曲輪クエスト(366) 海南市 沖野々 “西口”

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By 宮部 龍彦

海南市の沖野々を訪れてほしいというリクエストがあった。

この古村については、事前に図書館で調べると出てくるのは、ほとんど大正時代の「沖野々差別事件」のことである。1954年に和歌山県同和問題研究委員会が作成した『調査その一』という文書によれば、当時は165世帯であった。

その場所は、現在では田舎にしては比較的活気のある村となっている。

「沖野々差別事件」については、現在の和歌山県田辺市出身の水平社活動家・栗須七郎による『水平道』に、地名団体登場人物全て実名で詳細が書かれている。

時は1926年9月頃、当時の巽村坂井の山本菅太治が沖野々の松本エイと情交を結んだことについて、北野上村野尻の東常一が「君はその為に人間が一段下がった」と嘲笑したのが発端である。

沖野々部落の有志、河野嘉次郎と上田善助、南垣内純太郎他が山本菅太と一緒に沖野々青年会場で東常一を詰めた。それでも東常一が非を認めなかったので、水平社の栗須七郎が介入。野尻区長の柳瀬近之助らと協議してこの問題についての講演会開催を決定した。

しかし、柳瀬近之助は講演会を無期延期して約束を反故に。そこで河野邦次、西尾源左衛門、栗須七郎が東常一の家に押しかけてまた詰めた。

しかし、後に河野邦次、河野嘉次郎、上田善助、南垣内純太郎、栗須七郎らは検挙され暴威取締法違反で懲役4ヶ月から罰金50円の判決を受けた。

事件に関係する名字の分布を当時の地図と重ね合わせてみた。不謹慎かも知れないが、それぞれの村の関係と当時を生きた人々のドタバタぶりが見えてくるようだ。

栗須七郎の言い分では、平和的に交渉しただけということだが、果たしてそうだろうか?水平社はこうやってよそから駆けつけたり、集会をしたりするための費用を「差別者」から徴収するようなことがあったので、実はここでもそういう行為をしたのではないかと疑ってしまう。恫喝や暴力に近いこともやったのではないか。

さて、この古村を歩いていて気づいたのは、活気があることだ。田舎の集落ではこういった小さな商店はつぶれてしまっていることが多いが、ここではそうではない。

新しい、移住者によるものと思われる住宅もあちこちにある。

これは海南市住民センター。立派な建物である。

「隣保館」「集会所」「児童館」と書かれている。これらの施設としての機能もあるのだろう。しかし、同和や部落といった掲示物は見当たらない。人権擁護委員のポスターがあるくらいだ。事実上は公民館のようになっている。

その敷地内に消防ポンプがある。大正7年というから、あの差別事件よりも古いものだ。動かしてみると、意外とスムーズに動き、シュポンシュポンと音がする。まだ使えるのではないか?

ここにポンプの由緒が書かれている。沖野々は高台にあるので水が得にくく、大火事になったが、その経験からポンプの必要性が認識され、区が購入したという。今でも動かせるのは、鉄製ではなく錆びにくい真鍮だからだろう。これはかなり高価なものだったのではないか。

寺は願成寺。浄土真宗本願寺派である。

付近住民から、昔のことについて聞くことができた。とはいっても、戦後の同和事業のことである。

昔は小さな家が集まっているようなところだった。しかし、同和事業により予算が出ると、どんどん道が整備され、家が大きくなったという。

ニコイチの改良住宅もあるが、今は空き家も多い。形式から昭和50年頃のものかと思ったが、実際は昭和48, 49年に作られたものである。比較的古いものと言える。地域によってはリフォームされて後で屋根が増設されることもあるが、ここでは当時の平屋根のままで、今となっては貴重な建物だ。

解放同盟などの運動団体の活動について聞いてみると、海南市では目立った活動は聞いたことがないという。住民が知る限り、同和事業は行政主導で行われていたそうだ。

お金が出て環境が整備されるのは結構なことだが、学校等で同和についての作文を書かされるのは、はっきり言って迷惑だったという。行政や学校がやっているのとは裏腹に、上の世代は部落だの同和だのといったことは話したがらなかったという。「沖野々差別事件」も筆者から聞いて初めて知ったそうだ・

「差別はあるんですか?」と聞くと、「いや、そんなのないし、普通に付き合ってますから。答えはそういうことでよろしく!」ということである。

最後に道路の向かいにある墓地に行ってみた。

これは同和事業の時代に整備されたものだろう。

高台にあり、東屋もあって、天気の良い日はここで読書をするのにもよいのでは。

墓地から古村が見渡せたので、パノラマ撮影をした。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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曲輪クエスト(366) 海南市 沖野々 “西口”」への7件のフィードバック

  1. 匿名

    簡単に言うと部落の女とセックスしたら差別された事件?
    #278fc8072e7ea50eb3a86d186f3b8843

    返信
    1. 宮部 龍彦 投稿作成者

      ふざけてエロ話していただけのことで、別に差別というほどのものではないと思います

      返信
  2. 匿名

    春に訪問するとおっしゃつた、下味野の訪問記事を楽しみにしてますが、いつアップされますか。
    #465abe8507987ea82a1058a5c4fea68a

    返信
  3. 匿名

    (雪で下味野が)すっげー白くなってる。
    (訪問中止だと)はっきりわかんだね。
    #1d624c7a5a35c588f1fcbe6082252365

    返信