2021年7月3日に発生した熱海市伊豆山土石流災害。行政の原因究明、民事訴訟も進展がないまま5年が経過した。ところが急転直下! 2月15日、熱海土石流の起点となった盛り土の前所有者、天野二三男氏が新型コロナ感染拡大防止協力金約160万円を詐取した疑いで静岡県警に逮捕された。土石流とは無関係の容疑だから、周辺では「別件逮捕」とも囁かれる。
まさかの新型コロナ感染拡大防止の協力金詐取

(事件概要)2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した大規模な土砂災害。関連死を含め27名が犠牲になった事件だ。土砂災害の原因になった盛り土は逮捕された天野氏が社長を務めた新幹線ビルディングが伊豆山で宅地分譲開発を進め、建設残土を処分したもの。また熱海市百条委員会では県外の業者から建設残土が運び込まれたことも指摘された。しかし土石流発生時、盛り土付近の造成地は「ZENホールディングス」の創業者・麦島善光氏が所有者になっており、責任は「前所有者」の天野氏か「現所有者」の麦島氏なのか論争になった。
国内有数の温泉地、熱海市。現在、各地の観光地にはインバウンドによって外国人観光客が殺到するが、熱海駅前の平和通り名店街、仲見世通り商店街は若い男女の観光客が目立つ。土石流が起きた頃とは隔世の感がある。
社会状況、当事者らも様変わりした。遺族・被害者らは補償を優先するグループと原因究明を重視する両派に分裂。発災当時、説明に立った当時の静岡県副知事、難波喬司氏は現在、静岡市長だ。また百条委員会など検証作業に関わった熱海市議らも大幅に顔ぶれが変わった。そして皮肉にも熱海での土石流によって全国的に盛り土に対し規制強化が叫ばれ、2023年の宅地造成及び特定盛土等規制法の施行につながった。
社会的に関心が薄れつつあった中で天野氏の逮捕に関係者、SNSも騒然となっている。
15日に配信された『共同通信』の記事を引用しておく。
県警によると、土石流を巡る捜査で詐欺の疑いが浮上した。他に逮捕されたのは神奈川県綾瀬市の警備員石塚加代子容疑者(57)。天野容疑者は小田原市で複数の法人を営んでおり、石塚容疑者は以前、天野容疑者の下で働いていたという。 2人の逮捕容疑は、経営していた小田原市のライブハウスが閉店状態で協力金の交付要件を欠いているのに21年3~4月、虚偽の申請をして神奈川県から約160万円をだまし取った疑い。県警は認否を明らかにしていない。 また、詐欺や偽造有印公文書行使などの疑いで平塚市の会社役員小林幸雄容疑者(76)も逮捕した。天野容疑者と知人関係という。
容疑は盛り土関連ではなく、意外にも新型コロナ協力金詐取。「意外」といったが、天野氏は元自由同和会役員という点に因縁を感じる。同会は自由同和会和歌山県本部の代表者が持続化給付金詐取で逮捕、また自由同和会四条畷支部元支部長が「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の窓口である公庫職員への強要で逮捕されている。こうした背景を考えると〝さもありなん〟といったところだ。
15日早朝の逮捕に「なぜこのタイミング?」

逮捕時について知人男性は「2月15日、早朝6時に静岡県警が来て天野氏を逮捕。本当に驚いたよ」と明かす。
誰もが予想しなかっただろう。また「なぜこのタイミングで」という関係者の疑問は尽きない。
「天野氏らを相手取った民事訴訟で、今月24日に本人の証人尋問が予定されていたのです。ところがこの時期に逮捕というのは原告団にとっては疑問が残るでしょうね」(原告団関係者)
天野氏以外で逮捕されたのは石塚加代子容疑者、小林幸雄容疑者だ。土石流取材でおおかたの関係者と接触してきたが、両氏は初見の人物だった。それ以前に協力金の対象になった「閉店状態のライブハウス」も謎だ。
記事によればライブハウスは閉店状態だったにも関わらず2021年3~4月に虚偽申請して神奈川県から約160万円を詐取したという。申請は土石流発災直前だ。
筆者もたびたび天野氏と接触してきたがライブハウスを経営していたのは把握していなかった。先の知人男性の解説。
「コミービル(小田原市本町2)の地下にあったんだよ。石塚はそこの従業員で、小林は新幹線ビルディングと取引があった会社の元社員。しかしその2人から盛り土の証拠が引き出せるとは思えないな」
発災当時、小田原市内を取材していた頃、コミービルはすでに老朽化した空きビル。同ビルにはかつて天野氏の関係会社が入居していた他、一時期、自由同和会神奈川県本部の事務所もあった。静岡県警が押収した関連資料の中にはコミービル時代の書類もあったのだろう。その中で新型コロナ感染拡大防止協力金を不正申請した証拠を発見したとみられる。
過去記事でもコミービルを取り上げたことがあった。湘南地方を横断する西湘バイパスの箱根口インターチェンジ付近の整備事業で、用地買収の対象地域を知った天野氏が小田原市内の資産家T氏から土地を強奪した経緯がある。2021年8月13日の記事が詳しい。
【特別手記】 土地強奪被害者が 激白 “地面師”天野二三男 「同和の力で なんでもできる」
当時、T氏と親族らが天野氏と交渉した場所がこの「コミービル」なのだ。他に気になる点としてはコミービルには天野氏の関連会社「株式会社五五」が入居。同社の代表取締役は新幹線ビルディング元社員でもあり、自由同和会神奈川県本部女性部長を務めた人物だ。また自由同和会本部役員にも名を連ねた男性(故人)が取締役を務めた。伊豆山造成については元女性役員の方が詳しいはずだが、石塚容疑者が逮捕されたのはどんな意味を持つのか。一介の従業員にすぎない石塚容疑者が盛り土について知りえたのか疑問だ。
それとも協力金詐取で別件逮捕をしてから本命の土石流につなげるのか。盛り土を捜査してきた静岡県警が逮捕した以上、熱海土石流と無関係では済まないだろう。



