氏は民団内部では呂団長の側近という人物。
一方、東京地方本部は反執行部の中心である。そこに警告文というのだから怒鳴り合いになるのも当然だろう。
金勇光副団長は東京地方本部役員の前で警告文を読み上げた。
2023年12月2日に開催されたという「第56回臨時中央大会」と称する集会で選出されたとされる、暫定の「団長」を名乗る金利中、暫定の「議長」を名乗る張仙鶴、暫定の「監察委員長」を名乗る韓在銀、並びにこれらの者の関係者(東京地方本部、大阪地方本部、福岡地方本部、京都地方本部、愛知地方本部、兵庫地方本部、広島地方本部、山口地方本部、長野地方本部、静岡地方本部、宮城地方本部、及び熊本地方本部の関係者を含みます。)について、本建物(韓国中央会)の5階、6階、7階、8階、9階及び屋上への立ち入りを一切禁止します。また、東京地方本部の関係者について、韓国中央会館の利用を当面禁止しますので、利用する権限はありません。この禁に反した場合、建造物侵入罪(刑法第130条前段)、または不退去罪(刑法第130条後段)に該当しますので、躊躇なく、直ちに所轄警察に通報します
警告文は団長、副団長名で発せられた。「警察に通報」という辺りに強い憤りが表れる。この警告文は韓国中央会館内にも貼り出されたという。
暫定団長に選出された金利中氏は民団元中央副団長で有力幹部。本来は団長職に資する人物ではあるが、現執行部には批判的な立場。警告文に名が挙がった役員は本来、呂団長の支持者もいたがそれでも造反に至った。かつての仲間に「立ち入り禁止」とは執行部側も妥協しない様子だ。
また中央本部玄関には「お断り」として「当分の間、5階以上の立ち入りを禁じます」との貼り紙ある。中央本部は大使館機能も果たすいわば外交の窓口。それが注意文とは穏やかなではない。
かつて旧民主党政権前後に「永住外国人の地方参政権」問題が盛んになったのはご記憶にあるだろうか。その際のスローガンとして民団は「内なる国際化」を掲げたものだ。参政権によって国際化が進み日本社会にも寄与するという考え方である。
だが反呂体制をめぐる対立はいわば民団内部の「内なる分断」といったところだろう。情報提供者である在日韓国人A氏も「民団も高齢化、先細りする中でこんなトラブルは悲しい。在日社会にとってもなんの得もないですよ」と嘆く。
一般の民団会員、特に若手にとってはコロナ禍で事業、生活も疲弊した。特に内部には中小零細企業、自営業者もいる。民団への支援策を求める中で権力闘争をしている場合ではない、と。そんな嘆きなのだ。
その一方で「思想、信条というよりも個人的な好き嫌いでは?」(関西の在日韓国人)という冷ややかな見方もあるが、今回の騒動はかなり深刻なようだ。一過的な対立なのか、あるいは民団が岐路に立つのか。対立の原点になった2021年の代表選に遡ってみよう。
きっかけは 2021年の団長選
先の口論の動画は民団関係者や支援者の間で広まったもの。激しいやり取りは先のA氏も“ドン引き ”していた。
「2021年の団長選をまだ引きずっているのかと思った事情は違っていました。分かりにくいんですよ」(同)
双方がエキサイトした口論だが、それ以上に根が深い。
2021年の代表選をめぐる騒動はすでに『民団新聞』などで報告されている。こんな話だ。
同年4月14日、第55回定期中央大会が開催された。この際、団長に立候補していた任秦洙氏の候補資格を取り消し呂健二氏が無投票で再選。
先のA氏によれば
「もともと民団の団長選は“ シャンシャン総会”で決まるものです。任氏の立候補は異例ではあるけど当然、権利はありますよ」
と説明する。しかし任氏が過去、恐喝未遂事件を起こしていたことなどを理由に同年3月12日、立候補登録の取り消しを本人に通知した。
この処分には古参の元幹部も首を傾げる。
「実は当時、私も呂氏を支持したんだけど投票箱を空けない、しかも投票用紙をシュレッダー処理していたことも発覚。それで呂氏が一方的に当選宣言したのです。これはさすがにおかしいと思いました」
そこで東京本部などから約20人が4月7日に集まり「民団中央正常化委員会」を結成。反呂体制に反旗を翻した。
同委員会は東京・新橋に事務所を設置。委員会は韓国メディアにも働きかけて4月28日に記者会見を開いた。一時はYouTubeにも紛糾した動画が残されたが現在は削除。またSNSでは「任泰洙さんを支える会」名のアカウントで任氏を支援した。
ところが「いつの間にか同会のアカウントが消滅していました」(A氏)。
また執行部側も委員会は「組織分断行為」として厳しく指弾。民団新聞(2021年5月26日)紙上で「民団中央正常化委員会」の即刻解散を求めると声明文を発表した。
また呂団長も「分断ではなく結束こそ」として委員会の解散と結束を呼びかけた。一方、委員会も公式サイトを立ち上げ抵抗したが短期間のうちに解散。現在、事務所があったビルそのものが建て壊されている。
一つには任氏への支持、担ぎ出しに失敗したことが大きい。任氏及び所属の北海道本部が「恐喝未遂事件は全く関係ないことが判明し、事件になりませんでした」と各関係者に伝達していたが後に虚偽であると判明。逮捕歴と立候補資格は無関係としてもやはり団長職には相応しくないという判断があったのだろう。正常化委は旗頭を失った。
先のA氏らも同様に関係者ですら経過が混乱したのが印象的である。現在も続く民団の内紛が2021年団長選の延長だと考えた関係者も少なくない。
「あれはきっかけ。任氏の件とは別で呂体制への不満が高まっています。今や執行部が少数派といってもいいじゃないかな」。こう指摘するのは前出の元幹部。
「その不満が今月2日の臨時大会につながって暫定会長らが選出されたのです」(同)
それが先の口論につながるのである。
現執行部派、反呂派で真っ向から対立する現在だがどちらに理があるのか筆者にはまだ判断できない。しかし先のA氏、また古参の元幹部も共通するのは「今や反執行部が多勢」という見方だ。
一方、民団と交流がある日本の政界関係者は首を傾げる。
「民団の団長は実権というよりも名誉職なんです。まあメリットとしては日韓の政財界にパイプができるといったところでしょうか。在日韓国人ですら“ 内紛はお家芸”と失笑するものですが、それにしても今回は激しいですね」
中央本部に騒動について質問したところ「こちら側からお伝えするようなことはありません。質問があれば送ってください」との回答だ。
回答があり次第、反呂体制派の所見を含めて深層をレポートしよう。
2006年、在日本大韓民国民団の団長選に立候補した松本市の鄭進(東本進)氏の選挙事務所に陣中見舞いに行きました。場所は安曇野市有明の鄭氏の別荘。張本勲氏や金田正一氏など在日の有名人の為書がいっぱい貼ってありました。
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長野のパチンコグループの方ですね
貴重なお話ありがとうございます。
どこにでもある会員無視の権力争いですかね。
こういう騒動は最後は会員主体で落ち着くところに落ち着くでしょうね。
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民団の団長選挙は在日韓国人が一番多い東京と二番目に多い大阪(現在は大阪が1位)の持ち回りだったのですが、その均衡をはじめて破ったのが長野県(在日人口22位)の鄭氏でした。そのあとの呉団長も長野県の諏訪の方で二代続きました。
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